Robert Sawatzky
2021年9月16日

日本のトップブランド:上位陣、コロナ禍でも安泰

【アジアのトップ1000ブランド】日本ではトヨタが4年連続で首位の座を堅持し、トップ5は昨年と変わらず。一方、楽天や三菱、日産が大きく順位を上げた。

日本のトップブランド:上位陣、コロナ禍でも安泰

コロナ禍で大きく変化した日常生活。だが、日本の消費者が支持するブランドに変化はなかった。Campaignは「アジアのトップ1000ブランド」の調査で、4年前から回答者に自国のトップブランドについて尋ねている。日本でずっと首位を守ってきたのはトヨタだ。

回答者への質問は以下の通り。「日本で最も影響力のある国内ブランドを挙げてください。これは日本にルーツがあり、消費者から最も高い評価を受け、共感を得ているブランドを意味します」

今年日本の消費者が選んだブランドのトップ5 −− トヨタ、ソニー、ユニクロ、パナソニック、任天堂 −− は、顔ぶれも順位も昨年と同じだった。これらブランドはもちろん海外でもよく知られており、「国際的な知名度が国内にも反映された」とエッセンス社日本事業統括責任者の村上公太氏はいう。

「品質とテクノロジーの進化に根差した日本の安心・安全というイメージは、これまで国内外で成功を収めてきた。世界に飛躍した国内ブランドのサクセスストーリーに、日本人は誇りを抱いています。それを長年にわたって具現化してきたのがトヨタです」

今夏の東京五輪は、日本のテクノロジーが世界に向けて大きく輝く機会となるはずだった。だが、トヨタやパナソニックといった主要スポンサーは地域社会への貢献に注力、結果的に消費者からの敬意を獲得した。

「日本の消費者はトヨタとパナソニックに対し、日本の品質を象徴するナショナルブランド、というイメージを持っている。両社ともイノベーティブで、実直かつ真摯に仕事をこなし、常に国のためになる取り組みを行っています」と話すのはグレイワールドワイド代表取締役兼CEOの落合由紀子氏。「他の主要企業よりずっと早く、両社は持続可能な開発目標を優先課題に掲げた。そして様々なプラットフォームを通じ、その進捗を消費者に伝えるコミュニケーションに取り組んできた。いずれも高度なテクノロジーを礎にした企業であり、環境に及ぼす影響やインパクトは目に見えて大きいものがありますから」

重要なのは、トヨタもパナソニックも日本の社会変革の象徴とみなされている点だ。トヨタは静岡県裾野市に建設している未来都市「ウーブン・シティ(Woven City)」や、自動運転車の生産拡大などでその役割を積極的に担っていると村上氏はいう。「以前の競争相手だったスズキと資本提携をして先見性を示しただけでなく、メディア戦略にも長けている。『トヨタイムズ』のようなオウンドメディアとペイドメディアを使い分け、消費者とのコミュニケーションをうまく図っています」

躍進したブランド

日本のデジタル化とeコマースの普及につれ、今年オンラインのリテールブランドが飛躍を遂げたことは驚きに値しない。日本の企業ではないにもかかわらず、トップ20内で最も順位を上げたブランドはアマゾン。その絶対的ライバルで、eコマースではアマゾンを凌ぐ勢いをみせる楽天は昨年より10ポイント上昇し、6位になった。

楽天の躍進を観測筋は「コロナ効果」とみるが、多様化した同社の事業が今では日本人の生活の様々な面に密接に関わっていることは否定できない。中核事業であるeコマースに加え、昨年はモバイルネットワークとしてのサービスを開始、「第4のキャリア」としての地位を確立した。さらにスマートフォン決済やクレジットカード、オンラインバンキングといった金融商品、楽天ポイントによるロイヤルティプログラムの成長などが「リテールデジタルエコシステムの構築に寄与している」と村上氏。

電通のチーフブランディングディレクターである緒方玲子氏は、同社が新型コロナウイルスのワクチンの職域接種を地域住民にも開放した事例を挙げ、「CSR(企業の社会的責任)活動もステップアップさせている」と指摘する。(下の動画は、6月17日に楽天本社で行われたワクチン職域接種の模様)

今年大きく躍進したブランドは、三菱と日産だ。三菱は昨年の54位から47ポイント順位を上げ、7位に。日産は111位から97ポイントも上昇し、14位となった。

三菱躍進の背景は、コロナ禍で家電製品ブランドとしての名声が復活したことだろう。消費者にとっては三菱電機と、リコール隠しなど醜聞が続いた三菱自動車との選別が難しくなったのではないだろうか。

日産のブランドイメージも回復途上にある。カルロス・ゴーン元会長の不正疑惑は過去のものとなりつつあり、「未来の自動車メーカー」として斬新なキャンペーンを展開。人気の高い「リーフ」を始めとするEV車やその技術で、環境に優しいメーカーの一番手としてリポジショニングを図る。

同社がブランドアンバサダーに人気の高いセレブリティを起用したことも、マイナスにはならなかった。テニスの大坂なおみ選手に加え、昨夏には人気俳優の木村拓哉を登用。彼はそれまで8年にわたり、ライバルであるトヨタのアンバサダーを務めていた。

リテールブランドに変化

昨年のランキングではリテールブランドの再興が目立ったが、今年はコロナ禍の影響でオフラインストアにとって厳しい結果となった。ユニクロは3位を守ったが、今年初めにシステム障害を起こした無印良品は順位を5ポイント下げ、トップ10圏外の11位に。昨年14位だったイオンも12ポイント下げ、26位となった。

「オンライン上の選択肢は非常に多いので、消費者との摩擦を最小化することがリテーラーにとって極めて重要です。消費者にとって、製品とサービスを提供してくれるリテーラーは無数にいる。ロイヤルティの高い顧客や熱烈なファン以外にアピールするのなら、デジタル変革に着手することは不可欠です」(村上氏)

衣料品チェーンのしまむらは、昨年10月に初めてオンラインストアを開設。にもかかわらず、今年は順位を28ポイント上げて24位となった。一流の老舗デパートや大手総合小売イオンなどを大きく上回ったことは注目に値する。

(文:ロバート・サワツキー 翻訳・編集:水野龍哉)

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