Alex Hesz
2017年10月12日

私たちは皆、コンサルタントである

はっきり言って、広告代理店はクリエイティブ業界の一端を担っている訳ではない。コンサルティング会社が広告業界に進出し、広告代理店はクリエイティブを装うのをやめるべき時を迎えている。ロンドンを拠点とするオムニコム・グループ傘下エージェンシーの、チーフ・ストラテジー・オフィサーが語る。

私たちは皆、コンサルタントである

少し前にツイッター上で、ある円グラフが出回った。

英国が誇るべき経済成長の希望の光として、円グラフの一部がハイライトされ、英国の「クリエイティブ業界」の成功を称えたものだ。私たちが日々打ち込んでいる広告の仕事がいかに繁栄しているかの証として、著名な広告代理店のリーダー層を含む多くの業界関係者が、このツイートを拡散した。

このツイートを広めた広告代理店のリーダーたちは、どうやら少々誤解をしているようだ。広告代理店のチーフ・エグゼクティブであれ、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであれ、クリエイティブであれ、誰一人として「クリエイティブ業界」で働いている訳ではない。私たちの仕事は、その円グラフ上の表記でいうところの「企業向けサービス」の提供である。

現実を受け入れよう。「企業向けサービス」だ。

広告代理店は、広告業務を自ら行うには十分な専門性やリソースを持たない企業のために、時間と人材を投入し、その成果を提供することで対価を得ている。この観点で言えば、弁護士や経営コンサルタントと大差ない。

とはいえ、広告代理店と経営コンサルティング会社の役割には、非常に大きな違いがある。この二つの業態で働く人が体験することもしかり、この二つの業態と協業するときの要領もしかりで、ブリーフや成果物の性質、案件の期間や種類などには、本質的な違いがある。決して表面的な違いにとどまらない。

はっきりさせておこう。広告代理店も経営コンサルティング会社も、成果物はアイデアだ。広告代理店がクライアントに提供する価値の源泉は、客観性、変化を見通す力、差異化された手腕、優れた人材を他社よりも多く確保することにある。この点では、経営コンサルティング会社も同様だ。広告代理店が競合に勝つための方法は、突き詰めれば、いかにクリエイティブなアイデアを出し、具現化し、そして、そのアイデアが効果的であることを証明できるかにかかっている。言うまでもなく、これは経営コンサルティング会社にも当てはまる。

魔法も奇跡も存在しない。素晴らしいアイデアを持ち、アイデアを具現化して大きな効果を生み出す、優れた人材で構成されたチームがあるか次第だ。

ここで言葉の謎かけをやめて、本質に迫ってみたいと思う。私たち広告代理店は、現存する「企業向けサービス」業としては最もクリエイティブで、エキサイティングで、野心的といえる。しかし、J・K・ローリング(小説家)やロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(劇団)と肩を並べるうちに、どうもそのことを失念し、自分たちも「クリエイティブ業界」の一部であるかのような錯覚に陥ってしまう。そして、しばしばクライアントから苦言を呈される(その苦言は十中八九、的を射ている)。ありがちな間違いを列挙しよう。商品やサービスが社会に広く知られるための広告が求められているのであって、同業者や批評家の間で話題に上るだけでは不十分なのに、その認識が欠けているケース。売上や認知度が本当に向上したかを検証しなければ、広告が成功したかどうかは分からないはずなのに、そのことを忘れているケース。完璧さよりも今まさに効果的であることが肝心なのに、時機を逸してしまうケース。ゴールは常に文化に影響を与えることなのに、実質的な結果を出すことを追いかけるケース。

皮肉なものだが、「経営コンサルティング会社の台頭」は、私たち広告代理店が自ら招いた事態だ。私たちこそがコンサルタントなのであり、広告代理店の仕事は昔からコンサルティングであったにも関わらず、そのことを認めようとしなかったことに起因する。例えば、アクセンチュアが10億米ドルものM&A資金を用意したという最近のニュースは、私たち広告代理店が見過ごしてきた価値に、異業種のプレーヤーが目を付けたということを物語っている。まるで、誰かが自宅にやってきて、到着するなり、今まで自分が思っていた2倍の値段で家を買い取ることを申し出てきたようなものだ。もちろん非常に魅力的な話ではあるが、外からやってきたその人物は、自分の知らない何を知っているというのだろうか?

私たちは今、岐路に立たされている。広告代理店は、他の「企業向けサービス」ではまず成し得ない方法で、クライアントの成否に明確かつ急速に影響をもたらすことができる。iPhoneが登場して10年、目覚ましい勢いで広告の手段が増え、幅広い成果物を提供できるようになったが、広告代理店は致命的な観点で流れに乗り遅れている。クライアントのために広告代理店ができるのは優れた広告を作ることだと、いまだに思い込んでいるのだ。

しかし優れた広告は、広告代理店が最高の仕事をしたときに提供できる価値の、ほんの一部分に過ぎない。このことは、これまで数々の事例が証明している。私たちは人々をより深く理解している。私たちは人の心に訴え、感動、やる気、興奮、注意などを引き出す術を知っている。思い入れを作る方法も、崩壊させる方法も心得ている。大きなものを小さく、小さなものを大きく感じさせることもできる。そして、私たち広告代理店の仕事には「クリエイティブ業界」と同様に、文化を変える力がある。唯一の違いは、評価が全てクライアントに帰属するよう、黒子として立ち回る点だ。これは表に出ることよりも、大いに難しい。

真偽のほどは疑わしいのだが、マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、いかなる提案も、クライアントに2つのことを認識してもらうことを目的にしているという。まず、提案を受けて「まずい状況だ」と気付かせること。そして、「マッキンゼーがいてくれて良かった」と思ってもらうことだそうだ。経営コンサルティング会社は、当然、広告業界に進出してくる。彼らから見れば、広告代理店は、自分たちが何を売っているのかを理解していない従兄弟のようなものだ。私たちは広告を売っているのではなく、インパクトを売っている。経営コンサルティング会社は、私たち広告代理店よりも先にそのことに気付き、大いに価値を見出したのだ。

しかし、まだ手遅れではない。私たち広告代理店が、これまでの在り方や今の姿を自認しさえすれば、経営コンサルティング会社はそれほどの脅威ではない。これまで長きにわたってクライアントが求め続けてきたものを提供しよう。自ら成果主義を重視し、推奨しよう。アーティストぶるのをやめ、広告代理店の真価を示そう。経済のあらゆる場面でビジネスや人々の行動に変化をもたらすことのできる、最もパワフルで、エネルギーに溢れ、クリエイティブな影響力を持った存在。これこそが広告代理店なのだ。

アレックス・ヘス氏は、アダム&イブDDBのチーフ・ストラテジー・オフィサー。

(翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign UK

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