David Blecken
2017年6月01日

ディーゼル、日本での成功の秘訣

世界でも有数の先進性を誇る日本のファッション市場で、独自の地歩を築き上げたディーゼル。その成功の要因は、ローカリゼーションとユニークなメディア活用、そして「物議を醸す」ことにあるようだ。

加藤仁氏
加藤仁氏

トランプ米大統領が次々と打ち出す排他的政策に真っ向から異議を唱え、「MAKE LOVE NOT WALLS(壁を築くのではなく、愛を育もう)」と題したグローバルキャンペーンを展開するディーゼル。その日本向けキャンペーンでは、他市場と異なる指向とクリエイティビティーを打ち出しているのが特徴だ。同社にとって日本は最大市場で、販売店は約120を数える。だからこそ日本独自のローカリゼーションも可能となり、また必要となるのだ。同社上級副社長でマーケティングとコミュニケーションを担当する加藤仁氏に、日本市場におけるマネージメントについて話を聞いた。

日本はなぜ、ディーゼルにとって最大の市場になったと思いますか?
 
我が社は早い段階でビジネスの形態を卸売から小売に変えましたが、それが大きな出発点でした。当時はインターナショナルブランドのほとんどが日本語版のウェブサイトを設けていなかったので、我々はまずそれを実現しました。さらに、消費者向けのロイヤルティープログラムも始めました。こうした戦略が、日本での小売ビジネスを成功に導いたカギになりました。ディーゼルの世界市場におけるビジネスモデルとはまったく異なるのですが……。市場の特性に合わせてローカリゼーションを行うことは、非常に大切です。

広告費はどのくらいの規模なのでしょう? また、予算はどのように配分していますか?

広告費の約70%を従来型メディア、30%をデジタルに使っています。しかし現在の都市型ライフスタイルではデジタルが欠かせないツールとなっており、年々デジタルの比率を増やしています。それでも印刷媒体は今も日本で影響力があり、広告効果があると考えます。お金を出して雑誌を買う人たちは、そうでない人たちよりも我が社の商品を買う可能性が高いのです。印刷媒体への広告から得たリソースは、デジタルメディアにも活用しています。

ファッション広告がつまらなくなったという人もいます。人々に衝撃を与えるような広告は効果的でしょうか?

「センセーション」は、我々にとって非常に重要な要素です。ディーゼルのブランドアイデンティティーの一部でもあります。こうした広告を控えていた時期もありましたが、今シーズンは強いメッセージを打ち出しました。最近はあらゆるブランドが同じような製品を出し、同じようなことをやっているように思えるからです。特に目立つブランドもありません。ですから消費者にディーゼルがどんなブランドかを理解してもらえれば、違いを際立たせることができます。ブランドとしてのメッセージを発信することが重要なのです。

それは政治的になるということですか? 多くのブランド、特に日本のブランドは政治に関わることを避けています。

可能ならば、政治性は避けたいと考えています。しかしディーゼルはグローバルブランドなので、いつも日本だけ違うことができるとは限りません。(政治性を帯びることに)リスクがないわけではありませんが、消費者の声がある限り、どのブランドも常にリスクを抱えています。繰り返しになりますが、ブランドが意思表示をし、それを消費者に届けることが大切です。そうしなければ、ディーゼルを選んでもらえないでしょうから。

昨今、「ブランドの安全性」の確保に躍起になっている企業が多いですが、米国のポルノ動画配信サイト「Pornhub」にディーゼルが広告を出したことは成功だったようです。物議を醸すようなコンテンツに広告を掲載することを、どう考えますか?

何事においても、先駆者であることは効果をもたらすのではないでしょうか。日本でも、「Tinder」「9monsters」といったゲイコミュニティーのアプリに広告を出しました。このようなアプリに広告を出したブランドはなかったので、たくさんのフィードバックがありました(「9monsters」でのクリックスルー率は当初予想の4倍になった)。もちろんこの戦略は、ブランドスローガンである「Only the brave」(勇気ある者のみ、の意)にも関連しています。ディーゼルは、「let’s do this」と言って人々に行動を喚起するブランドです。最も大きなフィードバックが返ってくるのは、最初に行動を起こした時です。既成概念を破るような行為だからこそ、人々は敬意を払ってくれるのでしょう。

LGBTコミュニティーに直接働きかけるマーケティングが日本では遅れています。今後、この種のマーケティングはどのような方向に進んで行くと思いますか?

これからはより拡大していくでしょう。「東京レインボープライド」には資生堂やパナソニックなど、ますます多くの企業が参加するようになり、その規模は年々大きくなっています。我が社はまだ参加して間もないですが、「MAKE LOVE NOT WALLS」のキャンペーンはLGBTだけに焦点を当てたものではなく、より大きな多様性を受け入れようと訴えるものです。レインボープライドとは深い関係性があるのでイベントに参加しましたが、より重要なのはあらゆる多様性に着目しなければならない、ということでしょう。

クリエイティブの仕事を社内で処理するブランドが増えています。この傾向は今後強まるでしょうか?

あらゆる企業がそうなっていくと思いますが、それもケースバイケースでしょう。我々の最近のキャンペーンは一般向けの大規模キャンペーンと捉えているので、やはりクリエイティブエージェンシーの力が必要です。しかしオウンドメディアで顧客とコミュニケーションをとるような小規模キャンペーンならば、社内でクリエイティブを処理していきます。

(文:デイビッド・ブレッケン 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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