David Blecken
2018年6月11日

日本では文化的背景ゆえ、広告不正が見過ごされている

アプリ計測プラットフォームを提供するAdjustによれば、日本は不正行為を問題視する姿勢に欠けているという。

「大丈夫なはず」と問題を直視しようとしない姿勢が、広告不正の横行を助長
「大丈夫なはず」と問題を直視しようとしない姿勢が、広告不正の横行を助長

モバイル広告の不正に関するAdjustの最新レポートによれば、日本で最も一般的なアドフラウド(広告不正)はクリックインジェクションによるもの。一方、世界的に最も横行しているアドフラウドは、ユーザーの端末上でSDK(ソフトウェア開発キット)になりすまし、架空のアプリインストールを発生させる「スプーフィング」であった。

同社が今年これまでに、不正行為にあたるとして拒否したアプリインストールの中で最も多かったのはクリックインジェクションで、全体の49パーセントを占める。次いでクリックスパム(22パーセント)、SDKスプーフィング(21パーセント)、フェイクインストール(8パーセント)となっている。

一方で、世界的にはSDKスプーフィングが37パーセントを占め、次いでクリックインジェクション(27パーセント)、フェイクインストール(20パーセント)、クリックスパム(16パーセント)となっている。

日本で不正の影響を最も受けたカテゴリーはショッピング系で、ゲーム系、ユーティリティー系が後に続く。世界的には、ショッピング系、ゲーム系、トラベル系だ。Adjustの推計によれば、モバイル広告の不正によって広告主が受ける損害は、約49億米ドル(2018年)にも上る。

同社の日本の広報担当者によれば、日本でSDKスプーフィングが深刻化するのは「時間の問題にすぎない」とか。また、単一のキャンペーンでは、全インストールの最大80%がSDKスプーフィングに起因するものになっていた。これは、広告予算の80%を失う可能性があることを意味しているという。

同社の最高技術責任者(CTO)で共同創設者のポール・ミュラー氏はインタビューでこう語る。日本で不正広告の脅威に対する真剣味が今なお足りないことの背景には、「信頼の文化」や、物事が計画通りに進んでいないことを認めたがらない姿勢がある、と。

日本は「私たちが見ている中で、不正広告防止策の導入率が最も低い市場だ」とミュラー氏(同社は、モバイル広告のアドフラウド防止に取り組んでいると謳っている)。「アドフラウドに関して日本は特殊な市場。信頼の文化と、インターネットは本質的に善いものであるという根強い信仰があるためです」。同氏はまた、メディアバイイングが大幅に削られてしまいかねないという懸念から、クライアントに広告不正への注意を喚起するという強いインセンティブが、エージェンシー側に欠けていると指摘する。

Campaignは日本最大のメディアバイイングエージェンシーである電通に、この見方について意見を求めた。広報担当者からの直接的な回答は無かったが、「電通グループはアドベリフィケーションを重要な問題と認識している」とのこと。また、デジタルメディアの評価や検証を行うインテグラル・アド・サイエンス社(IAS)のサーティファイド・ビューアビリティ・パートナーであることや、プライベートマーケットプレイス(PMP)を構築している点に言及。サイバー・コミュニケーションズ、IAS、Momentum社と共に「アドベリフィケーション推進協議会」を発足したことや、米インタラクティブ広告協議会(IAB)から広告配信におけるコンプライアンスの認証を受けている点にも触れた。

ミュラー氏によれば、最も冷めた見方をしているがゆえに警戒を怠らない市場なのは、中国、ロシア、イスラエルだ。不正を働くグループの大半が、こういった国々に拠点を置いているためだ。「同じグループによる不正行為が世界中で見受けられます」。日本ではAndroid よりiOSが一般的なため、モバイル広告のアドフラウドのレベルはまだ低いものの、日本の広告主は海外の広告枠も購入しているため、この問題を認識すべきだと語る。

ミュラー氏は広告主たちに「準備を怠らないように」と呼びかける。「どんなグループがなぜ広告不正を働こうとしているかを理解することは、我々を含め、他人を手放しに信じるよりはずっとましなことです」。しかし一方で、事を荒立てないようにする姿勢にもそれなりの理由があると言う。自社のプラットフォームでの不正の横行ぶりを数字で示したユーザー獲得担当者が失職したなんてことが、現に起きているからだ。

「不正ユーザーがいれば、問題はいくらでも起こり得ます。責任者に対し、財政上の問題があるから業務の方向性を変えるべきと言えば、大きな摩擦を生むでしょう。もし現状が不正データに基づくものであり、是正する必要があると言えば、IR報告書にも影響が及び、それも問題になる……。皆、問題はごめんだと思っていますからね」

(文:デイビッド・ブレッケン 翻編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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