Ryoko Tasaki
2020年3月27日

世界マーケティング短信:コロナ不況で広がる不安

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

開催は1年ほど延期となったが、名称は「東京2020」から変更しない予定
開催は1年ほど延期となったが、名称は「東京2020」から変更しない予定

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

東京五輪の延期、ブランドの反応

新型コロナウイルスの世界的な感性拡大を受け、東京2020オリンピック・パラリンピックが一年程度延期されることが、24日に決定した。大会に深く関与している電通グループは、「この件についてコメントする立場にない」とコメント。同社の株価は大会中止の懸念の中、2月に7年来の安値を記録した。今週に入って、大会は中止でなく延期である旨が報道されると、株価は急上昇している。

大会の一部をライブ配信する契約をNBCユニバーサル社と交わしているツイッター社は、「発表を踏まえて、パートナー企業やクライアントと共に、計画を調整中です」とスポークスパーソンがコメント。またセブン・ウエスト・メディア(豪メディア大手)の最高売上責任者、カート・バーネット氏は「これまで以上にメッセージングが重要となる時期に、キーとなるオーディエンスに届けるため、パートナー企業とあらゆる方法を模索しサポートしていく」と述べた。その他企業のコメントはこちら(英語)
 

広告界の人材は削減されるか…?

世界各地で外出が禁止(あるいは自粛要請)され、経済活動の停滞が懸念されている。広告支出削減によって人員が削減されるのではないかとの不安が広告界に広がっている。アノマリー(Anomaly)やジャイアントスプーンは既にレイオフを実施したようだ。ワンダーマン・トンプソンからも多くの社員が既に去ったという。

ピュブリシスは、採用活動を一時凍結した。自社グループ内のリソースを活用し、グループ外企業への発注を抑えるなどして「当社事業と社員を守る」と、アーサー・サドーンCEOは社内向け動画で語った。近々レイオフが実施されると噂されていた同グループだが、スポークスパーソンはこれを「全くの事実無根」と一蹴。社員の健康と、ウェルビーイング(心身ならびに社会的に良好な状態にあること)を重視しており、社員の95%は既に在宅勤務に移ったこと、また「家族と離れて暮らす社員が家族のもとへ帰れるよう、会社が費用を負担する」とも語っている。

採用活動の凍結は厳しいニュースのように聞こえるが、フロック・アソシエイツのミッチェル・カプラン氏によると「この時点で企業がとり得る、最も賢明な行動」とのこと。「社員が今望んでいるのは、高いレベルの透明性と誠実さ。採用活動の凍結が、コスト抑制において合理的かつ重要な第一歩であることは、誰もが納得できます」。曖昧にすることで余計な不安感が蔓延しないよう、配慮することが重要だと説く。

また、ハヴァス・メディアのアジア太平洋担当CEO、ヴィシュヌ・モハン氏は「これまでに経験したことがないレベルでの変化やディスラプションに対処する、新しい現実に直面している」とし、人財のサポートこそが、苦境を乗り越える鍵だと語った。また、企業活動が停滞するこのような時期こそ、企画力やスキルなどを向上できる機会と捉えているという。
 

豪州の経営者、「チャンス」発言で炎上騒ぎに

新型コロナウイルスとの戦いは、イノベーションの加速を促す機会にはなり得るだろう。だがテレビ番組のインタビューで楽観的すぎるコメントを発し、炎上騒ぎに発展したのが豪州の小売大手「ハーヴェイ・ノーマン」の共同創業者、ゲリー・ハーヴェイ氏だ。新型コロナウイルスの世界的拡大によって、同社の冷凍庫の売上は前年比300%増、空気清浄機は100%増を記録。このことを同氏は「ビジネスチャンス」と表現したのだ。ウイルスによって中国やイタリアで数千人もの死者が出たことにインタビュアーが触れた際にも、「それは遠くの地での出来事で、私がいるのは豪州。私は80歳なので心配するべきなのでしょうが、怖くありません」と笑った。

新型ウイルスの感染拡大をビジネスチャンスととらえること、そしてそのような発言をすることは「いかなるブランドにとっても今は不適切」と語るのは、クリアリーPRのマネージングディレクター、ポール・マッケンジー・カミンズ氏。起業家であるハーヴェイ氏が、常にチャンスを探し求める楽天家であることには理解を示すものの、「この楽観視はハーヴェイ氏の健康やウェルビーイングに害を及ぼしかねないだけでなく、ビジネスにも悪影響を与える」とみている。

ミルク&ハニーPRのマネージングディレクター、キャロライン・アディー氏も「PRのあらゆるルールを破っている」と指摘する。「彼は単独で、国全体の消費者を怒らせました。また、彼が番組内で自慢した売上増は、社員たちが自らをリスクにさらしながら日々店頭で売り上げたもの。社員たちの心情も逆なでする発言です」

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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