Matt Scotton
2021年3月24日

「狂騒の20年代」再来、ブランドの戦略は

コロナ禍で自制を強いられ、消費者の間ではさまざまな欲求が高まっている。来たる時代に見込まれる、劇的な経済成長。ブランドはその流れにどう乗るべきなのか。

「狂騒の20年代」再来、ブランドの戦略は

1918年から20年にかけて世界を襲ったスペイン風邪は、その後予期せぬ大きなインパクトを経済にもたらした。大不況の後に興ったのは、急速な経済回復と爆発的な成長。消費主義の肥大、エンターテインメントの多様化、技術革新……多くの経済学者は当時の状況を今にたとえ、「狂騒の20年代(Roaring 20s)」が再びやって来ると唱える。

これまで自制を強いられてきた消費者は、エクスペリエンスやコンテンツ、そして人とのつながりを求めている。そして、世界はこれまで経験したことのない速度で変化を始めた。今日の経済で極めて重要なのは「迅速性」だ。ブランドが消費者とのつながりを強めれば強めるほど、経済は成長を加速する。「狂騒の20年代」の再来に備え、ブランドは消費者の需要をどのように捉えるべきなのか。

顧客を深く理解する

顧客を理解することはいつの時代でも肝要だが、今ほどそれが重要な時はない。今後は従来の顧客にとどまらず、これまで振り向かなかった消費者層を視野に入れねばならない。年齢や収入などによるデモグラフィック、嗜好や価値観によるサイコグラフィックといった統計だけで顧客を定義づけるべきではないのだ。ソリューションは、消費者の実生活における購買意思決定プロセスを把握する、より細分化されたデータにある。

これを活用すれば、あなたのブランドをひいきにする購買者が新規の顧客なのか、それとも以前からの顧客なのかが理解できる。購買意思決定の要素を特定できれば、持続的成長につながるオーディエンスセグメントを構築できるのだ。クラウドコンピューティングサービスのセールスフォース(Salesforce)・ドットコム社によれば、消費者の52%は購買行動がもっとパーソナライズ化されることを望んでいるという。顧客が見たいものや知りたいもの、そして知ってよかったと思うものを提供することも重要だ。

eコマースをスムーズに

この1年、多くのブランドがオムニチャネルによるeコマースエクスペリエンスで業績を伸ばした。だが我々にとって最も重要な課題は、多くのブランドの中で優位性を確立し、消費者が製品を購入しやくすることだ。

そのためには、「オンラインセールスを伸ばす要素はメディアだけ」という考え方を改めねばならない。メディアの域を超え、幅広い視点からマーケティング戦略を構築する必要がある。たとえば、リテールに必要な条件を満たしてオンライン上で強いプレゼンスを築いたり、強固なeコマース戦略を展開したりすることだ。

自社ブランドが属する分野でひとたび潜在需要を見つけたなら、異なるマーケットプレイスに目を向け、直販サイトとともに業績をチェックすべきだろう。今では、異分野の潜在需要開拓をサポートし、さまざまな分野の基本的インサイトを提供してくれるツールもある。

リテールの条件を満たすことは、優位性の確立と深く関わりがある。まず大切なのは、メディアとコンテンツ、エクスペリエンスの間を消費者がシームレスに行き来できるようにすること。そしてマーケットプレイスが提供する機会を、広告ソリューションを活用しながら確実に生かすこと。こうしたソリューションでメディアインベストメントチャネルとして進化できるだけでなく、プラットフォーム上でこれまで縁のなかった消費者にもリーチできるようになる。さらに、購買者の行動を妨げるような要素はすべて除去しなければならない。ユーザーエクスペリエンスはシームレスであればあるほど良いのだ。

「個」から「集団」へ

パンデミックによる景気後退で、対面であろうがデジタルを介してであろうが、消費者の間では人とつながることへの先天的欲求が高まっている。今年初め、Kポップのガールズグループ「ブラックピンク」のライブストリームコンサートに何百万人ものファンが40米ドルを払ったことはその証だ。そして、ライブストリーミングが売上を伸ばす強力なツールになることも示した。オーディエンスターゲティングを専門とするグローバルウェブインデックス社によると、エクスペリエンスのもの足りなさを補うため、2020年は消費者の3分の1がライブストリーミングを視聴したという。ブランドは新たにバーチャルエクスペリエンスを前面に押し出し、ランウェイショーで即座に服を買えるようにしたり、eコマースページをクラビングのエクスペリエンスにしたりと工夫を凝らした。

バーチャルエクスペリエンスを一時的な流行と見なすべきではない。マーケターの91%は、2021年の優先課題としてライブストリーミングを挙げている。オンデマンドで成功を収めたネットフリックスでさえ、ライブTVのような新たなフォーマットの実験を始めているのだ。

ライブエクスペリエンスの素晴らしさは「時間の共有」にある。各顧客と個人レベルで関わるのではなく、ライブエクスペリエンスの強化はブランドの意義を形づくる。同時に、商品を購入できる機会を盛り込めば、顧客のポジティブな感情をビジネスに活用することも可能だ。2020年、サッカーのイングランド・プレミアリーグでリバプールが優勝すると、スポンサーのカールズバーグはビールの限定デザイン缶を発売した。売り切れになると、フェイスブックのグループではこの缶の売買を活発に行っていた。

今の時代、消費者の需要を最も効果的に捉えたブランドは間違いなく成功を収めるだろう。1920年代は経済成長と富の分配の時代になった。同じように、現代にも希望と明るさに満ちた繁栄がもたらされることを願うばかりだ。


マット・スコットン氏はIPGメディアブランズ傘下のメディアエージェンシー「イニシアティブ」でAPACチーフストラテジーオフィサーを務める。

(文:マット・スコットン 翻訳・編集:水野龍哉)

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