David Blecken
2016年11月29日

アメリカ風中華料理のパンダエクスプレス、日本に再上陸

日本市場から一度は撤退したものの、成功を目指して再参入してくる米国のファストフード・ブランドは少なくない。LA発のカジュアルレストラン・チェーンも、二度目の挑戦に踏み出した。

アメリカ風中華料理のパンダエクスプレス、日本に再上陸

カリフォルニア州ロサンゼルスを本拠地とする中華料理チェーン「パンダエクスプレス」は、ラーメン専門店「一風堂」などを運営する力の源(CMC)と提携し、日本市場への再参入を果たした。

パンダエクスプレスはかつて日本でチェーン展開したことがあったが、日本の消費者に受け入れられる味付けに調整しきれず撤退した経緯がある。今回の再チャレンジは11月25日に、東京近郊の川崎でオープンした店舗から始まった。

川崎店は、アジア太平洋地域では韓国のソウル店に続く2店舗目。創業者一族が経営するパンダエクスプレスは、本拠地の米国ではおよそ1,950店舗を運営しており、カナダ、メキシコ、ドバイ、サウジアラビア、グアテマラ、プエルトリコ、グアムなど、米国以外の幅広い市場にも進出している。

パンダエクスプレスの業態は、ファストフードとファミリーレストランの中間「ファストカジュアル」で、「アメリカ風の中華料理」を提供している。例えば左宗棠鶏(鶏の甘辛ソース炒め)など、日本ではあまり馴染みがない料理だ。親会社のパンダ・レストラン・グループでシニア・バイス・プレジデントを務めるグレン・イナナガ氏は都内でインタビューに応じ、「日本での店舗数の拡大も考えていますが、まずは1号店を通して当社のコンセプトを打ち出しながら、日本の消費者の好みを把握していきたい」と述べた。アメリカ風の中華料理からは逸脱しないが、必要なローカライズは行うという。

「単なる中華料理ではなく、アメリカ風の中華料理であるというメッセージを届けたいのです」と同氏。パンダエクスプレスのターゲットは主にファミリー層で、マクドナルドのようなファストフードよりは高級路線だが、典型的なファミリーレストランとも異なるという。「中華料理に関心はあるものの、一般の中華料理店のメニューには敷居の高さを感じている。そんな方々の入り口になりたいのです」

イナナガ氏は、調理済みの食品を出すのではなく、材料や調理の過程が見えるようにしたことを差別化ポイントとして挙げる。この点は、日本では非常に重要な意味を持つ。食の安全に関する不祥事のために客足が遠のいたマクドナルドは、2015年度の業績が大幅に悪化し、ようやく回復しつつあるという状態だ。

「スピーディーなサービスという利便性と、調理プロセスや品質の保証といった点に、お客さまは価値を見出すと思います」とイナナガ氏。同社は口コミによってブランドの認知度向上を目指す。

マッキャンエリクソンのシニア プランニング ディレクター、松浦良高氏は、パンダエクスプレスの1号店オープンに際し、日本市場での成功は容易ではないとの見方を示す。欧米のファストフード・チェーンが日本市場に参入したものの撤退し、何年か間を置いて再び参入するケースが少なくないことに触れ、「競争は激しく、品質と価格に対する消費者の目も非常に厳しいのが、日本市場の特徴です」と話す。

一方で、パンダエクスプレスにはチャンスもあるという。日本にはまだ、テーブル席での食事が可能な中華料理ファストフード・チェーンの大手が無いからだ。「成功のカギは日本の消費者に受け入れてもらえるかどうかです」と松浦氏。「アメリカ風中華料理というポジショニングは、必ずしも意味や付加価値を生むとはいえません」と指摘し、それよりも日本人に受け入れられる味付けと費用対効果を確実に実現するよう注力すべきだという。

川崎に控え目に出店した点について松浦氏は、試験的な立ち上げとして理に適っていると評価する。「オープン初日から全てを完璧にこなせるのでない限り、東京都心から始めるのはリスクが高い。市場に控え目に参入し、全国展開でうまくいく方法を模索することが肝要だと思います。日本は今でも世界最大市場の一つですから、正しく攻めれば成果も大きくなります」

イナナガ氏によるとパンダエクスプレスは、アジアではインドやフィリピンへの進出も検討しているという。ここ2年の間に日本市場に参入した米国のファストフード・チェーンには、タコベル、シェイクシャック、カールスジュニアなどがある。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

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Campaign Japan

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