David Blecken
2018年3月20日

資生堂、新「TSUBAKI」のシンプルなメッセージ

ワイデン+ケネディがはじめて手がけた資生堂のキャンペーンは、オーソドックスなシャンプーの広告とは一線を画すものだ。

資生堂が、新たなTSUBAKIのキャンペーンを日本で開始した。これまでよりも現実的な方向性を示すものだ。

制作を手がけたのは昨年、資生堂より指名を受けたワイデン+ケネディ東京。女性の美しさをアピールしてきた過去のキャンペーンとは対象的に、シンプルさと清純さを今回のテーマとした。

1分間の動画でフィーチュアされるのは、1人の若い女性の日常。もちろん髪の手入れのシーンも含まれるが、その部分を強調するのではなく、「健やかな髪こそ生活の本質的要素」というメッセージに力を入れる。15秒の短いバージョンでは、製品の自然由来の成分にスポットを当てている。

TSUBAKIは、この分野の常識の逆を行くブランドとして知られる。スタートは2006年、「日本の女性は美しい」というスローガンのもと巨額の予算を注ぎ込んだキャンペーンを展開、日本人の美意識を訴求して話題を呼んだ。

ライバル各社がモデルにブロンドの西洋人女性を多用する中、TSUBAKIはこのアプローチで市場におけるリーダーシップを確立。安定したポジショニングを築き、ブランドを強固なものにした。だが、最近のテレビキャンペーンではその威光も衰退。例えば2016年のCMは、有名女優が森の中で恋するゴリラを「狙撃」するという首をかしげるような設定だった。

Campaignの視点:この新しいキャンペーンの美学は過去の作品からの訣別を鮮明にし、一般女性にとって親しみやすいものだ。だがある種のテイストをそぎ落とし過ぎている感もあり、「美しさの演出は決して悪くはない」と異を唱える意見も出るだろう。

いずれにせよ、日本のシャンプーやコスメティックの広告はどれも区別がつかないほど同じスタイルを踏襲する傾向がある。そうした点でこの作品は、我が道を行き、各女性の美しさを誠実で率直なアプローチで賛美するというTSUBAKIの「原点回帰」を示している。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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