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2019年3月15日

世界マーケティング短信: 電通イージス、アジアのリーダーシップ変革

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをまとめてお送りする。

ジョナサン・チャドウィック氏
ジョナサン・チャドウィック氏

電通イージスで幹部の大改革

電通イージス・ネットワーク(DAN)ではリーダーシップ改革が敢行されているが、今週は北アジア担当CEOのロブ・ヒューズ氏、東南アジア担当CEOフィル・ティーマン氏、中国担当CEOスザンナ・ツイ氏が相次いで離職した。更にカラ(Carat)アジア太平洋地域担当前CEOジョナサン・チャドウィック氏も、新たに設立されたワン・シンガポール・メディアグループのヘッドに就任するため離職することをCampaignは把握している。DANのスポークスパーソンによると、同社はチャドウィック氏にネットワーク内の新たなポストを充てがう予定だったという。

こうした改変は大きな驚きではないが、まだ今後も続くようだ。ポジティブな異動としては、クリエイティブエージェンシーの二人のヘッドがグローバルエグゼクティブチームに参加。ディック・ヴァン・モットマン氏がクリエイティブの新たなグローバルCEOに、マックガリーボーエンのゴードン・ボーエン氏がグローバル・チーフ・クリエイティブオフィサーに就任した。

多岐にわたり活躍する著名人の逮捕に、コミュニケーション業界はどう向き合うか

ピーエル瀧(ミュージシャン、俳優)が今週、麻薬取締法違反の容疑で逮捕された。CMやドラマ、映画など幅広い分野で活躍してきた同氏の逮捕により、広告やエンターテインメント業界へも波紋が広がっている。住宅設備大手のLIXILは、同氏が出演するコンテンツを公式サイトやユーチューブから削除、NHKやディズニー、セガなどもコンテンツの削除や差し替え、販売中止といった対応に追われている。有名人による薬物事件は後を絶たず、人々への悪影響も懸念される。だが、過去の作品までさかのぼり、その存在を無きものとするのは正しい判断なのか、それとも過剰反応なのだろうか? コミュニケーションに携わる者として配慮するべきことは? 今後検証していく予定だ。

「インハウス化論争」は続く

ユニリーバは、「インハウスで制作するコンテンツを増やし、現存のアセットをより活用した」ことで昨年のマーケティング費用を約5億6600万米ドル(約623億円)節約できたと発表した。世界第2位の広告主は昨年、ブランド及びマ―ケティング活動に約80億ドルを費やしている。同社はインハウスコンサルティング会社オリヴァー(Uスタジオというオンサイトエージェンシーを経営)と2年前に契約、以来協働するエージェンシーの数や制作費を大幅に削減した。年次報告書では、「外部エージェンシーよりも迅速かつ効率的にブランドコンテンツを制作できるようになった」としている。

これは果たして、マーケティングの未来形なのだろうか。間違いないのは、全ては生み出される作品の出来栄えにかかっているということだ。効率性が優れていたとしても、最終的に出来上がる作品の質が低ければ(第三者の視点が欠けてしまえば、往々にそうなってしまう)本末転倒なのだから。

日本の動画広告、今年は30%の伸び

電通とサイバー・コミュニケーションズが行ったインターネット広告分析によると、昨年動画に使われた広告費は約2030億円で、今年は2650億円になる見通しだという。大きな成長要因はモバイル動画広告で、2019年の伸びが40%と予測される。

モバイル広告全体への支出は1兆円で、インターネット広告費の70%以上を占める。動画へのニーズが増えるなか、日本のインターネット広告はブランディングよりも実績ベースのものに偏っている。全体の80%を占めるのはペイドサーチとディスプレイ広告で、依然圧倒的だ。これは動画広告の効果測定が容易ではないという事実を物語る。概して、重要なのは必ずしもページビュー数ではなく、エンゲージメントのレベルだろう。

インターネット広告全体への支出は今年16%伸び、1兆6780億円に達すると予測されている。

グーグル、昨年は23億件もの不正広告を削除

オンライン広告の分野では、配信先に注意を払おうという「ブランドセーフティー」への関心が高まっているが、道義に反した広告主もまた深刻な問題となっている。グーグルは昨年、23億件もの不正広告を取り下げた。23億件というと大きな数字のようだが、一昨年は32億件だったので減少したともいえる。グーグルの広告掲載ポリシーに反したのは、チケット再販(約21万件)、保釈金立替業(約53万件)、フィッシング(6千万件)など。同社はまた、73.4万件ものパブリッシャーやアプリ開発者を、アドネットワークから削除した。新しく作成されるウェブページや、ユーチューブにアップロードされる動画の量が膨大であるため、グーグルではAI(人工知能)と監視要員のコンビネーションで、チェックに臨んでいる。

変わるフェイスブック広告

フェイスブックは、広告効果の評価のために2015年以降導入されてきたシステムを更新し、より詳細な情報を提供できるようになる。これまで広告主に与えられてきたのは「関連度スコア」のみであったが、今後は知覚品質やエンゲージメント、コンバージョン率などを、同じターゲット層に訴求する競合他社と比較することが可能となる。同社によると、これらの指標によって広告主は、広告のパフォーマンスを改善するために何を微調整すればよいのか理解しやすくなるとのことだ。

一方で、これまでフェイスブックのプラットフォームのオープンさに慣れ親しんできた広告主が、新たな課題に直面する可能性も。同社は広告事業の軸足を、メッセージアプリへの広告掲載へと移す考えを、過去に発表しているのだ。人々がプライベートなやりとりをする空間において、どのような広告を発信すればよいのかを理解すること、そしてユーザーに広告を届けることは、これまでとは勝手が大きく異なる。広告主にとっては大きな不利益を被る可能性もあるのだ。

危機発生時の的確な広報は、今も困難なまま

エチオピア航空機の墜落を受けて、墜落機を製造していた米ボーイングへの風当たりが強まっている。だが同社のメディアへの反応は形式的で、誰の役にも立たなそうなものであった。危機発生時に企業が主導的な役割を果たすことが、いかに困難なのかを浮き彫りにしたともいえる。あるPRコンサルタントはツイッター上で、同社の初動対応は「感情に欠けており、広報のシナリオ集の中で最も使い古されているフレーズで始まっている。グローバル企業にも関わらず米国中心で語られ過ぎている。実在の人物(CEO)のコメントではなく、規制当局に責任転嫁している」とコメント。危機対応に関心がある人のための簡単な教訓は、ボーイング社とは反対のことを実施すること。そして何よりも大事なのは、声明を発表する際には渋々に行うのではなく、積極的に働きかけていくことである。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)

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