Hiroshi Igarashi
2023年6月19日

「使命は、安全なテクノロジー導入の促進」 電通グループ・五十嵐社長

カンヌライオンズ開幕に合わせ、Campaignでは主要エージェンシーグループのトップに今後のクリエイティビティーのあり方について問うた。電通グループは今後、新たなテクノロジーをどのように活用していくのか。五十嵐博・同社CEOが語る。

「使命は、安全なテクノロジー導入の促進」 電通グループ・五十嵐社長

クリエイティビティーとAIの未来をどのように考えますか? 電通グループではすでにAIを活用しているのでしょうか? あるいは、今後活用していくのですか?

Chat(チャット)GPTを始めとする生成AIの登場は、人の働き方に未曾有の影響を与えました。その潜在性は素晴らしいものがありますが、同時に慎重な見極めも必要です。我々はこれらツールと注意深く向き合い、クライアントが優越性とサステナブルな成長を確実に実現できるよう、賢明なイノベーションを進めていかねばなりません。

生成AIをネガティブに捉える必要はないでしょう。AIによって並はずれたレベルで物事が迅速化し、インサイトのクオリティーが上がる。AIとの共存で根本的な変革が起きると考えられます。

弊社ではすでにAIをチームの一員として導入し、生産性・効率性の向上に活用しています。クライアントのサポートにも有用で、多様なアイデアを迅速に処理してくれる。また、働き方のバランスも整えられます。戦略立案やコンセプト化、情報収集・整理といった業務の優先順位、支出割合を明確にしてくれるのです。

AIはクリエイティブのビジョンを具現化する際、我々のアイデアと専門性を踏まえた提案をします。弊社の使命は、企業やブランドに未来の働き方を示すこと。そのためには、新しいクリエイティブテクノロジーの安全な導入を各社に促進していくことが重要と考えます。

最近では、「ジャーディム・ソノロ(Jardim Sonoro)・エレクトリック・ミュージック・フェスティバル」でそれを実証しました。ショーのハイライトでAIを活用し、これまででは考えられない手法で音楽と自然との融合を演出したのです。

過去1年間で、広告以外の分野のクリエイティブワークで最もインスピレーションを得たものは何でしょう?

広告のクリエイティブワークで多いのは、人間の真実の姿を直接的に描き出そうとするものです。また、ドラマティックな展開や常識を覆すようなイメージもしばしば用いられる。ですから、広告以外では科学の飛躍的進歩が生み出すクリエイティビティーにインスピレーションを感じます。例えば、エネルギー転換を促進するサステナブルなバッテリー技術。これは気候変動対策に欠かせません。あるいは、新しい抗菌薬(抗生物質)の開発。AIの活用によって、薬剤耐性菌に打ち克つ抗生物質が発見されています。

今の経済状況はクリエイティビティーにどのような影響を与えているでしょう?

企業は広告支出に、これまで以上の成果を求めています。こうした状況は、我々にとって最大の力を発揮する機会となり得る。優れたクリエイティビティーでブランドが成果を生み、人を中心とした変革を積極的に進められるよう、弊社はサポートを進めていきます。

画期的アイデアは往々にして、厳しい制約の中から生まれます。今がまさにその状況と言えるでしょう。世界が様々な課題に直面しているからこそ、革新的なクリエイティビティーが高く評価される。個性的なアイデアを持った起業家や、確固たるビジョンを持った経営者が現れるタイミングでもあるでしょう。

重要なのは社会を形づくり、未来を変えるクリエイティビティーです。今は、既成概念を超越するようなクリエイティブシンキングに対する需要の高さを実感します。これまでの「優れた広告アイデア」に対する定義や、クリエイティブが事業変革に果たす役割を刷新するようなクリエイティブシンキングが求められているのです。

(文:Campaign UK編集部 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign UK

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