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2018年8月17日

世界マーケティング短信:2019年はブロックチェーンに注目

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:2019年はブロックチェーンに注目

ブロックチェーンがプログラマティックバイイングを変える

ビジネスデザインのコンサルティングを担うIBM iXでグローバルマーケティング担当エグゼクティブパートナーを務めるバブス・ランガイア氏は、「来年中にプログラマティックメディアバイイングにブロックチェーンが導入されるだろう」と米Campaignに語った。分散型プラットフォームを利用すれば、完全な透明性が実現する。マーケターはどこにいくら支払われているか、パブリッシャーはどこかといったことをはじめて明確に把握できるようになる。

「この透明性が実現すれば、これまでできなかった決断ができるようになります」とランガイア氏。「どこへの支出を抑え、どこにもっと支出すればいいかといったことを決められるようになる」。

ケロッグやキンバリー・クラーク、ファイザーといった企業は今年の第4四半期にブロックチェーンを試験的に運用、メディアバイイングを実施する予定だ。理論上では、ブランドにとって特にインハウスでのメディアバイイングが容易となる。だがランガイア氏は、それが主目的ではなく、「あくまでも透明性の実現」と話す。「ブロックチェーンが導入されても、広告代理店は広告の買い付けや配信で中心的役割を担っていくでしょう。大きな違いは、代理店が全てにおいて責任を負うようになることです」。

代理店はブロックチェーンの可能性をずっと認めようとしなかった。よって、こうしたシステムにも興味を持たないだろうという見方もある。だが同氏は「現行のシステムが期待を裏切ったのであり、新たなシステムによってクライアントだけでなくエージェンシーの業務も楽になるのです」と主張。「今の広告技術のエコシステムが良くないのは、代理店のせいではありません」。

アマゾン、引き続き広告ビジネスを強化

デジタルマーケティングメディア「ディジデイ(DIGIDAY)」によると、アマゾンはモバイル検索結果に表示する動画広告をテスト中という。この「ビデオ・イン・サーチ」フォーマットは、iPhoneかiPadでアマゾンを利用する消費者に、アマゾンストアーや個別の製品を紹介するもの。既にP&Gなどが試験的に運用しているという。広告は、アマゾンの将来を支える重要な鍵のようだ。パイパー・ジャフレイ投資銀行部門のアナリストであるマイケル・オルセン氏は、アマゾンの広告による営業利益がウェブサービスのそれを超え、2021年までに「160億米ドル(約1兆7600億円)に達する」と今週の投資家向けニュースレターで言及した。「アマゾンは、世界最大の商品検索エンジンとしての利点を活用し始めています」。

自動運転車に広告は必要か?

モビリティ・イノベーションにおけるコミュニケーションの可能性を探るため、群馬大学とのパートナーシップを発表した電通。Campaignに語った構想を簡潔に言うと、「来たる自動運転車の時代に一定のポジションを確保し、乗客に『乗る楽しみ』を提供する」こと。Campaignは、それがただ広告を提供するだけではないことを願うばかりだ。詳しい記事は、こちらから

「より敬意を払うべき」は、広告代理店だけにあらず

メディアコムのトビー・ジェナー最高執行責任者(COO)は英Campaignに、「クライアントと代理店の関係改善はピッチから始まる。それをいかに良いプロセスで進めていくかだ」と述べた。そのための策の1つとして、「クライアントは代理店にピッチの料金を払うことを考えるべき」。また、「大手メディアエージェンシーなどから妙なアイデアを提案されるくらいなら、(良いアイデアを得るために)商品引換券のようなギフトを提供するのもいいだろう」。この発言に対する代理店側の反応は賛否が入り交じる。ピッチのための時間とリソースにお金を払うという提案は好評だが、そのほとんどは起こり得ないと考える。一方でギフトを与えるという考えには、「屈辱的」と大半が反発。英国のPR業界団体「CIPR」のトップは、「代理店は施しを欲しがる小作人でも、賞を張り合う小学生でもない」とコメント。いずれにせよ大勢を占めたのは、「クライアントは代理店にもっと敬意を払うべき」との意見だった。

その一方で、「ピッチの提案で苦闘しているのは代理店だけではない」と言うのは音楽エージェンシー「マッシブミュージック(MassiveMusic)」のロンドン・オフィス代表、ティム・プレストン氏。暗に他のプロダクションのことも示唆し、「代理店のサプライヤーは皆そうなのです。わずかな予算の、誰も知らないようなコンペのため必死に戦っている。まったくお金が支払われないような企画もしょっちゅうです」。

同氏は、音楽プロデューサーは「代理店にとって単なる末端業者であり、パートナーとして見られることは稀」とも。結局、己の仕事を完遂するために必要なスタッフを過小評価することは、墓穴を掘ることだ。彼らを同等のプロフェッショナルとして扱ってこそ、より「プロフェッショナルな成果」を出せると言えよう。

WPP、一風変わった本社から移転

30年以上にわたり、ロンドン・メイフェアーの裏通りにあるミューズハウス(かつて馬小屋だった建物を改装したもの)を本社としていたWPP。その建物の賃貸期間が終わり、同社は一時的にサウスバンクのごく凡庸なオフィスに移転する。「社員のコラボレーションにより適した、よりモダンで魅力的なオフィスを見つけるまでの措置」(同社共同代表)。何にも増して、この移転は「ソレル時代」の終わりを象徴するものだ。当然の決定とも言えるが、WPPはこれまで同社の個性を培ってきた「意外性」を全てなくさないよう、注意すべきだろう。どの広告代理店の持株会社も似たり寄ったりという状況のときには、ややキャラクターの強い企業が得てして長続きするものだ。

Campaignお薦めの広告、2本

盛夏に新たに展開される広告キャンペーンは少ないが、今週我々の目に止まったものを2つご紹介する。まずは、パナソニックのマレーシアでの広告。エアコンを少しでも面白く紹介するのは難しいが、同社はそれに成功した。エアコンのフィルターに付着する埃に着目するという変わったアプローチで、それをアピールするためにまったく食欲をそそらない3つのレシピを紹介。おぞましいものにスポットライトを当てるのは常に危険を伴い、逆効果になることもあるが、少なくとも注目だけは集める。

もう1つの作品のテーマは日本とほとんど無縁だが、短編フィルムの素晴らしさを示す好例と言える。米国での銃による不慮の死への関心を高めようと作られた、ドロガ・ファイブ制作の「ファミリー・ファイヤー(Family Fire)」。内容は父と死んだ息子との対話で、強いインパクトと深い悲しみがディテイルの見事さによって増幅される。この種のキャンペーンはこうあるべき、という模範例でもある。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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