Paul Sigaloff
2022年8月04日

アドバンストTVでマーケターが成功するには

ATV(アドバンスドTV)がAPAC(アジア太平洋地域)で爆発的な成長を続けている。ATV広告を成功へと導きたければ、マーケターはその3つの特徴に注目すべきだろう。

アドバンストTVでマーケターが成功するには

APACはストリーミングブームの真っ只中にあり、OTTコンテンツの台頭によるデジタル視聴行動のシフトが予想以上に早く起きている。IAB SEA+Indiaによると、東南アジアではCTV(コネクテッドTV)がこの分野における新星になりつつあり、ベトナム、シンガポール、フィリピンなどの市場では、スマートTVを所有する人が、すでに無視できない規模に達しているという。

マーケターにとって、CTV、アドレサブルTV、OTT、広告付きオンデマンド動画(AVOD)を含むATVの広告は、可能性に満ちている。当初、成功していたサブスクリプションモデルは徐々に失速し、AVODへの道が開かれた。インフレに見舞われた消費者が価格重視の姿勢となり、ネットフリックスをはじめとするストリーミング大手も広告付きプランの検討を余儀なくされているからだ。こうした変化の行き着く先には、精度の高い効果的なターゲティングや効率的かつ柔軟なバイイング、リアルタイムのレポート、最適化や効果測定など、可能性に満ちたATVプログラマティックの世界が待ち受けている。そしてマーケターは、この活気あるメディア環境を模索する際、ATVの成長を決定づける、次の3つの特徴に注目する必要がある。

オムニチャネルの汎用性

APACの消費者は、デジタル化されたライフスタイルにすっかりなじんでおり、日常のさまざまな状況に応じ、複数の画面を使い分けている。広告主は、適切なときに適切な画面で消費者とつながるため、相互連携されたオムニチャネルアプローチを必要としている。例えばある消費者が、テレビでお気に入りコンテンツをストリーミング中にピザの広告を見たとしよう。すると、その人はスマートフォンの広告で割引コードを入手し、そのコードを使ってピザを注文し、さらに数時間後にはノートパソコンでメールをチェックして、ブランドのロイヤルティプログラムに登録しているかもしれない。これが日常に溶け込む「つながった消費者体験」の典型だ。

QRコードのような戦術は、大画面のスマートTVと小さな画面のデバイスを連携させることができる。消費者はテレビでコンテンツを視聴しながら、スマートフォンでコードをスキャンし、その場でアクションを起こせる。画面やチャネルを横断する流動的で統合された体験には、関連するオーディエンスをターゲティングし、リーチするための適切な能力を持つDSPを活用することが鍵となる。ATV広告は、ファネル上部の認知目標を達成するために有効であり、連携する他のチャネルで、検討、意思、購入、ロイヤルティ促進などを補完できるため、オムニチャネル計画に最適だ。

コンテクストを重視したCookieレスなアプローチで消費者とつながる

ATVは、視聴者を特定しリーチできる、Cookieレスチャネルのひとつとして繁栄するだろう。コンテクストに沿った体験をレベルアップすることで、マーケターはATV環境でオーディエンスとのつながりを深めることができる。高度なコンテクスチュアルターゲティングツールはコンテンツにとどまらず、リアルタイムのシグナルも活用する。リアルタイムのシグナルには年齢、性別、世帯収入などのデモグラフィックデータや気象データなどが含まれる。広告主は気温や時間帯によってメッセージを変えながら、モバイルなどのデバイスでリターゲティングを行うことで、消費者をセールスファネルに誘導し、ループを完結することができる。

広告主は、オーディエンスのデジタル活動から得られる特徴的なデータシグナルに基づき、メッセージやキャンペーンそのものを調整することができる。ATVにおいては、「視聴頻度」「番組の嗜好」「主な視聴デバイス」といったシグナルが想定される。コンテクストを考える上で、視聴者が使用しているデバイスを考慮することは重要だ。例えば、あるユーザーがゲーム機を用いてテレビ画面上でコンテンツをストリーミングしている場合、ゲーミフィケーションや直接購入など、よりクリエイティブでインタラクティブな手段が利用可能になる。ATV広告をより効果的なものにするには、コンテクストに即した方法で視聴者にリーチすることが重要だ。

デジタル体験が行動を促し、画面に命を吹き込む

調査によると、CTV視聴者の71%が、テレビを見ながら、モバイルデバイスで関連コンテンツを調べているという。セカンドスクリーンは、広告を見た視聴者の行動を喚起する傾向が高いことで知られている。インタラクティブ広告は、ターゲティングを重ねることで、商品の詳細情報や価格情報を調べ、体験の機会を求めている、最も行動を起こしそうな視聴者にリーチできる。「ディスカバリー・チャンネル」の運営元は2021年9月、サメのコンテンツに特化した「シャーク・ウィーク」を開催した。その中で、視聴者を驚かせるため、CTVのQRコードをモバイルカメラでスキャンすると、拡張現実(AR)のサメが飛び出してくる仕掛けを用意した。このような、ユーザーがモバイルデバイスに期待している没入型のエンゲージメントや次世代のデジタル体験を、広告主は、ATVの次世代機能によってテレビ画面でも実現できるようになるだろう。

メタバースは、デジタルショッピングの次の波とともに、ATV広告のエキサイティングな可能性も示している。没入型インタラクションに楽しさを加える共視聴体験が、ATV広告でも可能になるからだ。例えば、仮想現実(VR)で宝探しのチーム戦を開催し、リワードとして大幅値引きのクーポンを用意するという案はどうだろう?広告主やパブリッシャーは、受動的視聴とインタラクティブな視聴の両方で顧客体験を拡張するために、VR、AR、3Dコンテンツなどのテクノロジーを活用することを考えておくべきだろう。

APACで台頭するATVの広告市場で勝利を手にするのは、大画面のメリットやパフォーマンスを高める連携機能、インタラクティブな拡張機能などを活用し、これらを広範なデジタルおよびオムニチャネルのマーケティング戦略に統合できた企業だろう。あらゆる指標から、ATVの画面はより大きく、よりエキサイティングになると予想されている。参入するなら、今だろう。


ポール・シガロフ氏は、ヤフーのバイスプレジデント兼APAC責任者。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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