David Blecken
2017年3月06日

「トイレの無償提供」でブランディング

世界的な衛生問題の解決に寄与しようと、LIXIL(リクシル)が新たな取り組みを始める。発展途上国での信頼性を築くとともに、社内の一体感を高めることも目指す。

リクシル・ウォーターテクノロジー・ジャパンCEO有代匡氏(左)とリクシル・グループ社長兼CEO瀬戸欣哉氏
リクシル・ウォーターテクノロジー・ジャパンCEO有代匡氏(左)とリクシル・グループ社長兼CEO瀬戸欣哉氏

リクシルが、衛生環境の劣悪なアジアとアフリカの国々をサポートするキャンペーン、「みんなにトイレをプロジェクト」を始める。日本国内や新興国におけるブランド力の強化も狙った取り組みだ。

東京に本社を置く住関連サービス大手のリクシルは、高価格帯のトイレや浴室製品でTOTOとしのぎを削る。今年4月からスタートするこのプロジェクトでは、日本で「シャワートイレ」を1台販売するごとに、衛生的なトイレを使えない環境で生活する人々に、プラスティック製の簡易式トイレ「SATO(サト = Safe Toilet)」を1台ずつ無償提供していく。

同社にとっては初の試みで、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の公式支援窓口である国連UNHCR協会や、住環境の改善支援を行う「ハビタット・フォー・ヒューマニティ」、世界の水と衛生環境の改善を目指す「ウォーターエイド」、バングラデシュを拠点に貧困層を支援するBRAC(Bangladesh Rural Advancement Committee)といった国際NGOと協働。東京オリンピックのゴールドパートナーも務めるリクシルは、2020年までに1億人の衛生環境の改善を目指している。同社の発表によれば、これまで14カ国で100万台のSATOを設置した。

こうした目標を掲げることで、副次的効果も狙う。瀬戸欣哉社長は記者会見でこのように語る。「社内でのブランディングは社員にとって大きな動機づけになります。自分たちの仕事が、発展途上国の人々の生活環境の改善につながっていく。社員がリクシルで働くことに誇りを持てるようになるでしょう」

「社内の一体感の醸成は容易ではありません。これまで様々な試みを行いましたが、今回の取り組みは、我が社が紛れもなく正しい方向に歩んでいるという実感を持てる。そこから生まれる一体感は堅固なものになるでしょう」

リクシルはイナックス(INAX)やトステム(TOSTEM)など数社が合併して2011年に誕生、傘下にアメリカンスタンダードやグローエ(Grohe、独)などを収める。瀬戸氏は、「多様な社員の気持ちを一つにすることが大切で、それを可能にするのが社会貢献という事業。更にこのプロジェクトは、発展途上国で我が社の存在感を高めることにもなります。将来的にそれらの国々の人々が豊かになって、リクシルの製品を購入してくれる可能性につながるのです」と語る。

「地域社会の人々にSATOを提供し、リクシルという名前を覚えてもらうことは大切なブランディング。今後これらの国々が経済成長を遂げたとき、リクシルに親しみと愛情を感じてくれればと期待しています」

「日本では途上国の劣悪な衛生環境がどのような事態を引き起こしているのか、ほとんど知られていません。こうした国々への理解を促すため、キャンペーンのテレビCFを流していきます」。昨年、同社が国内で販売したシャワートイレは約20万台。「この取り組みが成功したら、次はアジアやアフリカ以外の地域への拡大を検討していきます」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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