Ryoko Tasaki
2025年7月11日

世界マーケティング短信:TikTokが米国向け新アプリ開発へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:TikTokが米国向け新アプリ開発へ

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

米国事業の売却を控え、新アプリを秋に公開か

ティックトック(TikTok)が米国事業の売却に備え、米国のアプリストアで新しいアプリを9月にリリースする予定だと、米メディア「ジ・インフォメーション」が報じた。

バイデン前政権が親会社のバイトダンス(ByteDance)に対し、事業を売却しなければ米国内での利用を禁止する法案を可決。1月にトランプ大統領が就任してからは売却期限が3回延長されており、新たな期限は9月半ばに迫っている。

ユーザーは来年3月まで既存のアプリを使うことができるが、継続して利用するには新しいアプリのダウンロードが必要。ただしこのスケジュールは変更される可能性があるという。

WPPの次期CEOにシンディ・ローズ氏

WPPのCEOとして、シンディ・ローズ氏が9月1日付で就任することが発表された。現CEOのマーク・リード氏は年末に退任予定で、退任までローズ氏をサポートする。

ローズ氏はウォルト・ディズニー・カンパニー、ヴァージン・メディア、ボーダフォン、マイクロソフトの西欧州担当プレジデントや英国担当CEOを経て、現在はマイクロソフト(Microsoft)のグローバルエンタープライズ部門の最高執行責任者。2019年からはWPPの社外取締役を務めているが、広告会社での勤務は今回が初めて。

ローズ氏は声明で「WPPは、社外取締役を務めた6年間だけでなく、それ以前も長きにわたってクライアントとして、そしてパートナーとしてよく知っており、愛している会社です。この会社のCEOに任命されたことは、これ以上ないほど嬉しくて心躍ります。クリエイティブ業界でキャリアをスタートさせた私にとって、故郷に帰ってきたような気持ちです」とコメントした。

WPPの取締役会長であるフィリップ・ヤンセン氏は、ローズ氏について「AIを活用した新しい顧客体験やビジネスモデル、収益源の創出など、世界中の大企業のデジタルトランスフォーメーションを支援してきました。この業界の抜本的な変化や、マクロ経済の不確実性を乗り越えていく上で、シンディの専門知識はWPPにとって非常に貴重です」と語る。またリード氏の30年以上にわたる努力や、特にCEOとして過去7年にわたり同社の近代化や簡素化、変革に貢献してきたことを讃えた。

シンディ・ローズ氏

XのヤッカリーノCEOが退任

X(旧ツイッター)のCEOを2年務めたリンダ・ヤッカリーノ氏が、退任する意向を明らかにした。退任の理由や後任については明らかにされていない。

「マスク氏と初めてXのビジョンについて話し合ったとき、この会社の並外れたミッションを遂行するまたとないチャンスだと確信しました」と自身のXアカウントに投稿。「言論の自由を守り、会社を立て直し、Xを万能アプリへと変革するという責任を託してくれたことに、心から感謝しています」。

ヤッカリーノ氏はXのCEOに就任する前は、米メディア大手NBCユニバーサル(NBCU)でグローバル広告&パートナーシップ担当チェアマンを務め、動画配信サービス「ピーコック」の立ち上げに携わった。2023年にXのCEOに就任してからは、ブランドセーフティの低下を懸念した広告主のX離れ大手広告会社への圧力など、広告事業の立て直しに取り組んできた。

ニック・ローソン氏、アイメディアの会長に就任

エッセンス・メディアコム(Essence Mediacom)のCEOを昨年末に退任したニック・ローソン氏が、高速道路のサービスエリアなどのデジタルOOHを専門に扱う英アイメディア(I-media)の会長に就任した。

アイメディアは昨年、メイフェア・エクイティ・パートナーズ(Mayfair Equity Partners)がMBO(経営陣による買収)を行っており、同社の成長期をローソン氏が牽引していくこととなる。

アイメディアのジョナサン・ルイスCEOは「アイメディアは急速な変革を進めており、ニックの豊富な経験やリーダーシップ、業界への深い理解はこの変革を次のレベルへと引き上げてくれるでしょう」とコメントしている。

マカオ、賭博関連広告の全面禁止を検討

世界最大のカジノ都市として知られるマカオが、賭博関連広告に関する法改正についてパブリックコメントを8月2日まで募集する。

改正案は、テレビ、ラジオ、印刷物、屋外広告、デジタルプラットフォームなどさまざまな媒体において、あらゆる形態の賭博関連広告を禁止することを目指す。また、現在はカジノ区域でのみ許可されている賭博関連広告を、全面的に禁止するものとなっている。さらに、広告掲出の手続きを許認可制から事前登録制に置き換えることも盛り込まれている。

マカオの経済・科技発展局(DSEDT)の局長である邱潤華氏は記者会見でこのように述べた。「コンテンツ、フォーマット、発信チャネルなど、広告の性質は大きく変化しました。今回の協議は、法律の妥当性と執行可能性を確保するため、国民や業界の意見を集めることを目的としています」。

マカオでは2024年、ギャンブル依存症の人数が208人と過去最高を記録し、前年比で23%増加した。政府は、広告の制限によってギャンブルに関するトラブルや社会への悪影響を軽減すると期待している。


【お知らせ】

アジア太平洋地域の若き才能を選出する「40 Under 40」、2025 年度の最終エントリー締切が迫っています。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)
 

 

提供:
Campaign Japan

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