Surekha Ragavan
2022年4月15日

Twitterの編集ボタンは、ブランドにとって是か非か?

Twitterの「編集」ボタンの導入意向が明らかとなった。編集ボタンの導入と、それがブランドの説明責任に与える影響について、エージェンシー各社に意見を聞いた。

ドナルド・トランプ前米大統領の2020年のツイートを閲覧するユーザー
ドナルド・トランプ前米大統領の2020年のツイートを閲覧するユーザー

4月上旬、Twitterは編集ボタンの導入準備をしていることを認めた。同プラットフォームにはこれまで存在していなかった機能だ。発表直前の4月5日、最大の出資者であるイーロン・マスク氏が、編集ボタンの是非についてTwitterでアンケートをとっていたが、これは偶然なのだろうか?そう、同社によればこれは単なる偶然だそうだ。

それはさておき、編集ボタンに関しては、Twitterコミュニティでも賛否が分かれている。この機能は、ブランドやユーザーの責任能力の低下をもたらすという意見がある一方、編集履歴の閲覧が可能ならば、ポジティブに捉えることもできるという意見もある。Campaign Asia-Pacificがリンクトイン上で実施したアンケートでは50人が投票し、そのうち78%が賛成に票を投じた。

やはり気になるのはブランドへの影響だろう。編集ボタンは、ブランドにとってどんな意味を持つのだろうか?関係者に聞いた。
 

チーム・ルイス APAC成長およびアクセラレーション担当責任者、ダニー・ウォン(Danny Wong)氏

編集ボタンについては、恥ずかしい入力ミスやリンク切れを防げるというシンプルなメリットに注目すべきです。ソーシャルメディアの管理者なら誰もが経験することで、この点については、ずっと待ち望まれていた機能です。編集可能なタイミングを投稿直後の短時間に限定すれば、ブランドには対処に柔軟性と余裕が生まれる一方で、オーディエンスが抱く懸念、つまり元の投稿の重要事実をあとから書き換えるのではないかという不信感を防ぐことができます。結局のところ、ほとんどの人は投稿直後の60秒でミスに気づくのです。共に目指す目標は一つであり、それはオンラインの発言の精度を向上することです。
 

レーダー 共同創業者、プレルナ・パント(Prerna Pant)氏

長らく現状維持を続けていたTwitterが、ようやく一歩前進してくれました。編集ボタンは、公的機関やブランドが、誤情報を修正し信頼できるコンテンツを共有することを保証する素晴らしい手段です。しかし残念ながら、「自然発生的な会話」すべてが公開記録として残る、数少ないプラットフォームであるTwitterにおいては、「不道徳」が入り込む余地を生む可能性も否定できません。ブランドは、入力ミスを編集し、キャンペーン情報を修正できます。しかしその一方で、中傷やヘイトスピーチを行う者にとっては、元の投稿の悪意を隠蔽するための手段にもなりえます。
 

DCコムズ コミュニケーションディレクター、ダンカン・クレイグ(Duncan Craig)氏

私はTwitterの編集ボタンをあまり支持していません。ジャーナリズムは歴史の証言者であるとするなら、Twitterの編集ボタンは、真実にどれほどのダメージを与えるでしょう?私たちは偽情報の氾濫する時代に生きています。過去の発言を編集できるようになったら、あなたならどうするでしょう?こうした問題は、政治団体や一般の個人にも当てはまります。マーケティングと広告の世界では、このような行動はプラットフォームの信頼性を低下させる可能性があります。ブランドが、配慮を欠く投稿や不快感を与える投稿、あるいは単に間違った投稿をした場合どうするでしょう?マーケティング担当者やソーシャルメディアの管理者は、プラットフォームの内外で批判が巻き起こった場合、単に投稿を編集すれば済むことになります。もしそうなれば、公職にある人物やトップブランドのツイートを常に監視して、編集の記録を残そうとする人がもっと増えるかもしれません。Twitterを広告チャネルとして検討しているブランドには、こう問いかけるべきかもしれません。欺瞞に対して寛容なプラットフォームに、本当に広告費をつぎ込む価値はありますか、と。
 

ウィー・コミュニケーションズ APAC技術担当責任者、サラ・ペレイラ(Sara Pereira)氏

投稿の削除によってコメントやエンゲージメントを失うことなく、スペルミスや文法ミスを修正できるので、うっかり手を滑らせがちな人にとっては嬉しい機能です。一方、Twitterはこれまでずっと、会話が自然にかつ率直に展開する、街の広場のような機能を世界中で果たしてきました。ツイートは、ブランドやユーザーの立場を示す公開された記録です。そのため、ブランドはどんなプラットフォームよりも、Twitterで自己弁護に力を入れ、自身の動機を明らかにし、その存在理由を表明する必要がありました。もしこの公開された記録を書き換えることが可能になれば、それは衰退への第一歩になりかねません。Twitterは最初に流れたタイムラインを保存したり、編集履歴を公開したりといった方法を模索し、人々がTwitterを使うそもそもの理由が損なわれないようにすべきでしょう。
 

INCA APACクライアント戦略および成長担当バイスプレジデント、アーサー・アルトゥーニアン(Arthur Altounian)氏

Twitter上でインフルエンサーとコラボレーションしている広告主は、タレント選択の原則と計画段階でのデューディリジェンスを変更すべきではありません。見えている部分の価値だけで評価するのではなく、すべてのデータポイントを参照して、そのインフルエンサーが適任であるかどうかを確認すべきです。他の多くのソーシャルプラットフォームと同様に編集機能があれば、すでに獲得したリプライやリツイートといった反応を失うことなく、ツイートの入力ミスや誤りを修正でき、確かにこれには多くの利点があります。しかし一方、編集機能が悪用され、公開されたやりとりの記録が改ざんされるリスクがあるのも事実です。そのため、Twitterはこの機能を「安全な形で」導入する方法を模索しています。具体的には、編集の透明性を確保したり、タイムスタンプや編集頻度を表示したり、あるいは時間を制限したりする、といったものです。マーケターである私たちの仕事は、キャンペーンに最適なインフルエンサーの選択を手助けするということです。コラボレーションの可能性を探る際、私たちは編集機能というパラメーターも考慮に入れています。Twitter幹部が語っているように、これが正しい形で運用されるならば、編集ボタンはブランドに差し迫った脅威をもたらすものにはならないでしょう。
 

アーキタイプ デジタルシニアコンサルタント、ビクトリア・ペレイラ(Victoria Perera)氏

ブランドの安全性の観点からみても、新たな編集機能はとても便利に思えます。ただし、ブランドがこれを利用する際には、慎重を期す必要があります。元のやりとりの文脈を操作するような編集を加えれば、批判は避けられないでしょう。今後も編集ボタンなどないつもりでTwitterを利用し、ツイートを投稿する際には、従来の品質管理プロセスを維持することを推奨します。

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Campaign; 翻訳・編集:

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