Tatsuya Mizuno
2021年1月28日

「コロナ禍の新しい生活に満足」は2割弱:最新消費者調査

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが効かない中、メディアブランズ(インターパブリック・グループ)と博報堂生活研究所が相次いでコロナ禍の消費者意識調査の結果を発表した。

緊急事態宣言が出され、閑散とする東京・新宿(写真:Shutterstock)
緊急事態宣言が出され、閑散とする東京・新宿(写真:Shutterstock)

メディアブランズの調査は昨年11月27〜30日にかけて、関東・関西在住の15〜74歳のインターネットユーザー2400名を対象に行われた。2005年から毎年行われている消費者の「デジタルメディアの利用実態・意識」を明らかにする調査の一環。

その結果、コロナ禍で変化した新しい生活に「満足している」と答えた人は2割に満たず、17%。総じて中高年層より若年層の方が満足度が高く、特に20代女性は30%という高さだった。加えて、「自由な時間が増えた」と感じている人は25%で、やはり若年層に多いことがわかった。

「コロナ禍で変化した新しい生活が気に入っている」と答えた人の割合(非常によく当てはまる、やや当てはまるの合計値)
 
「コロナ禍で自由時間が増えた」と答えた人の割合(非常によく当てはまる、やや当てはまるの合計値)


また、自由時間が増えたと感じる人ほど新しい生活への満足度が高い傾向も見られた。


自由時間が増えたと感じる人にその使い方を尋ねると、最も多かったのは「テレビ視聴」(41%)。次いで「動画配信サービス視聴」(39%)、「読書」(25%)、「勉強・スキルアップ」「睡眠」(共に23%)と続いた。ただし年代別で見ると30代以下で最も高かったのは「動画配信サービス視聴」。男性では50%以上、女性でも15〜19歳は72%という高い数値だった。40代以上の男性では「テレビ視聴」がトップ。また、30〜60代の女性では「料理」「睡眠」「読書」などメディアを伴わない生活行動に時間を費やす傾向が見られた。


コロナ禍で増えた自由時間の利用法様々なデジタルシフトが徐々に生活に定着しつつあることもわかった。前回の緊急事態宣言(昨年4月)前と解除後とを比較し、「デジタルメディアを介した行動で増えたもの」を尋ねると、「映画鑑賞及び動画視聴」を挙げた人が15%弱。他には「キャッシュレス決済」(10%強)、「食品のオンライン購入」「オンラインの出前サービス」(5%前後)などが挙げられた。不要の接触や外出を避ける行動が若干増えたことになる。

また、リモートワークに関しては週に1日以上実施している人が24%。それらの人の3割強が「新しい生活に満足している」(『まあまあ満足している』も含めて)と答えた。

リモートワーク実施頻度
 
「新しい生活が気に入っている」 と答えた人(非常によく当てはまる、やや当てはまるの合計値)


生活の自由度は「56.3点」

博報堂のシンクタンクである博報堂生活研究所の調査は、今年1月4〜6日にかけて首都圏・名古屋圏・阪神圏在住の20〜69歳の男女1500名を対象に行われた。昨年4月から毎月実施している「新型コロナウイルスに関する生活者調査」の一環で、今回は政府のGo Toキャンペーン事業の一時停止、首都圏における緊急事態宣言発出の直前という状況下だった。

まず、コロナ禍以前の状態を100点として「現在の生活自由度は何点になるか」という問いに対し、出た答えは「56.3点」。前回12月からは2.6ポイント減で、2カ月連続の減少だった。年代別に見るとすべての層で減っており、特に40代が5.7ポイントという最も大きな減少だった。

感染拡大に伴って「どのようなことに不安を感じるか」という問いに対しては、前月に続きほぼすべての項目で増加。結果は以下の通り。

  • 経済の停滞       82.9%(前月比3.0ポイント増)
  • 行政の対応       81.3%(同5.7ポイント増)
  • 自分や家族の健康    74.0%(同3.3ポイント増)
  • 海外の情勢       72.4%(同2.7ポイント増)
  • 情報の不足や不確かさ  72.3%(同5.2ポイント増)
  • 自分や家族の仕事・収入 62.3%(同0.1ポイント減)
  • 人付き合いの変化    47.8%(同3.1ポイント増)

増加が目立つのは「行政の対応」と「情報の不足や確かさ」への不安。男女別に見るとすべての項目で女性の比率が男性を上回り、男女差が最も大きいのは「行政の対応」で女性85.9%、男性76.7%と9.2ポイントの差がついた。

「行動抑制度」も全項目で増加。「どのような行動を控えているか」という問いに対する結果は以下の通り。

  • 旅行・レジャー           86.7%(前月比5.6ポイント増)
  • 不要不急の外出           83.4%(同4.0ポイント増)
  • 握手やハグなど、人とのボディタッチ 82.4%(同3.5ポイント増)
  • 交友・交際             82.1%(同4.8ポイント増)
  • 体験型エンターテインメント     81.3%(同3.9ポイント増)
    (ライブ・観劇・映画鑑賞等)
  • 不要不急の買い物          76.6%(同5.1ポイント増)
  • 外食                75.7%(同4.6ポイント増)

目立った増加は「旅行・レジャー」と「不要不急の買い物」。やはり全項目で女性の抑制度が男性を上回り、年代別でも高年層の方が抑制度が高い。例えば「不要不急の外出」を控えているのは20代が71.4%であるのに対し、60代が92.1%。「不要不急の買い物」は20代63.1%、60代83.2%でそれぞれ20ポイント以上の差がついた。

「行動変化度」では、家の中での過ごし方に関連する項目が増加傾向。以下、前月比でポイントの増加が大きかった項目を順に列挙する。

  • 外出を控え、家の中でできる娯楽を楽しんでいる 73.8%(前月比7.3ポイント増)
  • 外出を控え、インターネット通販や出前を利用  47.4%(同2.7ポイント増)
  • 家にいる時間が増えたので、動画や音楽などの  46.8%(同2.5ポイント増)
  • 家にいる時間が増えたので、なるべく自分で   56.3%(同2.2ポイント増)
  • 家にいる時間が増えたので、スマートフォンや  49.0%(同2.2ポイント増)
  • 家にいる時間が増えたので、SNSの閲覧・    39.7%(同2.1ポイント増)

全体で比率が高かった項目は「マスク着用や手洗いなど、感染対策を徹底している」(93.1%、前月比0.8ポイント増)、「十分な運動・栄養・睡眠をとるようにしている」(77.4%、同0.9%増)、「外出を控え、家の中でできる娯楽を楽しんでいる」(73.8%、同7.3%増)など。健康を留意する項目が依然として上位に挙げられた。

年代別で大きな差が出たのはインターネット利用に関する項目。特に「SNSの閲覧・投稿」は20代が66.0%だったのに対し、60代は25.4%と40ポイント以上の差がついた。また「収入が減った、もしくは減りそうなので、副業を始めた / 検討している」(全体の29.1%)も20代が42.7%、60代が15.4%と37.3ポイントの差だった。

(文:水野龍哉)

提供:
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