Tatsuya Mizuno
2021年4月02日

世界マーケティング短信:ピュブリシスとハバスの駆け引き 、FBのグローバル戦略再考

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

ピュブリシス・グループのモーリス・レヴィ会長(左)とビベンディのバンサン・ボロレ会長
ピュブリシス・グループのモーリス・レヴィ会長(左)とビベンディのバンサン・ボロレ会長

ハバスと合併? ピュブリシスの株が高騰

ハバスを傘下に持つ仏メディア大手ビベンディ、ピュブリシス・グループを買収か −− 仏ビジネスニュースメディアBFMTVが「この数カ月、双方がM&A(合併・買収)に関する話し合いを続けてきた」と報道。ピュブリシス・グループの株は3%値上がりして約52ユーロ(6700円)となり、2019年5月以来の高値を記録した。

同メディアによると、ビベンディからのハバスとの合併案をピュブリシスが最終的に拒否。両社のスポークスパーソンは「そうした話し合いはない」「単なる噂」と語り、ノーコメントを貫いている。

ビベンディ会長で筆頭株主のバンサン・ボロレ氏がハバスとピュブリシスの合併に興味を抱いているという憶測は、長年業界で流れていた。同氏はやり手の投資家としても知られ、以前も英イージス・グループの株を大量に購入、2013年に電通に売って巨額の利益を得ている。

ピュブリシスは株価の高騰で企業価値が129億ユーロに。ビベンディの企業価値は335億ユーロに上る。

ピュブリシスは昨年、コロナ禍でも世界6大エージェンシー −− WPP、オムニコム、ピュブリシス、インターパブリック、電通、ハバス −− の中で有数の業績を上げた。今回の合併騒動に投資家たちが色めきたった大きな要因でもある。

 

フェイスブック、グローバルメディア戦略を見直し

フェイスブック(FB)がグローバルメディア事業の見直しを図っている。これはFBのすべての事業 −− インスタグラム、FB、ワッツアップ、メッセンジャー −− のメディアプランニング及びバイイングで、コンサルティング会社コンバージェンスによれば事業総額は7億5000万米ドル。現在、メディア・広告コンサルティング会社IDコムス主導でピッチが行われている。これまで事業を担ってきた電通とマインドシェアもピッチに参加している。

FBは広告主としても巨大な存在だ。米アドエイジ誌によれば2020年の広告支出は43%増で、世界有数の広告主となった。最近では中小企業の顧客獲得をサポートしていくため、ターゲット広告のキャンペーンに力を入れている。

各ブランドはコロナ禍の影響を受け、戦略の見直しや経営合理化を図る。コカ・コーラは昨年末、40億ドル規模となるクリエイティブ及びメディア事業の再検討を始めた。そのひと月後には、ユニリーバがグローバルメディアエージェンシーの再編を発表。これは今年最大のピッチとなる見込みだ。2021年はブランドにとって、エージェンシーとの働き方が大きく変わる年になるかもしれない。

 

グーグルとFB、新たなAPAC幹部候補を募集中

FB関連の話題をもう1つ。FBとグーグルが、APAC(アジア太平洋地域)エージェンシー担当の責任者を探している。

シンガポールのFBで6年間同職を務めてきたニール・スチュワート氏は、5月に引退する意向。広告界に35年間在籍したベテランは、FB入社以前にモトローラやコンパック、オグルヴィ・アンド・メイザーなどでキャリアを積んだ。引退後は母国のオーストラリアに戻るという。

FBは現在、シンガポールに拠点を置く複数のエージェンシートップと接触している模様で、社内の人材登用も視野に入れている。

グーグルでは、同じくエージェンシーとの業務を牽引してきたジョアンナ・フリント氏が今週離職する。グーグル・シンガポールに12年以上在籍した同氏は、マネージングディレクターなど4つの役職を兼務していた。

同氏はグーグル以前にオグルヴィ・ワン・ワールドワイドのプリンシパルコンサルタントやシンガポール航空のデジタル変革責任者を歴任。今後の進路はまだ未定。グーグルはフリント氏の後任を公募しているが、やはり社内人材の登用が噂される。

FBのニール・スチュワート氏(左)とグーグルのジョアンナ・フリント氏

 

日本の4月の消費意欲、過去5年で同月最高

博報堂生活総合研究所が発表する「来月の消費予報」で、4月の消費意欲指数が47.7点となり、過去5年の同月最高値を記録した。前年同月比で1.2ポイント増、前月比2.4ポイント増。この調査は国内20〜69歳の男女1500人を対象に毎月実施され、消費意欲を点数化してもらうもの。

例年4月は3月からの変動が少ない月だが、今月は意外な結果に。消費に対するポジティブな(自由)回答は前年同月の292件、前月の330件から390件に増加。具体的に見ると「新生活や新年度の準備」「春物などの服が欲しい」といった季節に関わる回答や、「(緊急事態宣言解除やワクチン接種などで)コロナ禍が落ち着きそう」といった回答の増加が目立った。

「特に買いたいモノ、利用したいサービスがある」と答えた人も29.4%で、前年同月比6.2ポイント、前月比1.3ポイント増。カテゴリー別に見ると、前年同月比で「ファッション」「外食」「旅行」「書籍・エンタメ」など16カテゴリー中12カテゴリーが大幅増。前月比でも6カテゴリーが大幅増だった。

新型コロナウイルスの感染再拡大は全国で鮮明になりつつあるが、消費者の気分はさらなる自制よりも、むしろその逆に動きつつあるようだ。

(文:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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