David Blecken
2016年5月30日

鉄腕アトムと「ロボットタウン」

東京 - 「ロボット工学の先進地域・神奈川」をPRする戦略の一環として、短編のアニメ映画が制作された。フィーチュアされたのは、「鉄腕アトム」。手塚プロダクションと ジオメトリー・グローバルの手によるこの「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」は、ロボットが近未来の生活でいかに有用かをややセンチメンタルなタッチで描いている。

鉄腕アトムと「ロボットタウン」

手塚プロダクションは、言わずと知れた鉄腕アトムのオリジナル・アニメシリーズを制作した会社だ。

この短編映画では、主人公の若い父親が自分の娘が生まれる直前、不幸な交通事故に巻き込まれてしまう。彼は鉄腕アトムに誘われて昏睡状態から目覚め、未来へとタイムトリップ。亡霊となった彼は、「ロボットタウン」で快適なハイテク生活を送る家族と再会する。家族は、彼がいなくても幸せに暮らしているようだったが……。
続きは、是非ビデオをご覧いただきたい。

実際の「さがみロボット産業特区」は、神奈川県の12の市と町から成る。この地域の研究所やリサーチセンターでは個人向け支援ロボットの開発に力を入れ、高齢化社会や自然災害の対策に腐心している。

ジオメトリー・グローバルのヘッド・オブ・クリエイティブである三寺雅人氏は、「神奈川が直面している課題は、日本全体や世界が直面する課題と同じ」と語る。

では、なぜ映画の中で鉄腕アトムを取り上げたのか。
このキャラクターは40歳代後半から50代の日本人にとって特別な存在で、自分たちが実現しようと懸命に努力した「ジャパニーズ・ドリーム」を象徴しているからだ。

神奈川県の黒岩祐治知事は、声明の中で次のように述べている。
「皆さん、特に子どもたちには、我々が向かっている未来がどういうものなのか、想像してもらいたかったのです。
誰もが愛するキャラクターである鉄腕アトムによって、皆さんは「さがみロボット産業特区」の充実した未来を実感し、そして視覚体験できることでしょう。このアニメがきっかけとなって、子どもたちが未来の社会について考え、夢を抱いてくれることを願っています」

「Campaign」の視点

ロボット工学の分野において神奈川県、ひいては日本全体が成し遂げてきた業績は目覚ましいものがあり、それを誇りとするのは当然のように思える。
ただ一般の人々にとっては、ロボット工学はいまだ「目新しいもの」であり、場合によっては「恐怖」の対象ともなり得る。日常生活でロボットがどのような役割を果たせるのか、具体的にはまだ想像し難いだろう。

そんな意味で、この短編映画はロボット工学に「人間味を与える」ことに成功している。また、「さがみロボット産業特区」というブランディングも巧みで、他の地域振興キャンペーンとは一線を画している点も歓迎できる。
ただあえて疑問を呈するならば、日本人以外の視聴者はこのアニメ映画を見て、日本の特定の地域ではなく、「日本そのもの」をイメージするのではないだろうか。
また、日本は自国のプロモーションに関してアニメに頼り過ぎているきらいがあり、そろそろ皆、食傷気味になっていないだろうか。人々の心を動かす「成熟したやり方」は、他にいくらでもあるはずだ。

(編集:水野龍哉)
 

提供:
Campaign Japan

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