David Blecken
2016年11月09日

コンテンツマーケティングのあるべき姿を体現したビームス

セレクトショップのビームス(BEAMS)が、東京のカルチャーの40年の軌跡を描いたミュージックビデオを10月下旬に公開。再生回数は400万回を超えた。

今年40周年を迎えたビームスは、記念プロジェクトの第一弾として、ショートフィルム「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」を公開した。さまざまなアイテムが並ぶビームスの店頭のように、動画には創業以来の東京のファッションと音楽のハイライトが凝縮されている。

世界で最も流行に敏感な都市の一つ、東京が舞台とあっては、40年間のトレンドの移り変わりを描くのは、骨の折れる試みだったに違いない。しかし、重要な要素を何一つ漏らすことなくアーカイブしており、称賛に値する。動画では、南佳孝氏、野宮真貴氏、森高千里氏など27人のミュージシャンが歌いつなぐ『今夜はブギー・バック』にのせて、パンク、裏原(ウラハラ)から一点豪華主義まで、82ものスタイルが次々に紹介される。背景にはマガジンハウスのファッション誌も登場する。

Campaignの視点:ファッショントレンドという、ビームスブランドの枠を超えた大きなものを表現しながらも、控え目な仕上がりとなっている点に好感が持てる。モノを通して文化をつくる「カルチャーショップ」を目指すビームスの価値観を、見事に体現している。

5分という時間は広告を見るには長いが、この動画はもはや広告ではない。グローバル都市・東京の際立ったファッションを支える人々への賛辞であり、懐かしさと新しさを同時に感じさせる作品だ。日本の優れた特性の一つ、美的感性の溢れるショートフィルムがさまざまな国の人々の共感を集める様子は、動画に寄せられたコメントによく表れている。「壮大なファッションの物語」と呼ぶ者もあれば、あるタイの視聴者は「昔のカルチャーも今のカルチャーも素晴らしい。日本人に生まれたかった」とまで書き込んでいる。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

併せて読みたい

3 日前

メディア・リレーションは、PRの一部に過ぎない

メディアへの記事掲載が目標だと誤解されがちだが、事業目標の推進に測定可能な形で貢献したかを問うべきだ。

3 日前

世界マーケティング短信:ネットフリックスのワーナー買収にパラマウントが対抗

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2025年12月10日

オムニコムとIPGの統合について、クライアントが問うべきこと

エージェンシーの統合がクライアントに及ぼす影響について、今こそ直接質問して明確にすべきだ。質問しなければ推測に頼ることになり、この状況下での推測は高い代償を伴う。

2025年12月09日

サントリー「-196」 CFが明かすブランド名の由来

いつも「やり過ぎ」に映る日本の広告。電車やコンビニで巨大なレモンが爆発するこの広告は、その極みだろうか……。