Matthew Miller
2020年5月29日

電通、7%のコスト削減へ

さらなる人員削減は、コスト削減案には含まれていないという。

電通、7%のコスト削減へ

電通グループが2020年度第1四半期連結決算を発表した。売上総利益は前年同期比で0.4%減、オーガニック成長率は0.8%減。今年度は7%のコスト削減を目指す。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)による先行き不透明感から、業績予想は「一旦取り下げる」とした。

0.4%減となった売上総利益の内訳は、国内事業が2.1%増、電通イージス・ネットワーク(DAN)による海外事業が2.6%減。

0.8%減のオーガニック成長率は国内が2.1%増で、海外が3.3%減。国内ではデジタルソリューション、マーケティング及びプロモーションの好調さが成長を支え、海外ではAPAC(アジア太平洋地域)、特にクライアントが減少した中国と豪州での業績悪化と、コロナ禍の初期段階における影響がマイナス成長の要因となった。

また、今年度は当初計画から7%のコスト削減を目指すと発表。電通のスポークスパーソンによれば、この案に「人員削減は含まれていない」という。

コスト削減への取り組みはすでに2月より実施され、その内訳は不要な出張や裁量的支出のカット、外部企業・業者との契約見直し、労働時間短縮に伴う人件費減、報酬減額など。さらに、第2四半期末までのM&A(合併・買収)の一時停止、各市場に見合った経営効率化の促進などが含まれる。

執行役員報酬も第2四半期以降、減額となる。

山本敏博・電通グループ代表取締役社長執行役員は、英文のニュースリリースで以下のようなコメントを発表した。

「第1四半期における電通グループのオーガニック成長は0.8%減少となりました。今年度初めは比較的堅調なスタートを切りましたが、今四半期後半には新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。

コロナ禍によって我々の業界は需要低迷に陥り、我が社の業績に国内外で影響を及ぼしています。今年度の収益は落ち込みが予想されます。

その影響を緩和し、利益と従業員の雇用を守るため、我が社はコスト削減策を迅速に打ち出しました。しかしながらコロナ禍による不透明感の拡大に鑑み、今年度の業績予想を取り下げ「未定」とします。現在の危機下における我々の最優先事項は、クライアントや消費者、地域社会、そして従業員とその家族の健康と安全、幸福を守ることにあります。この考え方が、コロナ禍への我々の対応の基本方針となります。

従業員の日々の生活が混乱をきたすと、事業にもただちに影響が出ました。しかし我々は、普段からの協調を重視する姿勢で結束を維持しました。新事業を担うチームはネットを活用し、迅速にクライアントへの競合プレゼンに対応し、勝利を重ねることができました。「コロナ後」にはクライアントがより力強い存在となれるよう、価値ある消費者インサイトの提供や進化するニーズに対応しながら、サポートをさせていただいております。

先を見据えて、我々は今後も変革を進めていきます。国内の電通ジャパン・ネットワークでは、収益源の多様化とクライアントとの関係拡大に努め、持続可能かつ弾力的な収益成長の実現に注力してまいります。専門性が極めて高い電通デジタルやISID(電通国際情報サービス)、CARTA HOLDINGS(カルタ・ホールディングス)といった傘下のブランド間における協力関係を強化し、クライアントに統合的なソリューションを提供することでデジタル変革をサポートしてまいります。

海外事業では、クライアントニーズに合わせた世界クラスのサービスと統合ソリューションを分かりやすい形で提供していきます。昨年12月に発表した事業構造計画は予定通り進展しており、今年と来年におけるコスト削減は計画通り実現できる見込みです。3月に発表したマークル社の完全子会社化は有能な人材の維持と今年度の連結EPS(1株当たりの利益)上昇につながることでしょう。マークル社はDANの差別化要素であるデータドリブン、テクノロジー対応のサービス提供で中心的な役割を果たしています。また、DANの新たなグローバルCEOとしてウェンディ・クラーク氏を任命しました。9月に彼女をグループの一員として迎え入れることを楽しみにしております。

国内外の協働と協調、そして事業の一体化は、コロナ禍への対応と、特にこの難局におけるクライアントの変革のサポートに欠かせない要素です。「one dentsu」というコンセプトが今ほど重要であると感じたことはありません。従業員は私どもの最大の資産ですが、電通グループ内の多様かつ才能あふれる6万6000人の従業員をリードできることは、私の誇りとするところであります。

(文:マシュー・ミラー 翻訳・編集:水野龍哉)

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