Campaign Asia-Pacific
2019年4月04日

エージェンシー・レポートカード2018:dentsu X

リーダーシップが変わるも、多くの新規事業を獲得。より強固なネットワーク構築のため、テクノロジーへの投資でインサイトや情報力の強化を図る。

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社名:dentsu X
リージョナルヘッド:フィル・エイドリアン
持株会社:電通
2017年の評価:C+
2018年の評価:C+ 

dentsu Xの自己評価:B+

「ブランド再構築から1年。混沌として情報があふれる今の時代は、クライアントを正しい方向に導くことこそ重要と考える。これまでのように、メディア露出にとどまらず価値ある消費者体験を生み出すことでクライアントをサポートしていく」

評価分析:

  1. マネジメント / リーダーシップ – C
  2. クリエイティビティー – C+
  3. イノベーション – C+
  4. 新規事業 / クライアントの保持力 – B-
  5. 人材 / ダイバーシティー – C+

2017年、Dentsu mediaの各オフィスを統合して設立されたdentsu Xは、メディア露出ではなく消費者体験に注力する企業として自らを位置付ける。その点では多くのメディアエージェンシーと差異はないが、設立2年目で確かな成長を遂げた。

同社のクライアントは今も大部分が日本企業だが、多様化しつつある。シンガポール・オフィスが勝ち取ったジャガー・ランドローバーのグローバルキャンペーンは最大の成長要因に。更にエスティーローダーやLVMHといった新規事業が売上高の大幅増を牽引した(正確な数字は非公表)。各市場を見渡すと、シンガポール、インド、インドネシアでの収益が特に好調。Dentsu mediaの時代から長年実績の高い台湾も依然堅調だ。中国ではホンダやToutiao(今日頭条)、ニコン、花王といった大手クライアントを獲得した。

「新たなサービスが、データに基づいたより深いインサイトを求めるクライアントの獲得に寄与した」とdentsu X。その代表例が、50か国40万人を対象とした消費者リサーチツール「M1」だ。昨年はこうしたサービスに積極的に投資、ほかにも消費者目線で考えるプランニングツール「Map」、オフィス横断型のプランニングを実現する専門知識の共有システム「X5」などがある。

同時に、いくつかのクライアントも失った。リーダーシップの交代で混乱が生じた豪州では連邦政府からの事業がカット。他市場でも台湾でポルシェ、韓国でDaewon(大元)、マレーシアでエアアジア、フィリピンでフィットネスファーストといったクライアントを失った。

dentsu Xは日本の電通本社が編み出したイノベーティブ・シンキングを実現したと言える。電通の海外事業を担うクリエイティブエージェンシーとしての機能以上の成果だろう。その好例が、投機的パートナーシップで新たな収入源を模索する「DX Lab」だ。フィリピンではDX Labを通じ、スタートアップや企業投資家をブランドとつなげイノベーションをサポートする取り組みを開始。広告代理店の世界では決して目新しい試みではないが、1社で全ての役割を担うのではなく、ハブになることでより幅広い提案が可能なことを示唆。フィリピンでは「スタートアップ・ワールドカップ」も主催、イノベーションへのサポートが目立つ。タイではスポーツやエンターテインメント部門を通じ、アジア太平洋地域におけるeスポーツ分野の事業拡大に取り組み始めた。

広告賞に関して特筆すべき点はないが、dentsu Xが自負するのはメディア戦略に加え、クリエイティビティーの質の高さ。その好例が、海洋環境保全の重要性をエンターテインメント仕立てで訴えかける時計ブランド「オリス(Oris)」のキャンペーンだろう。またインドでは、スポーツのカバディを通して低所得者層市場に対する誤解を解くインド投資信託協会(AMFI)のキャンペーンを展開。インドネシアではスポーツ業界とのリンクを活用し、2018年アジア競技大会に向けたポカリスエットのキャンペーンを展開した。特にインドとインドネシアでは、これらのキャンペーンがビジネス面でも大きな成果を上げた。

人材面では、アジア太平洋地域でリーダーシップが交代。約10年にわたり様々な役職をこなしたジェームス・ホーキンス氏がPHDネットワークに加わるため離職。dentsu xは幹部の在職期間が(この業界では)長いことで知られる。グローバル・チーフ・ストラテジー・オフィサーを含めた新たな幹部も任命した。同社は社員の研修にも(やはりこの業界では)比較的熱心で、将来のリーダーを育てるプログラムを実施している。だが職場環境の多様化を促す取り組みはまだ行われていない。

アジア太平洋地域では大規模なコンペに参加、既に今年はいくつかの主要ブランドの事業を獲得しており、ビジネスモデルに潜在性があることを表している。

パートナーシップ

  • クリエイティブやテクノロジスト、プロデューサー、ストラテジストなどからなるチーム「グーグル・ズー」と台湾で提携。グーグルの持つテクノロジーを最大限に生かす取り組みを行う
  • フェイスブックはファスト・フォワード・グループとのコーチングプログラムに、dentsu X幹部のジェシカ・ビートン、ケン・ケン・ゴー、ドゥアンポーン・ムジャナトンスックの3氏を指名した
  • DX Labはインドネシアやフィリピンなどの市場でスタートアップと提携、イノベーションの促進を図る

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