Jenny Chan
2016年8月31日

アジア・マーケット点描 - オーストラリア:エシカル消費にも限界がある

オーストラリアの消費者は、より倫理的な消費への欲求と便利さの追求の間で揺れ動いている。

アジア・マーケット点描 - オーストラリア:エシカル消費にも限界がある

オーストラリアでは近年、ブランドの起源、方法論、理念などを問う消費者のムーブメントがある。

エシカル(倫理的)な商品やサービスは通常、オーガニック、フェアトレード、サステナブル(持続可能)、クルエルティーフリー(動物実験をしていない)というカテゴリーに当てはまる。より広い意味では「環境にやさしい」ということだ。

「エシカルな消費者は、個人、社会、環境への配慮と、これに対するビジネスの対応力を関連付けています」とサピエントニトロ・オーストラリアでコンサルティングリードを務めるジェイク・ハード氏は言う。

ハバスPRアジアパシフィックによる最近の消費者レポート「Because It Matters(それは大切なことだから)」では、消費者の間に広まる「善意の購買」に注目している。同レポートによれば、オーストラリアで顕著な傾向は次の通りだ。

・オーストラリア人の半数以上が、ブランドの倫理面の評判が低いと知ると購入を控え(57%)、倫理的なブランドの製品にはより高い対価を支払ってもよいと考える(54%)。

・21%の消費者が頻繁に、あるいは常に、エシカルな取り組みを基準にブランドを選ぶ。

・40%の消費者が、信頼できるブランドを他の人に紹介したことがある。

「よい行いをすることが、新しい格好よさになった」とカミンズ・アンド・パートナーズのチーフ・ストラテジー・オフィサーであるアダム・フェリア氏は言う。「消費者は、消費をしながらよりよい行いをする方法を探しています。エシカル消費の普遍化は、流行に敏感な都会の人々と見識ある社会が、両輪となって推進しているように思います」

303マレンロウ・オーストラリアでプランニングディレクターを務めるレミ・クーゼラス氏も、ほとんどの人が「エコ志向」と呼ぶものは今や「本格的な主流派」になったと認める。

「かつてニッチだった環境配慮は、今や標準。私たちは製品やサービスに『普通』と『エコ』の選択肢を求めています」

Good on youThankyou はいずれもオーストラリアで立ち上げられた社会的企業で、エシカル消費に関心の高い消費者を結び付けている。

Good On Youは、オーストラリアで1000を超えるファッションブランドやアクセサリーブランドのエシカル度を格付けする、非営利団体「エシカル・コンシューマーズ・オーストラリア」が作ったモバイルアプリ。格付けで考慮されるのは、児童労働の有無、包装材に含まれる有害化学物質、毛皮やアンゴラの使用などだ。

Thankyouは飲料水、食料品、ボディケア製品のサプライヤーで、その収益からソーシャルプロジェクトに出資している。同社の製品にはデジタルIDが付いており、購入者は自分の払った代金がどのプロジェクトに使われるのか把握することができる。

もちろん、こうしたトレンドの背景には自己陶酔的な要素もある。ソーシャルメディアにエシカル消費を投稿することで、人々は自己満足を味わえる。

「小さな個人経営の店で買った放し飼いオーガニックビーフのハンバーガーを撮ってインスタグラムに載せるとき、グローバルチェーンのハンバーガーでは芽生えない独善的な意識が、もちろんそこにはあるでしょう」(ハード氏)

さらにソーシャルメディアの反応は、リアルタイムのフォーカスグループとしての役割を果たし、企業に誠実な事業運営を続けさせる効果がある。

しかし、エシカル消費が低価格や便利さといった魅力を超えて大規模に普及するには、まだ長い道のりが待っているとの見方もある。アイソバー・オーストラリアのストラテジーディレクター、シャロン・ベーハン氏は、消費者の多くは今でも価格を第一に考えていると指摘。また、無関心な消費者もいるという。つまり、非倫理的なブランドにソーシャルメディアで抗議したとしても、必ずしも状況が好転する訳ではないということだ。

その一例が、今年前半の消費者団体「チョイス」による卵の不買運動だ。19のブランドが「放し飼い」を偽っているとして消費者に買わないよう呼び掛けたが、自分の買う卵が本当に放し飼いのものか、時間をかけて調査しようという人はほとんどいなかった。

他と差別化をしたいブランドにとって鍵となるのは、消費者が頑張ることなくエシカルな買い物ができるようにすることだろう。言い換えれば、買い物に今以上の手間や費用、時間がかからなければ、消費者はエシカルな消費を選ぶということだ。

ビーハン氏は「オーストラリアには、何が受け入れられて何が認められないのか、しっかりした規範があると思っている」とした上で、「それでも思考と行動は別物。消費者は倫理面を考慮して買うと願いたい気持ちはあるのですが、果たして私たちはそれほど高潔でしょうか。明らかなメリットがない限り、購入の決め手にはなりにくいように思います」と現実を見据えている。

(文:ジェニー・チャン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

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