David Blecken
2016年9月08日

ケーススタディ:マクドナルド、パーソナライゼーションで夏の売上拡大

グーグルのクラウド技術とサードパーティーデータによって、マクドナルドの複雑なメニューが分かりやすくなった。

ケーススタディ:マクドナルド、パーソナライゼーションで夏の売上拡大

課題

マクドナルドは昨年の夏、日本で「おてごろマック」の提供を開始した。数ある選択肢の中からハンバーガー、ドリンク、サイドメニューを一つずつ選んでカスタマイズできるセットだ。比較的低い価格に統一されたこのセットは、今も引き続き提供されている。(「おてごろ」は「手の届く」と言い換えることができる。近年、日本市場でのブランド認知に苦しむマクドナルドは、プロモーションで「安い」という言葉を使わないよう注意している)

「おてごろマック」は消費者の利便性をより高めたサービスで、通常のマクドナルドのセットメニューに比べて柔軟性が高い。しかし、日本の消費者は固定メニューに慣れてしまっているようだ。特に、早く簡単に注文できることが期待されているマクドナルドのようなファストフード・チェーン店で、あまりに多くの選択肢を突きつけられては消費者が困惑するのも頷ける。ファストフード大手としては、この新サービスを潜在顧客に分かりやすくし、利用を後押しする必要があった。同社からその方策を求められたのはグーグルとTBWA\HAKUHODO。与えられた時間はわずか3週間だった。

ソリューション

グーグルジャパンでブランド・ソリューションのシニア・マネージャーを務める後藤果奈氏 は、「ブレーンストーミングを重ねた末にグーグルとTBWA\HAKUHODOの出した結論は、パーソナライゼーションでした」と言う。顧客ごとの属性、位置、時間帯といった情報をPOSデータやサードパーティーの気象情報と組み合わせ、パーソナライズしたお薦めメニューをモバイルに提供するというものだ。

全ての関連データはGoogle Cloudで処理され、位置と気象の条件から売れ筋の商品が割り出される。異なるレイヤーの情報を関連付けることで、それぞれの購買意思決定における最も重要な要素も見出せた。そして、グーグルの広告配信プラットフォーム「DoubleClick」によって、個々のユーザーの状況に応じてカスタマイズされたバナー(全25,000種類ある)が自動的に生成され、スマートフォンに表示される。

例えば、東京にいる女性にビッグマック、サラダ、コーラの組み合わせを薦める広告が届く一方、大阪にいる男性はフィレオフィッシュ、ポテト、ストロベリーシェイクを薦める広告を目にする、という具合だ。バナー広告をクリックするとクーポンが発行され、マクドナルドの店舗で使うことができる。

マクドナルドの商品群にも日本各地の夏の天気にも、それほど多くのバリエーションがある訳ではない。しかし、人工知能がさまざまなデータに基づいてシンプルながらもリアルタイムな広告制作ができることを、このバナー広告の例は示している。ここで最も重要なのは、消費者が自分との関連付けをしやすい方法でサービスを分かりやすく明示するという目的が、このバナー広告により達成できたことだ。

結果

このキャンペーンの展開により、パーソナライズしていない静的なバナーや販促クーポンで集客を図っていた前年に比べ、非常に大きな成果が得られた。後藤氏によれば、クリック率(CTR)は3倍に、クーポン利用率は150%高くなったという。その結果、マクドナルドの2015年8月の売上は、前年同月より2.8%伸びた。

グーグルはこのパーソナライゼーションのアイデアを他業界にも広めようとしており、現在、化粧品やスポーツ用品などのクライアント向けのテストが進行中だ。後藤氏はまた、ヘルスケア業界にも適用の可能性を見出している。気象情報に加え、湿度、乾燥、空気の質、花粉の量などといった要素も、加湿器や花粉症対策グッズのお薦め情報発信に役立つだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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