Ian Whittaker
2024年3月28日

「TikTok禁止」の裏で 米政界の動向を読む

全世界が注目する米国のTikTok(ティックトック)禁止法案。鍵を握るのは、やはりトランプ前大統領だ。大統領選を控え、米国政治の今後をアナリストのイアン・ウィテカー氏が予測する。

「TikTok禁止」の裏で 米政界の動向を読む

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

以前にも書いたかもしれないが(もしそうだったら、読者にお詫びする)、私は20年以上メディアとハイテクの株を扱ってきたアナリストであり、歴史学者でもある。最近では戦争史家として米国と中国の地政学的緊張と、それが及ぼす影響について研究した。

私の大きな趣味の1つは、政治を題材とする賭け(政治ベッティング)だ。勝った場合の儲けはなかなか大きく、今年はそのネタに事欠かない。こんなことを書くのも、ティックトックの米国での使用禁止が話題になっているからだ。この問題の真相は、実は別のところにあると私は考える。結局批判の矢面に立たされるのは、アマゾンとメタではなかろうか。

まず、その背景を説明する。米下院は先日、ティックトックを所有するバイトダンス社に対し、米国での事業売却を求める法案を可決した。売却しなければ、米国でのティックトックの配信は禁止される。この法案はまだ上院を通過していないが、バイデン大統領は上院で可決されれば署名すると発言した。

上院では民主・共和を問わず多くの議員がこの法案を支持すると見られ、何らかの形で通過する可能性は高い。今年が米国大統領選挙と議会選挙の年であることを考慮すれば、ティックトック禁止が政治的に支持されることは容易に想像がつく。中国はバイトダンスのティックトック売却を許可しないと言明したが。

他の懸案同様、米国では裁判所の決定も考慮しなければならない。すなわち、いずれかの段階でどこかの裁判所がティックトック禁止を阻止するシナリオも考えられる(昨年11月末、モンタナ州が成立させた『TikTok禁止法』は連邦地裁によって仮差し止めとなった)。だが最も驚くべきことは、11月の大統領選で共和党候補となるドナルド・トランプが禁止に反対を表明したことだろう。トランプは大統領在任中、バイトダンスにティックトックを売却させようとした。まさに180度の方向転換だ。

トランプの発言には、ある意味注目しなければならない。それは、今後のさらなる混乱を示唆しているからだ。トランプはこう述べた。「ティックトックには良いことも悪いこともたくさんあるが、私が気に入らないのは、ティックトックがなくなればフェイスブック(FB)が大きくなるということだ。私は、FBは他の多くのメディア同様、国民の敵だと考えている。FBを今の2倍の規模にはしたくない。FBは、私たちの国にとって非常に悪いものだと思う」

この発言を噛み砕くには、米国政治の背景も理解しなければならない。2020年の前回大統領選選でトランプと共和党が強い不満を抱いたのは(あまり指摘されないが)、マーク・ザッカーバーグ氏が民主党支持者の投票率を上げるため、慈善団体を通じて多額の現金をばらまいたこと −− いわゆる「ザックバックス(Zuckbucks)」 −− だ。これがトランプ敗北の大きな要因となった。トランプ支持者は、今回もザッカーバーグ氏が同じことをするだろうと恐れている。

FBがティックトック禁止で大きな利を得るか否か(私はFBに有利になると思うが、極めて大きな利益になるとは思わない。他の企業や分野にもお金が流れるからだ)はさておき、最も重要な点はトランプの考え方だ。それは共和党議員が禁止を支持しても変わるものではない。彼はFBに対してあからさまな敵意を持っている。とは言え、選挙がある今年、トランプは中国に厳しい態度を示さねばならない。では、彼はどうやってこの矛盾を解くのか。この点が実に興味深い。

選挙に向けたもう1つの大きな政治的争点が、フェンタニルという中国産違法薬物が米国内の死者を増やしている事実だ。米政界は「デミニマス(De Minimis、非関税基準額)」が問題の根底にあるという見方を強めている。これは800米ドル以下の物品が関税を免除される仕組みで、中国からの安価な商品を流通させる原因になっていると議員たちは主張する。そのため、この基準額をさらに低くしようというのだ。

だが、オンラインファストファッション「シーイン(Shein)」やECアプリ「ティームー(Temu)」といった中国企業が米国市場で地位を確立できたのは、このデミニマスのおかげだ。そして、そこから大きな恩恵を受けているのがFBだ。2023年、アジア太平洋地域の顧客(主に中国と思われる)からのFBの収益は前年比30%増で、FB全体の成長率の2倍を記録した。中国の広告主や販売業者の成長は、アマゾンの広告やeコマースの成長も後押しした。

もしトランプが中国に厳しい態度を示し、FBにダメージを与えたいのならば、デミニマスを標的にすることが最も効果的だろう。1つの施策で2つの目的が達成でき、「麻薬の供給を止める」と言えば3つめの目的遂行にもなる。さらには、アマゾンにもダメージを与えられる。創業者のジェフ・ベゾス氏を毛嫌いするトランプにとっては大きなメリットだ。ただし、この手の施策は一般の人々の注目を集めにくいが。

今後の情勢を見極める上で着目すべきは、ティックトックではなくデミニマス −− 私はそう考えている。

いつものごとく、このコラムは投資家向けのアドバイスではない。
 


イアン・ウィテカー氏は英コンサルティング会社リバティスカイ・アドバイザーズの創業者で、マネージングディレクターを務める。

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