Ryoko Tasaki
2022年11月25日

世界マーケティング短信:厳しい視線にさらされるW杯カタール大会

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:厳しい視線にさらされるW杯カタール大会

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

バドワイザー、W杯会場でのビール販売を禁止される

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会のスポンサーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブが、スタジアムでのビール販売を開幕わずか2日前に禁止され、大きな話題となった。アルコール分を含まない「バドワイザーゼロ」は販売が許可された。同社はスタジアムで売るはずだった大量のビール「バドワイザー」の写真を添えて、「優勝国にバドワイザーを贈ります。誰が入手するでしょうか?」とツイートした。

同社がW杯と結んだスポンサー契約は約7,500万米ドル(約100億円)といわれている。しかし「スタジアムでのビールの独占販売権は、6000万ポンド(約100億円)に上るスポンサーシップのROI(投資利益率)において大きな割合を占めていません」と指摘するのは、スポーツマーケティング・エージェンシー「ザ・スペース・ビトウィーン(The Space Between)」共同設立者のリサ・パーフィット氏。グローバルな消費者に訴求できる機会や、大会の知的財産権を利用できることの方が、はるかに大きな価値があると述べる。また、次の大会は米州で開催されるため、バドワイザーが交渉の場からそう簡単に立ち去ることはないだろう、とも。

ピッチ・マーケティング・グループ(Pitch Marketing Group)CEOのヘンリー・チャペル氏は、今回の騒動で数多くのメディアが取り上げたことで、ブランド想起率は「記録的なレベルに達するだろう」とみている。「アルコール販売禁止の商業的な影響が、大げさに語られています。バドワイザーの製品ポートフォリオにおいて重要なのはノンアルコールビールで、マージンもはるかに高い。バドワイザーゼロをプロモートする場として、イスラム圏でのビール販売を実施するのです」。

アンバサダーを務めるベッカムへの、批判動画が物議を醸す

W杯開催国のカタールでは、同性愛が違法となっている。ゲイ・アイコンといわれてきたデイビッド・ベッカム(サッカー元イングランド代表)が今大会のアンバサダーを務めることについて、多くの人が批判をぶつけた。その中の一人、英コメディアンのジョー・ライセット氏によるものは賛否両論を呼んだ。

同氏が今月13日、ツイッターへの投稿動画でベッカムに求めたのは、カタールとの関係を断つこと。そうすればライセット氏は1万ポンド(約167万円)をLGBTQ+関連の慈善団体に寄付するが、20日の開会式までに回答が無ければ、1万ポンドの紙幣をシュレッダーにかけると語っていた。

そして20日には、約束通り紙幣をシュレッダーにかける動画を投稿した。すると、物価高騰に人々が苦しむ中でのこのような行動に不快感を示す声が上がる一方で、数々のメディアに取り上げられて議論を巻き起こしたことに賛同する者もいた。

翌21日に同氏は、実際には紙幣をシュレッダーにかけておらず、1万ポンドは動画投稿前に寄付したこと、ベッカムからの返答は期待しておらず、議論を呼び起こすためのから脅しだったと種明かしする。そして最後に「シュレッダーにかけたいものが一つあります」と取り出したのは、ベッカムが表紙を飾ったアティチュード誌(ゲイのライフスタイル誌)2002年6月号。「シュレッダーにかけていいか編集部に問い合わせたところ、快諾してくれました」。

ツバル外相、気候変動の緊急性をメタバース上で訴える

南太平洋の島国ツバルは、海面上昇による影響が最も深刻な場所の一つ。同国のサイモン・コフェ外務大臣が昨年のCOP26 (気候変動枠組条約第26回締約国会議)で行ったスピーチでは、カメラがズームアウトしていくにつれ、海に浸かりながら話す様子が映し出された。

そして今年のCOP27でも、「COP26以降、世界は行動を起こさなかったので、太平洋にいる私たちは行動を起こさねばなりませんでした」と語りかけた。「土地が消失していく中、私たちは世界初のデジタル国家にならざるを得ません」。

そして「このような島々は、急激な気温上昇や海面上昇、干ばつには耐えられません。そこでバーチャル上に再現することにしました」とカメラがズームアウトしていくと、メタバース上に作られたツバルで撮影されたことが明らかになった。

物理的な世界で何が起ころうとも「最悪のシナリオに備えて計画を立て、準備を進めています」と説く同氏は、「私たちは今すぐにアクションを始めなければなりません。そうでなければ一生の間に、ツバルはここ(メタバース)にしか存在しなくなるでしょう」と訴えかけた。企画・制作はザ・モンキーズ(アクセンチュア ソング)。

目に見えない紫外線の危険性を可視化

ニューサウスウェールズ州がん研究所によると、皮膚がんは「豪州の若者の最大の死因の一つ」だという。そこで同研究所は、肌に降り注ぐ紫外線を可視化する動画を公開した。企画・制作は303マレンロウ・シドニー。

同社のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるバート・パウラック氏は、「人は目に見えないものを、忘れてしまうもの。これが紫外線を非常に危険なものにしてしまっています。この事実から、私たちのクリエイティブ・アプローチの着想を得ました」とコメント。このキャンペーンは今週からOOH、オーディオ、デジタルディスプレイ、ソーシャルメディアなどで展開される。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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