David Blecken
2018年6月07日

電通、「SDGsウォッシュ」回避のためのガイドを発表

SDGs(持続可能な開発目標)に係る広告・プロモーション活動に役立つガイドが発表された。このことは、未だに多くの企業が誠実かつ率直なコミュニケーション活動を展開できていないことを示唆している。

電通、「SDGsウォッシュ」回避のためのガイドを発表

SDGsに取り組む企業がコミュニケーション施策において犯しがちなミスを防ぐべく、電通はSDGsコミュニケーションガイドを発表した。2015年に国連サミットで採択されたSDGsは、貧困、健康・福祉、教育、まちづくりなど17項目の目標と、これらに詳細な数値目標を設定した169のターゲットからなる。

ガイド内には「国内外の企業で、SDGsが広報に使われる機会も多くなっている」とある。1980年代には、実態よりも過大に環境配慮を訴求する企業が「グリーンウォッシュ」という言葉で批判された。これが昨今は「SDGsウォッシュ」という言葉に置き換わりつつある。

グリーンウォッシュとSDGsウォッシュの違いについて、電通SDGsプロジェクトの広報担当者に尋ねたところ、グリーンウォッシュは「あくまでも企業の環境視点でのごまかしについて言及」しているのに対し、SDGsウォッシュは環境にとどまらず、人権など幅広い社会課題について言及している点にあるとの回答だった。17項目のゴールと169項目に及ぶターゲットが設定されているため、「ウォッシュ」とされる領域も広範囲になるという。
英語で「ごまかし」「粉飾」を意味する「whitewashed(ホワイトウォッシュ)」という言葉からきた「ウォッシュ」とは、実態以上に、あるいはそもそも実態が無いにもかかわらず配慮しているように見せかけること、不都合な事実を伝えずに良い情報のみを伝えることを指す。SDGsウォッシュであると指摘された企業は、生活者との信頼関係を損なったり、投融資先としての魅力を毀損する可能性があるという。

このガイドラインは企業の経営層やコミュニケーション担当者、広告会社などを対象に、理解しておくべきことや注意すべきことがまとめられている。SDGsを訴求する企業は、批判にもさらされやすいためだ。

「企業がSDGsゴールに関する施策を、ポジティブ面だけをとらえて広告することは危険」と同ガイドは指摘。「実施した施策だけでなく、企業全体の事業が社会に及ぼすマイナス面も考慮に入れ、そのマイナス面についても開示しておかないと、『ウォッシュ』と判断されるリスクがあります」

SDGsのコミュニケーションを企画するにあたっては、企業の規模や能力にふさわしい施策であること、施策の成果が明確で途中経過や結果を一貫した指標で報告できること、単発的でなく持続可能な施策であること、そして「その企業ならでは」の必然性があることを、先立って確認しておくべきだと、このガイドは提唱している。

SDGsウォッシュを回避するために必要なこととして列挙されているのは、以下のポイントだ。

  •  根拠がない、情報源が不明な表現を避ける
  • 事実よりも誇張した表現を避ける(法律で規制されている事項を、自主的に配慮しているように表現することなど)
  • 言葉の意味が規定しにくいあいまいな表現を避ける
  • 事実と関係性の低いビジュアルを用いない

人権への配慮については、以下のチェックポイントを確認する必要がある。

  • 言葉本来の語源を調べてから表現に用いる
  • 登場している人や集団の、表現方法が適切かどうか検証する(ステレオタイプな役割やイメージ、先入観、差別意識などが表現されていないか)
  • 各国で価値観・文化の相違があることを認識しておく

だが、企業が誠実なコミュニケーション活動を行うべきなのは、いつの時代も当然のこと。あえて注意を喚起するのは一体なぜなのか。「競合企業との競争環境において、他社より優れている、もしくは同等であると発信していかないと、自社が有利に市場で戦えないと考えている企業が多いからではないか」と広報担当者は語る。

「特に、技術や性能の差異が現れなくなってくると、自社に都合の良いデータを使ったり、表現などを誇張したり、他社に対しての優位性を消費者に示したくなるのでしょう」

よく見られる失敗例は、自社がポジティブなインパクトを与えるSDGsゴールのみを発信し、その裏にある負の側面については触れないというもの。「自社に有利とならないSDGsゴールについて、対策や開示が不足していると思われます。自社に有利なゴールのみに着目してしまうと、SDGsゴール全体の中での自社の位置付けを見失ってしまう可能性があり、ステークホルダーから指摘を受けることになってしまう」のだという。

ポジティブとネガティブ、両側面をバランスよく発信できれば「企業やブランドに対する信頼性や好感度を獲得することができる」のだと、同氏は結論付ける。

企業が発信する情報が実態といかに乖離しているか、何が隠されているのかは、誰でも簡単に見つけ出せるようになった。それがSNS上で暴露されるなど、一昔前では考えられなかったような規模とスピードで、ネガティブな情報は拡散していく。ダイバーシティー(多様性)の浸透がまだ十分といえない日本国内で、これまでであれば許されてきた(あるいは目をつぶってもらえた)表現も、今後は厳しい批判の対象となり得る。ガイド内で指摘されているポイントをチェックすることは、コミュニケーションに携わる上で最低限の責任といえるだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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