Jeremy Thomson
2018年9月12日

CX導入は、タイミングが命

顧客視点を真に追求するために、必要なものは何か。ジオメトリー・グローバルのジェレミー・トムソン氏が語る。

完成が見えてきた頃に、建築家と根本的なことについて話し合うのではタイミングが遅すぎる
完成が見えてきた頃に、建築家と根本的なことについて話し合うのではタイミングが遅すぎる

(前回の記事はこちらから)

顧客体験(CX)の重要性を理解し、カスタマーセントリック(顧客中心主義的)思考を組織に浸透させる第一歩は、 CXを信じ、CXスペシャリストを迎え入れること。そのデザインや開発プロセスをいつ、そしてどのように導入するかによって、真に顧客中心の組織に進化できるか否かが決まります。

確かに遅れてもやらないよりマシ。でもやればいいというわけではない

確かに、何の策も講じずに出港してしまった船を見過ごすより、何とかして船に追いつき乗り込むことは素晴らしい事でしょう。しかし、それだけでは決して十分ではありません。

製品やサービスを開発後にQA(品質保証)テストをし、間もなくローンチ。そんなタイミングで、誰かが思い出したように、CXデザイナーにCXテストをするようにお願いすることを思い立つ。そんな状況に、身に覚えはないでしょうか?

CXのタラレバ

CXデザインの話をする際によく家の建築に例えますが、それにはそれなりの理由があります。家に例えると理解しやすいのです。皆さんがマイホームを建築中だとしましょう。予定以上のコストや時間をかける余裕がない限り、着々と作業が進められて4分の3以上が出来上がり、完成が見えてきた頃になって、建築家と家の土台や設計について話し合うことはないはずです。CXデザインも同様です。ローンチ寸前にCXデザインを検討することは、まさにこの状況に似ています。

製品やサービスにより良い、より顧客中心なデザインを、ローンチを間近に控えた時点で取り入れるということは、発表時期を遅らせたり、さまざまな修正に伴うコストを覚悟をするか、あるいは顧客中心のデザインを先送りするという選択を迫られる事になります。どれ一つとして望ましい選択ではないでしょう。製品やサービスの設計段階からCXデザイナーをメンバーに加えることで、この問題を回避し、理想的な形でCXデザインを導入できるのです。

CXはデザインして終わりではない

CXは、そのデザインを業務プロセスに統合するだけで終わりません。継続的に検証され、修正される必要があります。 個人的につながりのある経験豊かなCX専門家ともよく話すのですが、CXデザインは導入しても、継続的な検証や修正を行わない限り、人はすぐに慣れ親しんだ習慣に戻ってしまいます。CXの業務プロセスへの統合とは、言い換えると、適切な人材とツール、さらにはスタッフ個々の努力、コラボレーションをもって企業文化を変える事です。

顧客第一主義のデザインを作りだすために必要なプロセスを設計し、その実行をリードすることはCXデザイナーの責任です。が、エグゼクティブから一般社員まで、会社全体でCXの文化を積極的に促進し、組織的にそれを理解する人々を支援することが必要です。「Culture eats strategy for breakfast(文化が戦略を食う)」という言葉があります。あらゆるものがつながり、顧客主導の時代を迎えた今こそ、この言葉の意味を理解・認識する必要があります。

(文:ジェレミー・トムソン 編集:田崎亮子)

ジェレミー・トムソン氏は、ジオメトリー・グローバル・ジャパンのUXディレクター。

提供:
Campaign Japan

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