Gideon Spanier
2018年4月05日

ソレル卿、調査へ 驚きを隠せないWPP社員

世界最大の広告会社に、不正疑惑の調査が行われることに。同社の将来に暗雲が立ちこめる。

マーティン・ソレル氏
マーティン・ソレル氏

WPPのサー・マーティン・ソレルCEOの「個人的な不正行為」と会社資産の使用について調査が行われると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じた。WPPグループの社員たちはこのニュースに大変驚いているという。同社の上層部は「こうなるまで取締役会で解決できなかったのは深刻な事態」と話す。

WWPの取締役会(議長はロベルト・クァルタ氏)は「ソレル氏の個人的な不正行為疑惑について、独立機関による調査を行う」と、中立的で短い声明を発表。一方でソレル氏も、疑惑を否定する声明を発表した。

調査の詳細について、明らかにされていることは少ない。ソレル氏の率いるWPPグループは、過去12カ月間で業績が悪化し、同社の株価は約3分の1も下落。クライアントがエージェンシーにより一層の透明性を求めるようになったこと、デジタルマーケティングを自社内で行うようになったことの影響を受けたものだ。

ここで大きな疑問となるのは「調査によって何が明らかになるのか?」、そして「取締役会はソレル氏を支えるのか?」であろう。調査はできる限り早急に行われるというものの、それがどの程度の期間となるかは不明だ。アレン・アンド・オーヴェリー、スローター・アンド・メイを含む3つの法律事務所が関わるとみられる。

現在73歳のソレル氏は、細部まで細かい指示を出すことで知られている。WPPの本拠地があるロンドンでは、ソレル氏と取締役との間の緊張感について憶説が飛び交っていた。今回の件で「ソレル氏の後任は誰か?」と新たな疑問が浮かび上がる。

WPPの構造改革が急務であることは明らかだが、同社の動きは遅かった。あるロンドンのアナリストは「メディアバイイング事業で切り抜けてはいるが、その場しのぎにすぎない」と語る。

ソレル氏は一連のグループ内でのエージェンシー合併を指示してきたが、それでもまだ不十分だという意見も少なくない。今回の報道を受け、同社の株価は2%下落した。投資家はこの件を、過度に危惧してはいないようだ――それがたとえソレル氏退陣という結果につながったとしても。

常日頃から「株主に求められる限り、経営の指揮を執りたい」と語ってきたソレル氏のことだ。この騒動をうまく切り抜けたいと考えているだろう。歴史への造詣が深い同氏だが、自身がどのように歴史に名を残すか、これまで以上に熟慮することとなるだろう。

(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign UK

関連する記事

併せて読みたい

23 時間前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

1 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。

2024年4月19日

世界マーケティング短信: オープンAI、アジア初の拠点を都内に設立

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。