Gemma Battenbough
2022年11月11日

Z世代に向けた「コミュニティマーケティング」、その最前線

Z世代をターゲットとしたコミュニティマーケティングへの注目度が高まっている。ブランドはライブ配信サービスを生かし、どのように商品訴求を行うべきなのか。その秘訣を探る。

Z世代に向けた「コミュニティマーケティング」、その最前線

日々大量のデジタルコンテンツを消費するZ世代は、SNSの利用を通して様々なトレンドの火付け役を担っている。一方、彼らを消費者として見ると、一般的な商品やブランドの訴求が困難なターゲット層でもある。従来の価値観にとらわれず、独自の感性を持つ傾向が強いZ世代の関心をひくには、従来のマーケティング手法だけでは不十分だ。情報を十分に収集した上で、コミュニケーション対策を入念に立てねばならない。そのためにはまず、Z世代の特徴を理解することがカギとなる。 

Z世代は様々なアプリやウェブサイトを素早く行き来する「流動性」を特徴としている。彼らにリーチするには、異なるデジタルサービスを柔軟に併用しなければならない。また「目的意識」が高く、企業が社会的大義を持ち、自分たちと同じ価値観を持つことを望んでいる。さらに「コラボレーション」を重視し、特定の出来事や課題について集団的なメッセージを発信することも。企業はこの連帯感も認識する必要があろう。 

こうした特徴をまとめると、Z世代は仲間同士で横断的にデジタルコンテンツを消費しつつ、共通の目的意識と連帯感を形成していく世代と言える。企業はこの特徴を把握した上で、Z世代が形成するコミュニティへの訴求を心がけるべきなのだ。この発想をもとに生まれたのが、「コミュニティマーケティング」という概念だ。 

コミュニティマーケティングでエンゲージメントの高いオーディエンスを 

コミュニティマーケティングはストリーマー(配信者)やインフルエンサーを起用し、そのファンの共通の関心を通してアプローチする手法だ。リーチしたいコミュニティを分析し、共感を得ることで質の高いエンゲージメントを獲得できる。 

こう述べると、真っ先にSNS上の広告投稿を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれない。しかし、コミュニティマーケティングに最も適したチャネルはライブ配信に他ならない。その理由は、ストリーマーと視聴者の双方向でリアルタイムなやり取りが日常的に発生するため、広告の枠を超え、よりコミュニティに密着した効果的な訴求ができることにある。また、視聴者の反応を瞬時に受け取れるため、即時的な効果が把握できる点でも革新的だ。 

ライブ配信は近年広く普及しており、調査会社ストリーム·ハチェット(Stream Hatchet)によると、「フェイスブックゲーミング」「ユーチューブゲーミング」「ツイッチ(Twitch)」によるライブ配信サービスの合計視聴時間は昨年、346億時間を超えた。これは2020年の21%増になる。またツイッチの視聴者調査によると、約7割(69%)が「ストリーマーが使用するブランドを自分も検討しようと思う」と回答。ストリーマーと視聴者の関係が商品購入の呼び水になることを期待させる。 

では、ターゲットオーディエンスに訴求するため、企業はどのようにライブ配信を活用するべきなのか。ツイッチを活用した最新事例を見てみよう。 

●ウーバーイーツ 

オンラインデリバリーサービスのウーバーイーツ(Uber Eats)は、深夜でもアプリから注文できることを広く認知してもらおうとツイッチを活用。ツイッチ·ストリーマーのalelu氏、堀内華央理氏とタイアップし、それぞれのチャンネルでゲームを配信した。 

ゲームの内容は、自分の深夜配信にピッタリな食事をウーバーイーツのメニューから視聴者に選んでもらうというもの。ウーバーイーツは各ストリーマーと視聴者にサプライズプレゼントも用意した。 

2つの配信は合計で12万4847回の視聴回数と41万7062分の視聴時間を記録。配信直後に行ったアンケートでは、視聴者のウーバーイーツでの購入意欲が6%増加したことが明らかになった。 

●アサヒグループ食品 

アサヒグループ食品は、コロナ禍による「お家時間」の増加とeスポーツ人口の急増に着目。ゲーマーの間食がインスタント麺などのジャンクフードに偏りやすいことを突きとめた。そこで、栄養価を重視し、片手で手軽に食べられる自社商品のシリアルバー『1本満足バー』に商機を見出した。 

タイアップしたのは『NGC the Twitch』というチャンネルで活動する「えどさん”」。冒頭で『1本満足バー』を実食してもらう紹介動画を配信、また、えどさん”がゲームに負けると『1本満足バー』の動画広告を流した。広告を罰ゲームにする逆転の発想だ。 

その結果、配信は合計で約38万5400分視聴され、視聴者数は 5万9000人超に。配信中には「コンビニ行って買ってこようかな」「3本買ってきました!」などといった好意的なコメントが集まり、ストリーマーと視聴者の距離の近さを感じさせる成功例となった。 

業界を超えた、コミュニティマーケティング成功の秘訣 

もともとはゲーム実況で有名になったライブ配信だが、今ではゲーム会社に限らず多くの一般企業が注目する。実際、様々なブランドがツイッチを活用したマーケティングに出資しており、小売り業界(前年比503%増)、アパレル(同156%増)、金融サービス(同366%増)、自動車(同102%増)などのブランドが積極的に活用するようになった。 

では、ライブ配信でコミュニティマーケティングを成功に導くにはどのような点に注意すればいいのか。 

まず、訴求したいコミュニティの特徴を理解すること。それにはターゲットの視聴者を抱えていそうなストリーマーのチャンネルを把握し、普段のライブ配信で飛び交っているチャットに着目することが欠かせない。そこからコミュニティの嗜好·関心を理解し、それに合った訴求内容となるよう自社のメッセージを最適化する。その際にはライブの特質を最大限生かせるよう、インタラクティブな交流であることも認識すべきだろう。ストリーマーと視聴者が一緒に盛り上がり、その後も共通の話題になるような企画を練ることが肝要だ。こうした企画を定期的に実施しつつ、毎回様々な角度から訴求することで、より効果的なブランディングが可能となる。 

Z世代に訴求するには、従来の手法にとどまらないマーケティングを模索していく必要がある。コミュニティマーケティングこそ、商品訴求の可能性を切り開く新たな手法と言えよう。 

(文:ジェマ·バテンバウ) 

ジェマ·バテンバウ氏はTwitchのアジア太平洋地域担当ブランド·パートナーシップ·スタジオ統括責任者を務める。 

ジェマ·バテンバウ氏

 

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