2016年12月16日

涙を誘うバイラル動画の活用

涙腺の緩む動画で知られるタイの生命保険大手が、胸を締め付けるような最新作「チャンス」を発表した。

パートナーコンテンツ

タイの大手生命保険会社「タイライフ保険会社(以下「タイライフ社」)は、目を潤ませる感動の動画「チャンス(Opportunity)」をリリースした。

この動画は「逆境に立ち向かうこと」、つまり、勇敢さや強さ、他人のために正しい行いをすることなどをテーマにしている。どこにでもいる普通の人がヒーローになるという、同社の代名詞ともいえるストーリー展開だ。この動画を見れば、女性の主人公を応援し、彼女が幸せになるよう心から願わずにはいられないだろう。

同社の泣かせる動画は他にも、#FollowTheFather(ユーチューブ再生回数490万回)、Street Concert(同800万回)、Unsung Hero(同2890万回)、Garbage Man(同410万回)などがある。インターネット上で拡散しているので、見たことがある人も多いのではないだろうか。

まるで映画のような胸に迫るテレビCMのシリーズは近年、タイライフ社の名と同義語のようになっている。生命保険会社が同社のように消費者の感情に訴えることは、実はまだ珍しい。感情にストレートに訴求する純粋なストーリーテリングで、同社と消費者は深い部分でつながっている。そして、心をつかまれたのはタイ本国の人々に留まらない。一連の感動的な物語には、同社の中核をなす信条の一つである「命の価値」が描かれている。

最新作「チャンス」は、きちんとした服装の中年の女性が採用面接で、チャンスを与えられたことを雇用主に感謝するシーンから始まる。雇用主は「チャンスはどうやって訪れると思う?」と質問する。そして、主人公がこれまでたどってきた人生を振り返り、恵まれた者の世界と恵まれない者の世界の二つを経験してきたことが描写される。

動画の冒頭、自立した女性が自らチャンスを生み出す様子が映し出される。そして「以前にチャンスを掴んだことがないから、チャンスが訪れるのでしょうか?」との質問が視聴者に投げかけられ、主人公がチャンスを手にするまでに歩んだ道のりが語られるのだが、これが実に悲しい話なのだ。

彼女は子どもと共に家から追い出され、路上生活を余儀なくされる。その結果、幼い息子は彼女の腕の中で悲劇的な死を遂げる。ほこりの舞うバンコクの道端で、彼女は悲しみに打ちひしがれる。

ある日、ホームレスの小さな男の子が母親に抱かれて咳込む姿に、主人公は自身の不幸から目覚めてハッとする。この母親と男の子が自分と同じ目に遭わないように助けること、人のためにチャンスを創り出すことが、自分の使命だと気付くのだ。主人公がしっかり握っていた最後のパオ(肉まん)を男の子に差し出すシーンは、タイで広く信じられている「何かを手放すと、より多くを手に入れるための自由が得られる」という、大きなテーマを象徴している。

こうして主人公は自らを奮い立たせ、仕事を見つけるためにあらゆる手を尽くす。そして、粘り強さが実を結び、保険会社(タイライフ社と思われる)の採用面接に合格し、彼女は職を得る。

最後のシーンでは、保険の書類を持っていなかったために瀕死の子どもの手術を断られた母親の姿と、その母親に保険の書類を届けようと病院の中を必死に駆け抜ける主人公の姿が交互に映し出される。

心に沁み入るストーリーが、美しい映像と音楽によって引き立てられたこの作品。見ればきっと目頭が熱くなるだろう。

併せて読みたい

6 時間前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

1 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。