Lauren Nicholas
2023年3月23日

TikTokはもはやZ世代だけのものではない

多くのマーケターがTikTokを敬遠するのは、それをZ世代向けのプラットフォームだと考えるからだ。だがそれは、TikTokにあまり接していないために生じた誤解なのかもしれない。

TikTokはもはやZ世代だけのものではない

赤ちゃん主導の離乳食、モンテッソーリ教育、ジェントルペアレンティング、コンテナタイム、Ms. Rachel、睡眠訓練、睡眠退行、妊娠第4期、乳児用寝袋、スクランチーマム、デフォルトペアレント、#ProofOfMom(ママの証明)。

あなたが育児中の親でなければ、これらの言葉やフレーズには何の意味もないだろう。私は、ソーシャルメディアマーケティングのキャリアを歩んでおり、ミームやトレンド、社会評論、ポップカルチャーのフィードを生成してくれる、細かく調整されたアルゴリズムを持っている。カスタマイズされたフィードによって、トレンドの上昇もいち早く把握することができる。このアルゴリズムは、私の大きな力となり、最新のニュースやトレンド、ジョークを探し回る余裕がない人たちのために、インターネット上の最高の話題を提供することをテーマとしたニュースレターも発行している(未登録の人はInternet Brunchでメールアドレスの登録を!)。

しかしTikTokが登場したとき、すべてが一変した。TikTokのアルゴリズムが(今でもそうだが)すべてとなり、私が私自身を知るよりも、TikTokの方が私のことを知るようになった。そして、私が親になったとき、私の人生のすべてと同じように、後戻りのできない変化が起きた。

親になったことで、外出が減り、人付き合いが減り、睡眠時間も減る(ひどく睡眠不足だ)など、生活が大きく変わった。しかし、自分で調べられる範囲では、自分が何に縛られることになるのか認識していたし、そうした変化の多くも概ね予想できていた。

だが、親になることが、自分のデジタルライフにどのような影響を与えるかまでは考えていなかった。私のアルゴリズムは、子育てに関するコンテンツを中心に完全に再構築され、私が質問する前に次の質問を予測するようになった。私は実生活で母親というものを理解する前に、デジタル上で親になったのだ。インターネット文化にどっぷり浸かっていた私は、親になる前に想像していたよりも、はるかにダイナミックで、ニュアンス豊かなウェブの一隅を発見することになった。

この10年の間に、コンテンツ制作はますます民主化され、手を出しやすくなった。パンデミックの初期には、TikTokの利用者数も急拡大した。TikTokはあらゆる面で、私の次の一歩を予見するようになった。妊娠第3期(出産直前の3カ月)には新生児コンテンツ、娘が生後6カ月になる直前には離乳食の開始と赤ちゃん主導の離乳食の動画を、そして9カ月になる頃には、1歳の誕生日パーティーのテーマを提供してくれた。

子育てコンテンツにも動画が次々アップされ、この3年間で爆発的に拡大した。そして、2010年代前半のママブログに溢れていた、フィルタリングされたハウツーコンテンツを一掃した。未知の経験に麻痺させられた人々は、常に決断を迫られる疲労感と闘うために、ひとつの大きなコンテンツのジャンルを生み出した。そしてそれらは、洗練され光輝いて見えた。

今では、TikTokユーザーの「#ベビーレジストリ」にある、さまざまなベビー用品を閲覧し、生後3カ月の子と1日を始めるママの「GRWM(Get Ready With Meの略で私と一緒に準備しようの意味)」を視聴し、クリエイターの生後9カ月の子が食べる食事をすべて見て、その母子と1日を共に過ごした気分になる。1年も経たないうちに、私のフィードはアドバイスやミニ知識、商品、それも大量の育児用品で溢れ、育児に特化したコンテンツの大洪水になった。

私は、マーケターとして、ブランドがこのコミュニティを利用するメリットを見過ごすことができない。プロのクリエイターも存在するが、このインターネットの片隅では、マイクロインフルエンサーが大きな比重を占めている。小さいが強力なこのコミュニティでは、すべての動画がつながっていて、みんなが次の場面では何が起こるのかを知りたがっている。

TikTokは、「#TikTokMadeMeBuyIt(TikTokがきっかけで買った)」という簡潔なキャッチフレーズで、購買ファネルを一気に「崩壊」させる。このキャッチフレーズは、特に新米の親たちには有効であり、彼らには自身の生活を便利にする商品なら何でも検討する下地がある。TikTokが検索エンジンのカテゴリに加わりつつある今、ブランドは販売するだけではなく、親たちの真摯な質問に回答する貴重な機会も手にしているのだ。

ほとんどのソーシャルメディアは、若者文化のプラットフォームとしてスタートした。フェイスブック黎明期の写真アルバム機能や農場ゲーム、Poke(軽いあいさつ)合戦を思い出してほしい。今ではすっかり民主化され、年齢を問わず誰もが不満をぶつけたり、家具を売ったりできる場所になっている。

TikTokも同じような道を歩み始めている。多くのマーケターがTikTokを敬遠しているのは、Z世代だけのプラットフォームだと考えているからだ。だがそれは、TikTokにあまり接していないために生じた誤解かもしれない。スプラウトソーシャルによると、TikTokを使用しているマーケターはわずか18%に過ぎず、その上、彼らの判断は大抵の場合、実体験ではなく伝聞に基づいている。実際、TikTokアプリを利用しているミレニアル世代の60%は子を持つ親だ。ブランドアカウントは、ミレニアル世代の24%しかフォローしておらず、十分に浸透しているとは言えないだろう。それでも、マイクロインフルエンサーとのパートナーシップは、ブランド認知度を高め、いずれ販売にもつながる可能性を秘めている。

最後に留意点をひとつだけ挙げておこう。それは、TikTokを使う親たちは、自分の子どもより数カ月早く生まれた子を育てるマイクロインフルエンサーの投稿を参考にしながら、わが子の次のステージを思い描いているということだ。


ローレン・ニコラス氏は、Big Spaceshipのコンテンツおよびコミュニティ部門のディレクター兼ディシプリンリード。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

タグ

関連する記事

併せて読みたい

2 日前

世界マーケティング短信:Cookie廃止の延期、テスラの人員削減

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

3 日前

大阪・関西万博 日本との関係拡大・強化の好機に

大阪・関西万博の開幕まで1年弱。日本国内では依然、開催の是非について賛否両論が喧しい。それでも「参加は国や企業にとって大きな好機」 −− エデルマン・ジャパン社長がその理由を綴る。

4 日前

エージェンシー・レポートカード2023:カラ

改善の兆しはみられたものの、親会社の組織再編の影響によって、2023年は難しい舵取りを迫られたカラ(Carat)。不安定な状況に直面しつつも、成長を維持した。

4 日前

私たちは皆、持続可能性を前進させる責任を負っている

持続可能性における広告の重要性について記した書籍の共著者マット・ボーン氏とセバスチャン・マンデン氏は2024年のアースデイに先立ち、立ち止まっている場合ではないと警告する。