Surekha Ragavan
2022年8月26日

マリオット「Marriott Bonvoy」キャンペーンの舞台裏

マリオットのロイヤルティプログラム「Marriott Bonvoy」のマーケターであるジュリー・パーサー氏が、新キャンペーン「Here」について語った。TSLAが手掛けたこのキャンペーンは、旅行好きの心をくすぐる、休暇中の何気ない瞬間から着想を得ている。

マリオット「Marriott Bonvoy」キャンペーンの舞台裏

今年に入って旅行が日常に戻ってきたため、旅行関連ブランドは、自社のホテルやサービスに旅行者を呼び込もうと、積極的なマーケティング投資を再開している。

マリオットのAPAC(アジア太平洋)地域ロイヤルティ・パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるジュリー・パーサー氏によれば、この地域の旅行者のうち4人に3人は、海外への旅行を計画しているという。しかしマリオットの調査によれば、彼らの半数近くは、必ずしも夢の旅行先に出かけたい、あるいは一生に一度のバケーションを楽しみたいと思っているわけではない。むしろ、日常から離れ、旅先での「ちょっとした瞬間」を体験し、旅好きだった頃を思い出したい、というささやかな望みを抱いているのだと、パーサー氏は説明する。

このインサイトが、マリオットのロイヤルティプログラム「Marriott Bonvoy」の最新キャンペーンである「Here(ここから)」の方向性を決定づけた。パーサー氏のチームが目指したのは、ふとした瞬間に着目し、人々に旅の楽しみを思い出してもらうことだ。そのために彼らは、絵に描いたような絶景ではなく、何気ないひとときの描写にこだわった。

Hereは、マリオットが、2022年5月にAPAC地域のクリエイティブをTSLAに委託して以来、初となるキャンペーンだ。旅の魅力を再認識させることをテーマにした、2021年の「Where Can We Take You(次はどこに行きましょう)」キャンペーンと連動している。Hereは、中国を除くAPAC地域の旅行者が、旅への回帰を楽しめるような表現に注力している(中国のオーディエンス向けの別のキャンペーンは9月に予定されている)。

マリオットは、約8000の不動産を所有する世界最大のホスピタリティブランドだ。しかしHereは、同社が提供するホテルやその他のサービスにハイライトを当てたキャンペーンではない。むしろ、旅先でありがちな楽しいひとときを、旅好きの人たちに思い出してもらうことを主眼としたつくりになっている。

「人々が旅について想う時、よりリアルに思い出すことに注目したかった。誰かに話したくなるような出来事や思い出、旅の途中で起こった笑えるハプニングといったようなものだ」と、パーサー氏はCampaign Asia-Pacificに語った。「豪華さよりも、旅のこうしたささいな要素に重きを置き、旅行先の景色をあまり強調しすぎないように気をつけた。我々の目標は、Marriott Bonvoyの認知度を高め、ホテルへの好感度を向上させ、ブランドに親近感を持ってもらうことだった」

TSLAの創業者兼最高クリエイティブ責任者、ニコラス・イェー氏は、Campaign Asia-Pacificの取材に対し、制作した映像が、顧客の「旅行への欲求をかき立て」、パスポートを片手に航空券を予約したくなるような作品を目指したと語った。

制作面に関しては、他の旅行関連キャンペーンにありがちなストックイメージ風の映像や、大げさなジェスチャーは意識的に避けた、とイェー氏は言う。

「詳しく説明しなくても伝わるようなコンセプトを狙った」と、同氏は言う。「このキャンペーンは、最初から最後まで、休暇や旅行の雰囲気を醸し出している。完成映像を見ると、今でも鳥肌が立つ。個人的には、クリエイティブディレクターとして、このような作品は見たことがない。とくに、この地域(APAC)では前例がないと思う」

このキャンペーンの撮影は6つの都市でおこなわれ、イェー氏は、さまざまなカメラでそれらを同時に撮影するという手法を用いた。そこでの課題は、各都市で適任な映像技術者や撮影監督を見つけること、また、それぞれの映像をシームレスに編集するため、適切なレンズやアスペクト比にこだわることだったという。

「すべてをつなぎ合わせた完成映像を見ると、美しい意識の流れのように感じる」と、イェー氏は言う。「信じられないくらいリアルで、少しカジュアルでもあり、同時に上質な映画のようにも見える」

通年で展開されるこのキャンペーンは、60秒のコア作品が1本、30秒バージョンが1本、15秒映像が8本、6秒映像が8本と、静止画からなっている。DOOH(デジタル屋外広告)素材は、ソウルの金浦国際空港、東京・渋谷のスクランブル交差点、シンガポール航空の機内エンターテイメントといった主要なロケーションで展開される。マリオットは、TikTokと提携したハッシュタグ・チャレンジや、インスタグラムでの目的特化型のソーシャルキャンペーンも実施している。

「この映像は、Hereというコンセプトの根幹としての役割を担っており、すべての媒体で展開される。一方で、展開する各メディアチャネルに最適な形になるように、注意を払った」と、パーサー氏は言う。マリオットのメディア・バイイングを担当するのは、ピュブリシスグループ傘下のユニットであるマリオット・ワンメディアだ。

パーサー氏によれば、売上がこのキャンペーンの直接的な目標ではないが、Hereをきっかけに旅好きの人々が旅行を再開し、マリオットを旅のパートナーに選んでくれることを期待しているという。

パーサー氏はマーケターとして、マリオットのアプローチが劇的に変化するのを目の当たりにしてきたと語る。パンデミックの間、同社は「ハイパーローカル」戦略をとり、国内旅行、ステイケーション、飲食サービスに力を入れた。そして現在、マリオットは再び自社ポートフォリオを旅行者と共有し、オーディエンスを魅了しようとしている。

パーサー氏は次のように述べた。「我々は、パンデミック以前の、インスピレーションと旅行に重点をおいたアプローチから、パンデミック期間中のハイパーローカル戦略への転換を経験した。今は通常状態に戻りつつあるが、旅行のあり方や人々の認識が(パンデミックを経て)変化したことを考慮に入れながら進めている。誰もが、本当に苦しい時期を乗り越えてきた。我々は人々にインスピレーションを与えたいが、今の人々にとってよりリアルに感じられる形でそれを行いたいと考えている」

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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