Matthew Miller
2017年11月27日

お得な情報が15秒で自動消滅するYOOXのCM

今すぐクリックしないと、セルジオロッシのハイヒールがチェーンソーで真っ二つに!

買う決断を今すぐにしないと、高級なハンドバッグや靴がとんでもないことに……。イタリア発祥のオンラインショップ「ユークス(YOOX)」がユーチューブで配信する新しいプレロール広告が、買い物客の購買意欲をかきたてる。

「この広告をスキップしたらチャンスも逃げちゃう!」というキャッチフレーズの25秒の動画は「ショッパブル広告」となっており、動画から即購入できる。動画内で商品はレーザーで焼かれたり、プレス機でつぶされたり、溶岩に焼かれて灰になるなど、まわりくどくも愉快な方法で破壊されてしまう運命にある。だが視聴者が15秒以内に購入を決断してクリックすれば、難を逃れられる。

滑稽で狂騒的な広告だが、ユーザーに素早い行動を促す姿勢は本物だ。一度商品が消えてしまうと、そのユーザーは同じ広告をYOOXのサイトで見つけることも、ユーチューブ上で見ることもできないとYOOXは強調する。

悲劇的な結末の直前に映像が終了するので、高級な商品は実際には破壊されてはいないのだろう。また、視聴者がクリックしなかったとしても、次の誰かがその商品を救うチャンスを得られるのだとYOOXは説明する。

この動画広告はYOOXがグーグル、スティンクスタジオズ(英国の制作会社)と共同で制作したもので、米国、イタリア、日本、韓国で12月半ばまで配信される予定。ルーブ・ゴールドバーグ(簡単にできることを、手の込んだからくりで実行する手法で知られる米国の漫画家)を彷彿とさせるアニメーションの制作のため、スティンクスタジオズは独自のリアルタイム・クラウド・レンダリングという技術を用いて、画像と文字情報を統合した。

「Webサイトのパフォーマンスツールを、ブランドキャンペーンに応用できることを、この広告は証明しました。商品認知度向上と購買意欲促進の双方を目指し、購買ファネルの上流から下流までを統合したキャンペーンとなっています」。イタリアのグーグルでファッションと小売部門のリーダーを務めるシモーネ・ズッカ氏はこのように話す。「そして、とても素晴らしい成果を上げています」

Campaignの視点:
広告主やエージェンシーがツールを駆使して、その創造性を進化させていくのを、目の当たりにできるのは嬉しいことだ。テレビ用のCMをプレロール広告に再利用するだけのブランドは依然として多く、真に革新的なものは驚くほど希少だ。その意味で、この広告の機知に富む仕掛けは、他社の手本となるだろう。

とは言うものの、時間内に素早く反応できず、二度と同じ広告を見ることもできないユーザーにとって、逆効果を生じないかという不安もある。希少性をあおる仕掛けがどのような結果をもたらすか、興味のあるところである。

(文:マシュー・ミラー 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

10 時間前

世界マーケティング短信: GroupM、「WPPメディア」に改称へ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2 日前

データは振り返りでなく、戦略やアイデアを生み出すためのもの

あらゆるチャネルでROIを証明しなければならないという圧力が高まる中、データをキャンペーン終了時の振り返りでなく、もっと上流の開発段階に活用すべきだと、ゴリンのグローバルデータ&アナリティクス部門を率いるジョニー・ベントウッド氏は語る。

2 日前

ブランドは、「インサイト力」強化を

アドビ社の調査で、ブランドの大半が「自社は質の高いインサイトを得る能力が低い」と回答。クリエイティビティー停滞の要因にもなっていると指摘する。

2025年5月02日

ブルーライトはゲーマー共通の敵 ヴァセリン

ゲームの中では、スキン(コスチューム)をいくつも購入できる。だがどんなに腕の良いプレーヤーであっても、自身のスキン(肌)に代わるものはない