Ryoko Tasaki
2018年4月25日

多彩だからこそ強い NZラグビーチームが訴求

全ての色を混ぜると、黒になる――。デザインや印刷の現場では当たり前の基礎知識で、子どものころに習った人も多い「色の三原色」が、ダイバーシティーを象徴する。

保険大手のAIGジャパン・ホールディングスが、「オールブラックス」の愛称で親しまれるラグビーニュージーランド男子代表を起用したCMを、去年に引き続き公開した。今年のテーマは「ダイバーシティー(多様性)」で、オールブラックスに加え、同女子代表「ブラックファーンズ」も登場する。

性別・人種・体格などが多様な両チームのメンバーたちが、おなじみの黒一色のユニフォームをまとって試合会場に登場する。だが実はこのユニフォームは、布地を伸ばすと、ダイバーシティーを象徴する虹色へと変わる特別仕様。TBWA HAKUHODOの制作チームは「全ての色を混ぜると、黒になる」という色の三原色に着目し、虹色に染めた布のリブ表面部分にのみ黒色をプリントした新素材「UNITED BLACK FABRIC」を、CMのために開発した。企画はTBWA HAKUHODO、CM制作はAOI Pro.。

AIGは2012年10月より、ニュージーランドラグビー協会のグローバルスポンサーを務める。「DIVERSITY IS STRENGTH(多様性こそ強さ)」というチャリティーキャンペーンの特設サイトには、さまざまな差別と戦ってきた著名人たちのコメントを掲載。またユーザーは、ツイッターでフォローならびにリツイートすることでTシャツの抽選に参加できる。AIGは、リツイート件数に応じた金額をダイバーシティー支援団体に寄付する。

Campaignの視点:
オールブラックスとブラックファーンズは個性あふれる多様なメンバーを揃え、ワールドカップで男子は史上初の2連覇、女子も優勝5回と、その圧倒的な実力も広く知られており、「多様性こそ強さ」というメッセージに説得力を持たせている。100年以上前から親しまれてきた同チームのユニフォームの「黒」と、全ての色を混ぜると黒になるという「色の三原色」の、偶然の一致も興味深い。

CMの中で、ダイバーシティーの「敵」である差別は「手強い」相手であり、「一筋縄ではいかない」と認めている。だが、屈強な両チームの威厳に満ちた表情や、さまざまな差別と戦ってきた著名人たちの力強いメッセージからは、この社会的課題も打ち勝つことが可能なのだと勇気づけられる。シンプルなアイデアを、高い次元で昇華させた傑作。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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