Ryoko Tasaki
2018年7月11日

ダム愛に満ちた、焼そば特設サイト

今度はカップ焼そばが、ダムマニアと異色のコラボレート。

ダム愛に満ちた、焼そば特設サイト

思わず笑ってしまうようなキャンペーンを実施し、何かと話題になる日清食品。同社のロングセラー商品であるカップ焼そば「U.F.O.」が、ダムをテーマにしたユニークなキャンペーンを6月20日より実施している。調理の際の湯切りがダムの放流に似ていることから、蓋に装着できる「ダムプレート」を制作し、オンラインで限定販売しているのだ。

しかもこのキャンペーンは「ご好評につき第二弾!」とプレスリリースにも記されているように、初回は今年1月から公開。湯切りプレート5,000枚はすぐ完売したという。

さぞかし熱心なダムマニアによる発案だろう、あるいは「ダム好き」と「カップ焼そば好き」は親和性が高いのか…と思いきや、あくまでも「湯切り=面倒な行為」とネガティブにとらえられがちなため、これを少しでも楽しくしたい、というのが発想の原点だとか。そして特設サイトにも、ダムマニアが思わずニヤリとしてしまうような箇所が随所に見られる。

例えば、「ダムマニア」というサイトを運営していることで知られる宮島咲氏へのインタビュー記事。ダムプレート化するダム選定の舞台裏や、写真のアングルへのこだわり、さらにはダムプレートを活用した地域振興への思いなどが熱く語られている。

また、ダムの詳しい情報は、国土交通省と水資源機構がダムで配布しているコレクターズアイテム「ダムカード」を模したデザインでまとめられていたり、調理方法もダム用語を駆使して記されるなど、細部までこだわりが感じられる。

キャンペーン第一弾で発売された月山ダム(山形県)、小渋ダム(長野県)、苫田ダム(岡山県)の3種類に加え、今回は鳴子ダム(宮城県)、下久保ダム(埼玉県)、川治ダム(栃木県)のプレートを制作。これら6種類のプレートと、焼そば12個がセットになった「コンプリートセット」がオンラインで販売されていたが完売。プレートも4種類が既に完売となっている。

また、湯切り穴の活用案としては現在、蓋でお面を作ろうと促すキャンペーンも実施中だ。

Campaignの視点:
巨大建造物とのコラボレートという、その着眼点に意表を衝かれる。そしてダムマニア達はもちろんのこと、ダムに詳しくない人にも見どころや魅力が(おそらく)伝わる内容となっている。

同社の商品は歴史が長くて知名度が高く、購買層も広い。だが広くあまねくアピールするのではなく、音楽好きな人が思わずシェアしたくなるような中田ヤスタカ氏を起用したCMや、制作の現場を経験したことのある人が共感しそうな怒涛の修正指示、映画『天空の城ラピュタ』のテレビ放送に合わせたツイートのように、一部の層の心をグッと捉えるアプローチもよく見られる。それがメディアやSNSで広くシェアされ、注目されてきた。歴史あるブランドだが、常に新しい話題を提供し続けている。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

8 時間前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

1 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

2 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

2 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。