Shauna Lewis
2023年11月02日

マスク氏の登場から1年:Xは割安になり、今が「買い時」

広告主の多くは、マスク氏による買収に「神経を尖らせ」、ライバルのプラットフォームに目を向けたが、一部のクライアントは旧ツイッターへの投資を再開しているという。

X:2022年10月下旬にマスク氏が就任(写真:Getty Images)
X:2022年10月下旬にマスク氏が就任(写真:Getty Images)

イーロン・マスク氏が2022年10月27日にX(旧ツイッター)を買収して以来、ブランドは同プラットフォームから一斉に撤退し、その結果、残ったクライアントには安価な在庫が残された。

今年7月、マスク氏は同プラットフォームの広告収入が50%減少したと発表した

ロイターのレポートによると、底値は買収直後の2022年12月で、米国での広告収入は前年比で推定78%も減少したという。

2021年、上場企業としての最後の年次報告書によると、マスク氏の買収前、ツイッターは世界中で年間45億ドルの広告収入を得ており、デイリーアクティブユーザー(DAU)は2億人を超えていた

英国のメディアバイヤーによると、ブランドの多くは、ティックトックのプラットフォームや、レディット(Reddit)、ウィアーエイト(We Are 8)のような他のソーシャルメディアに移ったという。

Xはまた、スナップやインスタグラムといったライバルとの競争にも直面しており、メタは、今年7月に直接のライバルとなるスレッズを立ち上げている。

あるバイヤーは、マスク氏の買収の際には「緊張」が走ったものの、他のプラットフォームが、広告主が必要とする「良い機会」を提供してくれていると述べた。

エージェンシー関係者によれば、Xはブランドが離脱した影響を受け、インプレッション単価もエンゲージメント単価も下落しているという。

Xを扱うバイヤーは、広告主は「予想外に安くなった」CPMを利用できるようになった。そのため、Xを使い続けているクライアントには、かなりの「恩恵があった」はずだと述べた。

バイヤーらは、広告主の多くがXの安価な在庫を利用せず、Xでの競争が少なくなったことに「驚いている」と述べ、Xのリーチは「天文学的」であり、他のソーシャルメディアとは別格だと付け加えた。

マスク氏がこのプラットフォームを引き継ぎ、7,500人いた従業員を半数に削減したことで、ブランドの安全性に不確実性が生じることになった。ラップ社のソーシャルディレクター、ジェイミー・マークスによれば、古い認証プログラムが停止されたことで、『本物』のアカウントを見分けるのが難しくなり、こうした問題が拡大し始めたという。

イーロン・マスク氏がこのような変更を行ったことで、ブランドは、人々がそこで何を語っているのかについて意識的にならざるを得なくなった。

「覚えておくべきことは、それがツイッターの目的だということだ。つまり、人々が自分の意見を自由にオンラインで発信できることだ。残念ながら、人々がキーボード戦士になることを止めることはできないのだ」

営業部門メンバーの退社

営業チームの幹部メンバーが退社し、英国事業は大きく様変わりした。その中には、ツイッターUKのマネージング・ディレクターのダラ・ナスル氏UKのプランニング・ディレクター、デヴィッド・ウィルディング氏も含まれていた。クリストファー・ベイルズ氏など一部のシニアスタッフは残り、ベイルズ氏は2022年11月にUKのセールスディレクターに昇進した。

ベイルズ氏は、ブランド変更後の2023年7月に、代理店と広告主に宛てた書簡の中で、「広告主への重大な影響は何もない」「プラットフォームの 『ビジネスに支障は無い』」と記し、安心感を示してみせた。

ベイルズ氏は言う。「広告業界は長きにわたり、我々の大きな夢や、急速な革新を支持し、我々がポジションを築けるよう後押ししてくれた。広告業界は、今日の発表に興奮すべきであり、最大の受益者となるべきだ」

だが、マスク氏の買収以降、Xはコスト削減の影響を受け、大きな業界イベントでの知名度も低下傾向だ。例えば、同社はクライアントや代理店をもてなすため、カンヌライオンズでビーチを借り切るという、毎年恒例の伝統も取りやめている。

広告投資を再開するクライアントも

バイヤーによれば、ここ数ヶ月の間に、一部のクライアントはXを見直して、戻ってきているという。ブランドセーフティの懸念は、隣接コントロールの導入と、ダブルベリファイやIASとの提携によって緩和された。

これらの提携は、Xの新しい最高経営責任者であるリンダ・ヤッカリーノ氏が、マスク氏によって解散させられた広告幹部による「クライアント会議」を、この8月に復活させた際に決定されたものだ。

コムキャスト配下のNBCユニバーサルで広告責任者を務めていたヤカリーノ氏は、9月に開催されたヴォックスメディア(Vox Media)のCode Conferenceで、過去12週間でトップクラスの広告主の90%が戻ってきたと語った。

グロースカーブの創設者で最高経営責任者のムレンガ・アグリーは、次のように述べている。「これには、インセンティブやディスカウント施策の効果もあるだろう。しかし、多様なユーザー層や企業を惹きつけるために、サービスを多様化させようとする、マスク氏の 『万能アプリ」構想がもたらす、将来的な価値も無視できない」

だがそれでも、ヤカリーノ氏と彼女のチームは、ブランドを安心させるためにもっとやるべきことがあるはずだ。イービクイティの調査では、Xと取引のある広告主上位70社のうち、2023年9月にXに出稿したのはわずか2社だけだったと、インサイダーの記事が報じている。

あるバイヤーによると、Xは、ティックトックやインスタグラム・リールに対抗するために、今後1年以内に新しい縦型動画機能を実装し、広告を強化しようとしているという。またショッピング機能も改善するつもりらしい。

CampaignはXにコメントを求めている。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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