Rebecca Lewis
2019年2月05日

柔軟な働き方のすすめ:仕事を持つ母親からの提案

なぜ就職活動中の女性は、子を持つことに興味が無いふりをしなければならないように感じてしまうのだろうか。「そんな必要は無い」と、2児の母親でもあるミュータント(Mutant)のストラテジックディレクターが語る。

(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

ある年代の女性ならばほとんど誰もが、子どもを産む予定があるかどうかと採用面接で聞かれたことがあるのではないだろうか。あからさまな方法ではないにしても、企業には直接的な表現を使わず、遠回しに尋ねる手立てがあるものだ。

私が住むシンガポールを含め、多くの国ではそんな雇用慣行は違法だが、この話に身に覚えがある女性は多いのでは? しかし就職を希望する企業に、妊娠や出産に関わる規定について気楽に尋ねることができる人は、一体どれほどいるだろうか。いつか子どもが欲しいと考えていることを「非難される」ことが怖くて、口にも出せないという人がほとんどだろう。どうしてそんなことを聞けるというのか。

代わりに私たちは、独身で仕事中心主義で、子どもが産めなくなる年齢が刻々と近付いていくことなど考えてもいないかのように振る舞いながら、就職の面接に臨んだり仕事に取り組んだりしている。結婚指輪を外して、ボーイフレンドがいるとさえ思わせないように振る舞う女性たちもいるそうだ。

女性はしばしば、家庭では仕事を持たないかのように振る舞い、職場では子どもがいないかのように振る舞うという記事を読んだことがある。これはとんでもない心得違いだ。私は2人の子どもを持ち、フルタイムで有給の仕事に就いているが(ここでは「有給」であることを明確にしておきたい。子どもがいて家にいる女性も、もちろん「働いている」からだ)、こういった考え方が働く女性にとっても、雇用側にとっても、いかに有害なことか。

ありがたいことに、ゆっくりとではあるが、状況は変化しつつある。1月にシンガポールの人財省が発表した雇用条件に関する最新報告によると、柔軟な労働形態を導入している企業の数が伸びている。柔軟な働き方の案を最低1種類は提供されていると答えた従業員の数が、2017年の70%(2017年)から伸びて、72%(2018年)となった。また特別勤務体系を提供されていると答えた従業員の数も、81%(2017年)から87%(2018年)に伸びた。

柔軟な雇用形態が必要であることは、100パーセント間違いない。なぜなら人々にとってお金は依然として重要な要素ではあるが、職場の文化やそこでの経験、雇用条件がもっと重要視されているからだ。仕事と家庭生活を、自分たちが一番良い形で両立できるかどうかも大切だ。

私の仕事場では、通常12~16週間の有給休暇があり、その後は段階的に職場へと復帰する。私は娘を出産後3カ月で職場に復帰したが、最初の1カ月は1週間にわずか10時間の勤務だった。翌月にそれが20時間となり、その翌月は30時間、そして40時間以上となり、給与は全額支払われた。この制度の目的はリテンション(人材の維持・確保)、従業員エンゲージメント、組織に対するロイヤルティの構築にある。母親を子どもから突然引き離して1日8時間の仕事に強制的に戻すことは、全体にとって全く良いことではない。そんなことをするから、母親となった女性の多くが退職という道を選ばざるを得なくなるのだ。だが柔軟に働くことができれば、働く側に裁量権を戻すことになる。

これは全ての従業員に柔軟な働き方を促進するという考え方にもつながる。私は人生で初めて、自分の人生に仕事を、自分に合う形で組み込むことができるようになった。遅く出勤したり早く退勤したり、時には家で働くこともできる。子どもが病気だからと急いで帰宅することに、罪悪感を覚える必要もない。効率よく生産的な形で、仕事を成し遂げることに集中できる。そこから得られるものが、とてつもなく大きいからだ。よい仕事をすると同時に、家で良い母親業を成すことができ、満足感を覚えている。

柔軟な雇用形態に難色を示す雇用者も多いことだろう。だが仕事についての考え方を変え、従業員の能力を(上司が帰るまで席にいるか否かではなく)仕事ぶりで判断することは、雇用主と従業員双方の利益につながる。仕事のチーム全体の幸福度を増し、コストを引き下げ、生産性を上げることにもなる。

そしてこれは、簡単なことから始められる。例えば雇用側は採用面接の場で、病気休暇や長期休暇について話すのと同じように、女性の産休や育休、男性の育休について率直かつ積極的に話せばいい。シンプルなことなのだ。

柔軟な雇用形態は「子どもといる時間をもっと増やしたいと願う母親」だけでなく、すべての人々にとって大切なのだという基本を理解すればよい。子を持つ人だけでなく、全従業員の一人ひとりから最大の結果を引き出すことにつながるのだ。

このことを理解しないうちは、働く者たちはこれからもうまく責任を果たせなかったり、子どもがいることを隠したり、立ち止まって一息つくことができないと感じたり、うちのめされたりして、自分にはとうてい手に負えない問題を前に仕事を辞めることになってしまうだろう。

(文:レベッカ・ルイス 編集:田崎亮子)

レベッカ・ルイス氏は、シンガポールに拠点を置くPR会社、ミュータントコミニュケーションズ(Mutant Communications)のストラテジックディレクター。

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