Ryoko Tasaki
2018年5月21日

Campaignが見た「アドバタイジングウィーク・アジア2018」(パート3)

3年連続の都内での開催となった「アドバタイジングウィーク・アジア2018」。5月14日のセッションから、Campaignが注目したテーマをご紹介する。

Campaignが見た「アドバタイジングウィーク・アジア2018」(パート3)

変化に対応できた者が、良い仕事に就ける

政府が関連法案の成立に向けて協議中の「働き方改革」は、長時間労働をいかに是正するかといった意味でとらえられることが多い。だが我々は「インダストリー 4.0」と呼ばれる産業革命の真っ只中にあり、しかも革命は「リニアにではなく、一気に起こるもの」とリンクトイン村上臣氏は指摘。その例として2枚の写真を紹介した。1枚目は1900年のニューヨークの写真で、道路上にたくさんの馬車が写り込んでいるが、わずか13年後に写された2枚目の写真では全て自動車に置き換わっている。馬に関連する職が多く失われたことは想像に難くない。「時代が大きく変わるときには、仕事もトランスフォーメーションが必要なのです」

村上氏によると、求人と求職の情報が多く集まる同社のデータからは、「ABC」と呼ばれる人工知能(AI)、ビッグデータ(Big Data)、クラウド(Cloud)の分野で、企業の投資が伸びていることが分かるという。そして「変化に適応した人は、より良い仕事に就くことができています」。最近は専門性の高いスキルと、人前で話す能力などの「ソフトスキル」を兼ね備えた人材が求められる傾向にあるようだ。また、個人だけが変化への対応を求められているのではなく、企業側も多様な働き方を認めるなどの対応が必要だ。学生の頃から膨大なPV数を誇るブログを運営していたり、会社を立ち上げている人も増えており、単に副業を禁止するだけでは対応が難しくなってきているという。

6秒だからこそ広がる、表現の可能性

2016年に登場した、わずか6秒という短さの「バンパー広告」。これから動画を見ようとしている視聴者に、嫌われることなく見てもらえるCMとして、最適なのがこの6秒という長さだとか。その活用例として、複数の6秒広告を30秒TVCMにも展開した例などを紹介。情報過多を避けること、ナレーションや文字情報を連動させて印象付けること、認知されやすいよう著名タレントを起用することなど、尺の短いCMだからこそ重要な工夫を、博報堂ケトルの皆川壮一郎氏は列挙。7割がスマートフォンからの視聴であることから、「試写室の大きなテレビでなくスマートフォンで試写した方がいい」とも指摘した。

「6秒広告は辻斬りのような、良くも悪くも一発ネタ」と話すPARTYの中村洋基氏は、綿密な計画を立てる従来の制作工程よりも、臨機応変に対応できる「アジャイル型」の制作の方が合いやすいと感じているという。制作途中でもっと面白い案を思いついたら、そちらの制作もできるよう、あらかじめクライアントと合意しておくことを推奨した。

さまざまなフォーマットの広告を組み合わせることでも、相乗効果を高めることができる。読売広告社の柴田愛氏が手掛けたのは、22種類に及ぶバンパー広告と、これらに一度でも接触した人に向けた総集編の長尺CM。長いCMは途中でスキップされがちだが、「広告をスキップするというのは、視聴者の能動的な行動。それとクリエイティブが連動していると面白いのではないでしょうか」。スキップした視聴者には、一連のCMに登場する女性タレントが「スキップしたから嫌いです」と拗ねてみせる15秒強制視聴CMを用意し、笑いにつなげるよう工夫した。

効率化以上の恩恵をもたらすオンライン送稿

テレビCMの素材をメディアにプリントし、それを放送局に物理的に届ける従来の運用方法から、オンライン送稿にいよいよ移行する。コストや時間の節約が可能なのはもちろんだが、クリエイティブ面においても大きなメリットがもたらされる。既に運用されている欧米では例えば、CM内でクイズを実施し、正解したプレゼント当選者を次のCMで発表するテレビCMがSNS上で話題となり、リアルタイムでのCM視聴者増につながった例も報告されている。さまざまな素材を用意して反応を見ながら最適化したり、そもそもCM素材を自動生成して送稿するといったことも可能となる。

日本でオンライン送稿をいち早く導入したユニリーバの山縣亜己氏は、ぎりぎりまでCM制作をしている実情を鑑みても、オンライン送稿の恩恵はすぐもたらされるだろうと述べ、さらに「クリエイティブでできることの可能性が拡がる」と前向きだ。一方で、CM枠の購入の仕方や考査プロセスといった仕組みの部分が変わらなければ、せっかくの可能性が狭められるとも指摘した。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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