Ryoko Tasaki
2018年5月18日

Campaignが見た「アドバタイジングウィーク・アジア2018」(パート1)

3年連続の都内での開催となった「アドバタイジングウィーク・アジア2018」。5月16日のセッションから、Campaignが注目したテーマをご紹介する。

Campaignが見た「アドバタイジングウィーク・アジア2018」(パート1)

マーケティングは、マスパーソナライゼーションを目指す

ユニリーバではマーケティングを「デジタルマーケティング、モバイルマーケティング、トラディショナルマーケティングなどと区分していない」と語るのは、グローバル・メディア担当EVP、ルイス・ディコモ氏。軸にあるのは「Crafting brands for life(人生に欠かすことのできないブランドを作る)」という考え方だ。人を中心に考えること、愛されるブランドを構築すること、そして(クリエイティブの)マジックを解き放つことの3本柱が、あらゆるものがつながる世界でブランドを構築するために不可欠だという。

これらを実行に移す際の方針が、「5C」だ。その事例として、帽子やヘルメットの着用が必要な企業が社員に頭皮ケアシャンプーを支給する「着帽手当」、タイで愛されてきたアイスブランド「ウォールズ」の販売員「Wall’s Man」にラインで注文・支払いができる「Wall’s Man 2.0」などの取り組みを紹介。人こそがあらゆる施策の中心であり、「さまざまな人のニーズと、それらに共通するものを探すことで、(多くの人に向けた)マスマーケティングから、(個々に向けた)マスパーソナライゼーションへの移行を目指したい」とのことだ。

澤本氏と篠原氏が考える、プランナーの条件

電通でCMプランナーを務め、数々のヒットを生み出してきた澤本嘉光氏と篠原誠氏。モデレーターの笠松良彦氏(イグナイト)から「良いCMプランナーになるための条件」を尋ねられ、澤本氏は「良いとされてきた過去の作品を見まくること」とコメント。何が高い評価を受けてきたかを知っておくことは、企画を考える上での基礎になると語る。

篠原氏が考える条件は、「自分のアイデアが世の中に出ていったときに、どう受け止められるか」という想像力と、否定的な意見が出たら「プロとして一回は受け止め、飲み込んでみること」。同じゴールを目指す者からのネガティブな意見を、理由をよく聞いた上で作品に反映させたところ、「前よりも明らかに仕上がりが良くなった」といった経験が何度かあったという。これに対し澤本氏も「いろいろなことを言ってくれる人を、むしろ重要視している」と共感を示した。

行動科学に基づいた、効果的なマーケティング活動を

健康に関する正しい情報がきちんと伝わるよう戦略を立てて実行する「ヘルスコミュニケーション」が注目されたきっかけは、1990年代後半から5年にわたり全米規模で実施された若者の麻薬使用防止キャンペーンの失敗だという。多額の予算を投じたにも関わらず、このキャンペーンを幾度も目にした若者が、逆に麻薬に興味を持ってしまったのだ。「人の命に関わる領域こそ、エビデンス(科学的根拠)と行動科学に基づいて企画を組み立てなければ、命を脅かしかねない」と、マッキャンヘルスの林英恵氏は語る。

若者の行動科学やインサイトをつぶさに調べ、クリエイティブジャンプによって成功させた例に、「Truth」キャンペーンがある。「何かに反抗したい」という若者のインサイトを理解した上で、たばこ会社がいかに若者たちを騙そうとしているのかを暴き、若者の反抗心をたばこ会社に向けることに成功したキャンペーンだ。人の行動を変えようと思ったら、さまざまな要素を検討してインサイトを調査し、行動に結び付きやすい要素を絞り込む。過去のデータに基づいて、行動変容を起こすシステムを開発すれば「何を、誰に、どこで、どのように伝えるべきかが導き出される」のだという。

リアルとデジタルの融合は、これまでに無い発想で

「このままでは日本はヤバい」と強い危機感を持って議論を交わしたのは、鈴木禎久氏(電通デジタル)、安藤元博氏(博報堂)、黒川順一郎氏(アクセンチュア)、笠松良彦氏。このメンバーは昨年も、「コンサル会社と広告会社の競合と協業をテーマ」に議論している。まず共有されたのは、1990年代前半の世界時価総額ランキングで上位に名を連ねていた日本企業は現在ランク外で、代わりにランクインしているのはベンチャー企業や中国勢だという衝撃の事実。特に、オフラインにデジタルを浸透させる中国企業の躍進に、一同は「このままでは日本は置き去りにされる」と危機感を募らせた。

広告や店頭の棚を確保すれば売れていた時代は終わり、人を中心に据えて考え、人に寄り添ったサービスを提供していくことが不可欠だ。旅行を例に挙げると、航空券の予約や空港までの移動、フライト、空港から目的地までの移動など、消費者はそれぞれについて調べて手配する必要があったが、これらのサービスをシームレスに選べるよう連携することが可能だろう。だが「あくまでも人に寄り添うことが目的。連携することが目的ではない」と強調する。従来であれば考えもしなかったようなことに今挑戦しなくては、世界ではもちろん日本国内でも生き残れないという、厳しい現状が浮き彫りとなった。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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