Tatsuya Mizuno
2021年5月06日

大手広告エージェンシー、揃って好決算

WPP、ピュブリシス、IPG(インターパブリック・グループ)が今年第1四半期(1〜3月期)の決算を発表。いずれもオーガニック成長率(前年同期比)が増加した。

左より:WPPのマーク・リードCEO、ピュブリシスのアーサー・サドーンCEO、IPGのフィリップ・クラコフスキーCEO
左より:WPPのマーク・リードCEO、ピュブリシスのアーサー・サドーンCEO、IPGのフィリップ・クラコフスキーCEO

「ビッグシックス」と呼ばれる世界の主要広告エージェンシー・グループの中で、最も業績が良かったのはWPP。オーガニック成長率は前年同期比3.1%増。次いでピュブリシス・グループが2.8%増、インターパブリック・グループが1.9%増だった。ハバスは0.8%減、オムニコムは1.8%減。電通は今月決算を発表予定。

WPPの売上高は23億ポンド(約3450億円)。マーク・リードCEOはCampaignに対し、「素晴らしい結果だ。成長に転じるのは今年の第2四半期とみていたので、予想より幾分早く、そして着実に業績が改善した」と語った。

確かにこの結果は、WPPにとって大きな成果だろう。同社の2020年第4四半期のオーガニック成長率は前年同期比で6.5%減。第3四半期は7.6%減、第2四半期は15.1%減だった。

ジョン・ロジャースCFO(チーフフィナンシャルオフィサー、最高財務責任者)は投資家向け説明会で、「今期の数字は2年前の同期とほぼ同じ」とコメント。先行きの明るさを示唆した。

この結果を受けてWPPの株価は3%上昇。9.8ポンドとなって、昨年2月以来の高値を記録した。

「成長要因の1つは事業の簡素化。その好例がワンダーマン・トンプソンの好業績です。また、メディア事業は構造的に先行きが厳しいと業界筋が予測しているにもかかわらず、グループエムも好調さを維持している」とリード氏。

「コロナ禍の影響で、依然として我々は世界のほぼすべての国で活動が制限されている。事業への影響が出始めたのは昨年3月で、すでに1年以上。それを考えれば、業績の回復は明らかに1四半期は早い。今年を占ううえで、良い兆候と言えます」

「さらに業界の価値向上、エージェンシーとクライアントとの関係性、顧客とのコミュニケーションに関するクライアントの需要といった点でも明るい兆候」(以上、リード氏)。

成長が最も顕著だった市場は中国。いち早くコロナ禍のダメージを受けた分、回復も早く、売上高は前年同期比18.4%増。次いで英国(3.9%増)、ドイツ(2.5%増)、米国(0.7%増)、インド(0.5%増)の順となった。

「クリエイティブ面の人材への投資とともに、Eコマースとデジタルメディア、テクノロジーが我々の強み。市場が回復すれば、クライアントは成長に向けてサービスの変革を図る。我々との関係性もより深まっていくはずです」

ピュブリシス、米州・アジアで好調

ピュブリシスの第1四半期のオーガニック成長率は前年同期比2.8%増で、売上高は24億ユーロ(約3100億円)。米国とラテンアメリカ、アジアでの業績が好調だった。

最も成長率が高かったのはラテンアメリカで、7.7%増。次いでアジア太平洋地域(APAC)で、5.7%増。中国もプラスに転じ、3%増。「中国では過去18カ月、立て続けにピッチで勝利したことが大きい」(同社)。APACにおける売上高は2億1700万ユーロで、前年同期比0.9%減。

米国ではEコマースへの需要が成長を支え、オーガニック成長率は前年同期比5.1%増。アーサー・サドーンCEOも、「これほど需要が急増するとは予想していなかった」とコメント。傘下でデジタル変革を担うピュブリシス・サピエントは、11.5%増の成長を記録した。

「米国では2019年末に組織の再編を行い、昨年の第3四半期からサービスの供給体制が機能し始めた。今年は良い結果を期待していたが、Eコマースがどのクライアントにとっても最優先課題であることを改めて痛感しました」(サドーン氏)

ピュブリシスは2年前、データアナリティクスを専門とするエプシロンを39億5000万ドルで買収。「この買収で、パーソナライゼーションの最大化に関して業界トップになった。クライアントに大きな優位性をもたらしました」(サドーン氏)。

エプシロンの第1四半期のオーガニック成長率は前年同期比25%増。同社は先頃、トレードデスク社と提携契約を締結。サードパーティクッキー廃止の動きに向け、ユーザーターゲティングとパーソナライゼーションの維持と向上に努める。

欧州市場の売上高は5億6100万ユーロで、オーガニック成長率は1.8%減。英国では活動の規制やクライアントの減少が響き、3.4%減だった。第2四半期には8〜10%の成長を期待するとしているが、先行きは依然不透明で、「年間目標を立てることはできなかった」とも。

この3月、フランスのニュースメディアBFMTVがピュブリシスとハバスの合併案を報じ、ピュブリシスの株価は上昇した。サドーン氏はこの案を改めて否定。「根も葉もない噂で、我々は報道直後に否定した。ピュブリシスの本質的DNAの1つは、自主独立性です」

IPG、データとメディアが伸長

IPGの第1四半期のオーガニック成長率は前年同期比1.9%で、売上高は20億ドル(2200億円)。フィリップ・クラコフスキーCEOは、「世界のほとんどの市場で成長を達成した」と収支報告の席で語った。

米国は前年同期が極めて好業績だったため、今年は0.2%減。米国以外の海外市場では6.3%増で、欧州(大陸)は12.4%増、英国は3.5%増、APACは3.4%増だった。

「再び成長路線になったのは、クライアントが投資に積極的になってきたことの証し。経済回復に歩調を合わせ、ブランド構築や業績向上をより強く意識するようになった」(同氏)

分野別に見ると、成長の主要因となったのはデータ、メディア、テクノロジー、ヘルスケア。同氏は特に、テクノロジーユニットであるキネッソやデータ管理事業を担うアクシオムなどの成長を挙げた。

「サードパーティクッキーへの反発が強まるなか、あらゆる企業がファーストパーティデータの価値を再認識し、データアセット管理の適切なパートナーを求めている。我々の優位性を武器に、この好機を生かしていきたい」

IPGは昨年、社内再編を行い、従業員を8%ほど縮小。コストも大幅に削減し、今年度は5〜6%の成長を見込む。

また、クラコフスキー氏は環境面における企業の社会的責任にも言及。新たなCO2排出削減目標の設定などに取り組んでいることを明かした。

さらに、不平等是正のためマイノリティーの人々が経営するメディア企業への投資も公言。「クライアントにとって信頼が置け、ブランドの安全性を守るパートナーになることが重要。こうした環境づくりはメディア界の責任でもあります」

「我々は世界で最も影響力のあるマーケティングキャンペーンを生み出す会社の1つ。正しいメッセージを正しい手段で伝え、コミュニティーに長期的利益を生み出すことが我々の責務です」

(文:サイモン・グウィン、ギデオン・スパニエ、メイシー、マッカべ、アリソン・ワイスブロット 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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