Masahiro Nishi
2018年4月13日

アクセス解析ツールが、プライベートDMPとして機能する理由

DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入したものの、効果が出せていないならば、アクセス解析ツールを利用してみてはいかがだろうか。

西正広氏
西正広氏

プライベートDMP導入後にぶつかった壁

数年前より、プライベートDMPの導入が多くの企業で進んでいる。しかしながら、導入検討時に思い描いていた構想を実現できている企業は少ない。実現できたとしても、思ったほどの成果を挙げられず、そのまま放置していたり、ツールを解約した企業も多いのではないか。

多くの企業で活用できなかった理由は、「データの蓄積・加工」「ターゲットサイズの把握」「効果検証」の難しさにある。

DMPの導入を決めたのはよいが、そもそもツールを導入するためには自社サイトへのタグ設置が必要で、サイト規模によっては制作コストが莫大になる。DMPでやりたいことを実現するには、ツールで収集したデータを再加工する必要があり、そのためのバッチプログラムを作成する必要があるなど、スモールスタートしにくい。

どうにか導入にこぎつけ、早速活用に向けて進めてみたものの、こだわって作成したターゲットセグメントの該当者数が小さくて効果が出ない。あるいは、ターゲットセグメント作りまでで満足してしまい、その後の効果検証が疎かになっているというケースは少なからずある。これはDMPツールがセグメントを作ることに特化したツールのため、効果検証を行うには別のツールを利用しなくてはならないことが理由だ。

つまりDMPは、導入時の手間やコストが莫大な割に、分析を十分に行うことができないゆえ、実施前の計画とその後の改善活動がうまくいかず、結果として効果が出せないのである。

プライベートDMPとアクセス解析ツールの違い

ウェブサイトを運営する企業の多くはアクセス解析ツールを導入している。

Google アナリティクスやAdobe Analyticsに代表されるアクセス解析ツールは、主にサイトのPV(ページビュー)数・UU(ユニークユーザー)数や来訪デバイス、閲覧ページなどの利用状況の把握に利用されてきた。そして、そこから得られた結果をもとに施策を考え、実行し、結果を検証し、再び施策を検討・実行する、いわゆるPDCAのPlan(計画)とCheck(検証)に欠かせないツールとして重用されてきた。

実はアクセス解析ツールは、DMPツール導入時・導入後に問題となる「導入のコストが高い」「分析が不十分」という点をすべてカバーしている。アクセス解析ツールを使えば、データの収集やセグメンテーション(類型化)はお手のもので、ターゲットサイズを見定めながらセグメントを作成できるので失敗も少ない。導入後の分析も簡易だ。

とはいえ、アクセス解析ツールはあくまでデータ収集・分析ツールであるため、DMPが目指す「データの活用」に特化したものではなかった。つまり、アクセス解析ツール単体では広告やサイト内レコメンデーションツールにデータを受け渡すことに難があり、施策に活用することができなかった。

しかしこれも、グーグルやアドビなどアクセス解析ベンダによるマーケティングクラウド製品の登場により、大きく変わった。

アクセス解析ツールとマーケティングクラウドによるプライベートDMPの実現

現代のアクセス解析ツールは分析にとどまらず、その分析結果や収集したデータを各社のマーケティングクラウド製品に連携し、シームレスに施策に活かせるようになった。

アクセス解析領域における二強であるグーグルとアドビはそれぞれ「Google アナリティクス 360 スイート」「Adobe Marketing Cloud」という統合デジタルマーケティングクラウド製品をリリースしている。いずれも同社のアクセス解析製品で蓄積したデータを広告、サイト内のA/Bテスト、レコメンデーションに利用できる。また、アクセス解析で得られた分析結果をもとにターゲットセグメントを作成し、そのセグメントに対して複数のデジタルマーケティング施策を実行できる。

これはまさに、プライベートDMPで実現できることそのものだ。さらに、実行結果はアクセス解析製品にフィードバックされるので、DMPツールが苦手とする効果検証も簡易だ。

さらに、Google アナリティクス 360 については、昨年11月にマーケティングオートメーションの雄であるセールスフォース・ドットコムとの連携が発表された。これにより、メールやSMS、アプリへのプッシュ通知、LINEなどのメッセージ配信に、自社サイトの行動データを簡易に利用でき、より幅広いマーケティング施策を実行できるようになった。

アクセス解析ツールは、あなたの企業が運営するウェブサイトにもおそらく導入されていることだろう。そして、そのツールの能力を存分に活かすことで、最新鋭のマーケティング実行基盤にすることもできる。PDCAが同一のマーケティングクラウドで実現できる利便性は計り知れない。

プライベートDMPの構築を考えている方、そして、導入したのはよいが活用できていない方は、すでに自社サイトに導入されているアクセス解析ツールを利用してDMPを構築するという選択肢も視野に入れて、ご検討いただきたい。

「※ 電通デジタルは、Googleアナリティクス360スイート ならびに Adobe Marketing
Cloudの販売パートナー。」

(文:西正広 編集:田崎亮子)

西正広氏は、電通デジタル データテクノロジー部門  データマネジメント事業部 グループマネージャー。大手不動産賃貸会社でのウェブディレクション・SEO業務、インターネット専業代理店でのアクセス解析アナリスト・導入コンサルタントなどの経験がある。

提供:
Campaign Japan

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