
ベインキャピタルによるADK買収が不成立に終わった場合には、WPPはもっと多くのADK株を保有する意向を示した。
ADK株の約25%を保有するWPPは15日の声明で、ベインは「ADKの企業価値や将来性」を過小評価しているとして、買収に反対する姿勢を改めて強調した。TOB期間は11月21日まで。
WPPはADKの経営戦略や経営陣を強く批判しているが、今回の買収劇について「自分たちの立場を明確にしておきたい」と声明で発表。具体的には「TOB不成立の場合は、ADK経営陣と建設的な関係を構築し、同社の強みであるアニメや、(今後の成長が期待される)デジタル領域の拡大に注力することを支援」して、ADKの企業価値向上に貢献していく考えだという。
また、株主や経営陣の合意があれば、保有するADK株を33%にまで増やしたいとの考えも明らかにした。ADKの企業価値向上に向けた提案は、買収に関する声明でこれまで出されてこなかったが、ADKの株主たちからの反対票を取り付けて買収を阻止したいというWPPの姿勢がうかがわれる。期限内にベインが50.1%以上の株式を取得できなければ、TOBは成立しない。
ADKがWPPグループとの資本・業務提携を解消する意向であることは、13日に発表された第三四半期決算短信にも記されている。提携による効果を長い間見出すことができず、非生産的だったと両社ともに批判しているが、WPPは日本でのメディアバイイングをADKに頼っている状態だ。
もしベインによる買収が成立しなくても、WPPがADKの経営陣を変えることができなければ、両社が良好な関係に戻ることは難しいだろう。ADKの植野伸一社長は、WPPとの提携関係はTOBの結果に関わらず解消するとの考えを公にしている。WPPはこの3月に、植野社長を追認しようと試み、6割近い株主から阻止された経緯がある。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)