Miki Matsui
2017年3月15日

一人あたりのクリエイティビティーが問われる時代へ

クリエイティビティーを発揮する分野が拡大し、あらゆる職種の人がクリエイターの役割を担う時代がやって来た。

松井美樹氏
松井美樹氏

「どうしてあなたたちは、世界の中での日本の順位について敏感なのか?」。とあるイギリス人の友人が僕に聞いた。例えば、日本のノーベル賞受賞の数。例えば、日本のオリンピックのメダル数。確かにそれが世界で、そしてアジアで何位なのかが、必ずネットニュースのトピックに上がってくる。私たちがカンヌライオンに参加したら、「日本が取ったメダルの数は?」「それは世界やアジアの中でどういう位置にあるか?」を自ら論議することもある。私たちは無自覚的に、GNP第2位だった残像にとらわれ、今でも「スゴイ」を確認したい、うぬぼれ集団なのかもしれない。

“一人当たり”に注目して日本を見よう、という意見をよく聞く。GNP総額ではまだまだ巨額だけど、一人当たりでは27位。決してうぬぼれられる順位ではない。日本の大手広告会社は、その巨額の売り上げで多くの国を圧倒してきたが、今は、「一人当たりは?」を考えるタイミングに差しかかっている。僕は、とある国の小さなエージェンシーが、何度も何度もカンヌライオンのさまざまなカテゴリーで壇上に上がるのを目撃しながら、「一人の従業員当たり、どれだけクリエイティブかが問われる時代がやって来た」と考えるようになった。

クライアントは常に、クリエイティビティーが起こす奇跡を期待し続けている。20世紀ではそのクリエイティビティーは主にTVコマーシャルで発揮するものだったが、今やあらゆるタッチポイントに広がり、商品・サービス提案、事業提案にも及ぶ。さまざまなソリューションで、得意先に「WOW!」と言われるものを出せるかが問われている。

僕は2016春までの6年間、TBWA\HAKUHODOでCCOを務めた。博報堂に比べると限りある人的リソースの中、どういう働き方やどういうモチベーションの与え方が、一人当たりのクリエイティビティーを高めるかを考えてきた。

そして、さまざまな職種の人々がいる博報堂に戻ってきて、確信した。狭義の、古典的な意味でのクリエイターだけが、広告会社のクリエイティビティーを背負う時代は終わりつつある、と。すべての職種の人がクリエイティビティーについて考え、企業の付加価値をどう上げるかを考える時代が来たのだ。

(文:松井美樹 編集:田崎亮子)

松井美樹氏は、博報堂の統合プラニング局長 エグゼクティブクリエイティブディレクター。

提供:
Campaign Japan

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