David Blecken
2017年10月17日

ADK、WPPの挑発に乗らず

ADKは、WPPとの提携にもはや意義を見出し難いとする声明を発表した。

写真:クリスティン・ウォール(Flickr)
写真:クリスティン・ウォール(Flickr)

WPPからの批判を受け、ADKはベインキャピタルによるTOB(株式公開買い付け)に合意する方針を改めて発表した。

ADKは声明の中で、WPPとの20年に及ぶ提携は当初期待した「シナジーを十分実現するに至らなかった」と繰り返し、事業環境は提携開始当初から「大きく変化」したと主張。ADK経営陣は「痛みを伴うものの必要な決断として、現在においてはその意義を見出し難くなった資本・業務提携を解消することを決定した」とする。

WPPはADK株の約25%を保有する筆頭株主。ADKは既に、デジタル優先の企業となる目標達成のためには非公開化が唯一の施策、と表明している。

WPPは先週発表した声明で、ADKはベインによるTOBに合意し、「株主の利益に反する行動をとった」と非難。「パートナーとしての責任を負うべきだ」と主張している。

これに対しADKは、「複数の財務的・戦略的パートナーの候補に打診」を行なったが、ベインが最も信頼できるという結論に至ったと反論。TOBは「極めて慎重に検討され」、交渉開始当初よりも価格は上がったとする。WPPと2位株主であるシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは、ベインの提案は「ADKの企業価値を過小評価している」と主張している。

更にADKは、日本の法律に準拠してWPPとの提携を解約できる権利があり、WPPは保有するADK株を売却する義務があると言明。ベインによるTOBは、「WPPによる提携解消や解約権への異議にかかわらず、株主の皆様全ての利益のために実行される」としている。

加えて、ADKが保有する650億円相当のWPP株は「低いROE(株主資本利益率)の原因」となっており、「不必要にWPPの株価変動及び為替変動のリスクに晒されている」と言及。株主のため、「プレミアムを付した価格」で同社の株を売却する機会を提供したいとしている。

ベインによるTOBは11月15日まで。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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