Surekha Ragavan
2022年4月07日

PRコミュニケーション、評価指標の最前線

新たな報告書によれば、露出量はもはやクライアントのPRにおける最重要指標ではなく、アクティビティベースのKPIとソーシャルデータのリアルタイム把握に移行していることが明らかとなった。

PRコミュニケーション、評価指標の最前線

リリースト(Releasd)による分析結果からは、PRの効果測定手法が大きく進化しつつあることが見て取れる。同社の報告書は、2015年から2021年の間に発表された10万件以上のPRレポート、40万件以上のKPIを分析したものだ。その結果はKPIのトレンドを浮き彫りにしており、近年のPRレポートが、AMECの統合測定フレームワーク(Integrated Evaluation Framework)で提示されたベストプラクティスに忠実であることを示している。

この報告書の要点は、以下の5つにまとめることができる。

アクティビティベースのKPIの台頭

ここでいうアクティビティとは、「コミュニケーションを醸成するためのプランと実行」と定義される。言い換えれば、ウェビナーやブログ投稿、アワードへのエントリーなど、製品が公開される前に行われる活動ということになる。2015年、アクティビティベースのKPIが含まれるPRレポートは5本に1本の割合でしかなかったが、以後は大幅に増加し、2021年には5本に4本の割合で含まれるようになった。意外ではないが、ウェビナー、バーチャルイベント、ポッドキャストに関するKPIは、パンデミックによって急激に普及し、以前よりはるかに一般化している。

アウトプットベースのKPIの行き詰まり

ここでいうアウトプットとは、「ターゲットオーディエンスに対する露出」と定義される。しかしアウトプットベースのKPIの問題点は、PRストーリーがオーディエンスに伝わったという証拠はまったく存在せず、それが意図されたオーディエンスかも分からないということだ。これらの指標は往々にして、報道に取り上げられた数の合計であったり、露出媒体の理論上の「リーチ」の総和であったりするからだ。アウトプットベースの指標を測るのは安価かつ容易ではあるが、あまり有意義なインサイトが得られないことが、アウトプットベースからアクティビティベースへとKPIの移行が進んでいる理由だろう。とはいえ、アウトプットベースのKPIは、2015年から2021年の期間を通じて相変わらず広く利用されている。この種の実際の数字がクライアントに好まれるためだろう。

AVE利用の大幅な低下

2015年には、5本に1本のレポートがAVE(広告換算値)を指標として記載していたが、この割合は2021年にはわずか6%に低下した。まだ生き延びてはいるが、風前の灯火といったところだ。興味深いことに、AVEが含まれるレポートのうち、PRエージェンシーが作成したものは34%のみで、残りの66%はブランドの社内で作成されたものだった。主要エージェンシーや協会を含むPR業界の主流は、AVEは時代遅れの測定指標であると声高に批判している。

アウトテイクベースのKPIの人気

ここでいうアウトテイクとは、「コミュニケーションに対してオーディエンスがとった行動」と定義される。したがって、このカテゴリーのKPIは、リツイート、ダウンロード、コメント、シェア数といったもので、PRコンテンツがオーディエンスと的確なつながりを築いた証拠とみなせるものだ。2015年には、1つ以上のアウトテイクベースKPIを掲載していたPRレポートは全体の87%だったが、それが2021年には94%にまで増加していた。アウトテイクを評価するためのツールや手法はより洗練され、リアルタイムのソーシャルシェアデータや感情データも迅速に収集できるようになっている。

アウトカムベース、インパクトベースのKPIは依然として測定困難

ここでいうアウトカムとは、「コミュニケーションがオーディエンスにもたらした効果」と定義され、ブランドのソーシャルコミュニケーションが、ターゲットオーディエンスに与えた影響を測定したものだ。具体的には、クオリファイドリード(特に有望な見込み顧客)獲得数、ウェビナーの参加登録数、来店者数、売り上げへの貢献度といった指標の形をとる。まさにPR測定の「聖杯」といえるが、測定が極めて困難なことでもよく知られる。

2015年と2021年のデータを比較すると、主要な違いは、中小企業が、アウトカムやインパクトの測定を容易に実施できる環境をすでに整えているということだ。大企業と異なり、中小企業は関連事業者に適切なタイミングで適切なツールを提供することに積極的だ。大企業の場合は、情報を共有することへの抵抗感、サイロ化された業務内容や社内政治、意思決定の遅さなどが足かせとなって、アウトカムベースのKPIが浸透しにくい傾向にあるようだ。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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