David Blecken
2016年11月02日

「働きやすくない」企業となった電通、過労死撲滅に向け対策本部を設置

女性新入社員の過労自殺が労災認定を受け、労働環境の不備を法的に指摘された電通。この1日には、国が子育て支援に熱心と認めた企業に対し与える「くるみん」マークの認定を返上した(2007年に認定)。同社はさらに、過重労働防止を徹底するための新たな対策本部の発足も発表した。

電通本社(東京都港区)
電通本社(東京都港区)

この「電通労働環境改革本部」は、石井直代表取締役社長執行役員が本部長として陣頭指揮を執り、副社長のほか人事、経営計画、営業、メディア、ソリューションなど各部門を統括する執行役員8名で構成される。

電通はニュースリリースの中で、「過重労働問題の再発防止に向け、事業計画や組織、人事制度、業務フローなどの抜本的な見直しも含めた包括的な改革案を策定するとともに、各種の具体的な施策を実行する」としている。

また、労務問題の検証と法令遵守体制の改善を行うため、これまで電通の人事労務問題に関与したことのない法律事務所による外部視点での調査も行っているという。同社はつい最近、月間所定外労働時間の上限を小幅ながら引き下げ、夜10時以降の業務原則禁止と全館消灯に着手している。

さらに、若手社員および中間管理職の意見を労働環境の改革に反映させるべく、4つの「社内各階層からの改革案提言チーム」の組成を進め、包括的な改革案の策定に向けて複数の外部有識者からの意見も聴取するという。まさにこれこそ、長年求められていた対応だろう。

同社広報部長の河南(かんなん)周作氏は、自殺した高橋まつりさんが所属していた部署の管理職の処遇については、いまだ当局の調査が進行中なのでコメントできないとしている。一方で、電通は関係当局の調査に全面的に協力しており、「執行役員および社員を対象にした責任の明確化・社内処分等については、当局調査の進捗を踏まえ、過重労働問題に係る事実関係などが明確になった段階で、厳正に行い、別途公表する予定」だという。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)

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