David Blecken
2018年4月17日

未来への「相反する」提言:新経済サミット2018

今年も東京で、日本の未来を語る新経済サミット(NEST)が開催された。マーク・ベニオフ、ジョン・ジマー、小泉進次郎など、ゲストスピーカー各氏の講演からその要旨をご紹介する。

(左から)三木谷浩史氏(楽天CEO)、YOSHIKI(X
JAPAN)、マーク・ベニオフ氏(セールスフォース・ドットコムCEO)
(左から)三木谷浩史氏(楽天CEO)、YOSHIKI(X JAPAN)、マーク・ベニオフ氏(セールスフォース・ドットコムCEO)

リフト、日本市場参入に意欲

「日本市場には是非参入したいので、その可能性を探っていく」と語った米ライドシェア大手リフト(Lyft)の共同創業者、ジョン・ジマー社長。「日本政府はタクシー業界を保護しているので、今後は規制の枠組みが他市場よりも重要なポイントになってくる」。ウーバーなど同業他社は日本で苦戦を強いられているが、リフトはタクシー会社との提携なども含めた新たなビジネスチャンスを模索する。最近では中国のディディ(Didi)もソフトバンクと協業を始め、ソニーもタクシー会社と提携して配車サービスを始めると発表した。

「グローバルな視点から、公共交通機関との連携を強めていきたい」と語ったジマー氏。「企業と地方自治体との協業が、これからは格段に増すでしょう」。リフトは自転車シェアリングサービスにも関心を示す。「車の所有に取って代わる、人の移動を容易にするサービスであれば何にでも興味があります」。

日本酒ブランド存亡の危機、要因は「ラベル」

元サッカー日本代表選手で日本酒アンバサダーとなった中田英寿氏は、「日本酒に興味を持っている外国人だけでなく、多くの日本人にとっても酒瓶のラベルが読み辛い」点を指摘。「漢字が難しすぎてブランドが認識できず、そのためにお酒をどう楽しんだらよいか分からないのです」。世界市場に照準を合わせる日本酒メーカーがなぜラベルを見直さないのか理解に苦しむが、現在中田氏はラベルの翻訳アプリの開発に取り組む。「世界中に市場を開拓したワイン業界から、日本酒メーカーはマーケティング面でたくさんのことを学べるでしょう」。

政治家には、メディアからの「外圧」とコミュニケーションスキルが必要

小泉純一郎元首相の息子で衆院議員の小泉進次郎氏は、「政治家に遠慮し過ぎている」とメディアを批判。「政治が変わるには外圧が必要です」。また、人々の政治への関心の低さは「メディアの分散化、そして基本的な事実をなかなか知り得ないことが大きな要因」と語った。意義ある対話や決断をするには、皆が共通認識を持つことが大切だ。「政界と政治家には、大衆の理解を促進する義務があるのです」と締め括った。

ブランドはスポンサーシップではなく、パートナーシップを

スポーツ事業の経営者たちは、ビジネスを伸ばすためにスポンサー企業がもっと積極的な役割を果たすことを望んでいる。スポンサーが消極的で、何に投資しているのか、何を求めているのかあまり理解していないケースはしばしば見られることだ。「コミットメントこそ、我々が最も関心を払うべき事柄の1つ」と語ったのはNBAアジアのマネージングディレクター、スコット・レヴィ氏。「ビジネスパートナーとなっても、我々の持つ資産の意味を理解していなければ成功しません。スポンサー企業には、スポーツの世界を変えるようなイノベーションを起こしたいという熱意が欲しい」。

同氏はまた、「スポンサーとして明確な目標を持ち、長い目で業績を見守ることも大切。一時的な結果を追い求めるべきではありません」とも。

ニールセンスポーツのアジア担当マネージングディレクターであるガイ・ポート氏は、「スポンサーシップによって自社にどのような利益があるかという点を、企業は見落としがちです」と指摘。「これまで最も成功を収めた企業のいくつかは、自社の従業員をターゲットにしていました」。

日本のAIの競争力はまだ脆弱

ディープラーニングソリューションに取り組むABEJA(アベジャ)の岡田陽介CEO兼CTO は、「日本でもAIへの関心はあるものの、米国や中国に比べれば投資規模はまだまだ小さい」と語った。「アリババは既に2兆5000億円相当の投資(日本市場全体の数倍規模)を行っています。エコシステム醸成のため、AIのスタートアップに一層の支援が行われることを期待したい」。同氏は言及しなかったものの、日本の大手広告代理店にとって国内AI企業への投資は間違いなく有意義だ。今後、代理店各社がこの分野にどれほど真剣に取り組むかが注目される。

「日本はイノベーションのリーダー」

セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEOは、「禅文化を持つ日本はイノベーションを学ぶのに最適の国」と語った。瞑想を日頃熱心に実践するベニオフ氏は、京都を訪ねた後に東京へ。京都の龍安寺では「ビギナーズ精神を醸成する」時間を過ごしたという。日本はセールスフォースにとって最も急成長している市場であり、同氏が日本でのビジネスにも強い関心を持っていることは言うまでもない。それにしても、2年前のアドテック東京でサン・マイクロシステムズ共同創業者であるスコット・マクネリ氏が語った内容と、ベニオフ氏のコメントは対照的だ。マクネリ氏はこの時、「日本はもうイノベーションを諦め、クールで清潔な国であり続ければよい」と語っている。

その一方、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は、「日本はもっと長期的な思考に重点を置くべき」と語った。「仕事に懸命に取り組むことは可能ですが、我々には長期的ビジョンが欠けているのです」。

ベニオフ氏はまた、「より大きなイノベーションを可能にする男女平等が日本で一層進んでほしい」とも語った。世界経済フォーラムが発表した「男女平等ランキング2017」では日本が世界144カ国中114位だったことに触れ、「世界で有数の生産性を誇る国々では男女平等が浸透しています。この会議にも、もっと女性が参加するべきなのです。我々は今、平等を重んじる世界に生きているのですから」と締めた。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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