Ryoko Tasaki
2021年12月17日

世界マーケティング短信:広告界のダイバーシティー

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

クリスマスのライトアップが施されたロンドンのパブ
クリスマスのライトアップが施されたロンドンのパブ

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。


P&GプリチャードCMODEIの取り組みはまだ十分ではない」

プロクター&ギャンブル(P&G)のマーク・プリチャードCMOが13日、VMLY&Rのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるウォルター・ギア氏との対談で、2021年のDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みについて「変化があったが、十分ではなかった」と振り返った。

「考え方は大きく変わったと思います。業界全体でブランドによるコミットメントが見られました。元に戻すことはできません」。問題なのは変化のスピードであり、差別が社会に深く組み込まれていることが原因だと指摘。これに対してギア氏は、最大手の広告主であるP&Gには、多様性が乏しい広告会社との協業を拒否するなど、広告業界のDEIを変える力があると語った。

 

インフルエンサーの多様化は進んだか?

インフルエンサーのコンテンツについて、マーケターの62%が社会の多様性を適切に反映していると考えている。しかし一方で、そのように考えている消費者はわずか28%であることが、ニューヨークとロンドンに拠点を構えるインフルエンサー&ソーシャルメディア専門のエージェンシー「タクミ(Takumi)」のホワイトペーパーで明らかになった。調査は米国ならびに英国にて実施された。

「インフルエンサー・マーケティング業界のダイバーシティーとインクルージョンは、過去数年間で大きく進歩しましたが、改善の余地は常にあります」と語るのは同社のマネージングディレクター、サラ・ジョイ・マドセン氏だ。エージェンシーには多様性に富むチームを作り、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)のインフルエンサーへの平等かつ公平な報酬を導入することなどが求められるという。「ブランドやエージェンシー、インフルエンサー間の誠実な対話において、ダイバーシティー&インクルージョンは常に中心に無くてはなりません」。

また、エンゲージメント構築に有効なメディアとして消費者が挙げたのは、ユーチューブ(56%)、インスタグラム(48%)、ティックトック(37%)であった。

 

カンヌのアカデミー、DEIコンサルティング会社を起用

カンヌライオンズは組織内のダイバーシティーを推進していくため、DEIを専門とするコンサルティング会社「アンミステイカブルズ(The Unmistakables)」を任命した。カンヌライオンズ開催期間に開かれる学習プログラム「ロジャー・ハチュエル・アカデミー」は今年5月、ディーンの一人であるアブラハム・アセファウ氏が職を解かれ、同氏が経緯をソーシャルメディア上で公開したことや、「カンヌライオンズで最も多様性に満ちた場」のディーンが全員白人になったことから批判が集まっていた。

アセファウ氏はCampaignの取材に対し、今回のコンサルティング会社の任命について「正しい方向性への第一歩」ではあるものの、行動が伴わなくてはならないとコメント。同氏が声をあげてから既に7カ月が経つが、これが初めてのアクションであることも指摘した。

 

気候変動の広告は検閲対象?

10月末から英グラスゴーにて開催されたCOP26に合わせて制作された、クアドラチャー・クライメート・ファウンデーション(Quadrature Climate Foundation)の広告が掲出を拒否されていたと英公共放送「チャンネル4(Channel4)」が報じた。この広告はCOP26の参加者に向けた力強いメッセージを、温暖化の影響を受けている人々の写真と共に訴求するもので、主要な空港や鉄道駅に掲出する予定だった。

「クリエイティブのコンセプトを最初に見せた時、皆から『ノー』を突き付けられました」と振り返るのは、制作を担当したアイリス(Iris)の最高戦略責任者、ベン・エッセン氏だ。「苦痛に満ちたクリエイティブで、人々をあたたかく迎え入れるものではない、邪悪で政治的すぎるとみなされたのです」。その後、キャッチフレーズを柔らかい表現に変更し、自然災害を生々しくとらえた写真も大幅にトリミングするなど、インパクトを抑えることでようやく掲出が認められたという。

 

ギネス、コミュニティーをつなぐパブを支援

ギネスビールはホリデーシーズンに合わせ、仲間たちと楽しい時間を過ごすパブを支援中だ。3,000万ポンドを寄付した他、英国内のパブ22軒にライトアップを施している。「パンデミックで18カ月間大きな影響を受けてきたホスピタリティー産業のために、ギネスとしては地域のお店をできる限りサポートしていきたいと考えています」と語るのは、英ギネスを率いるニール・シャー氏。コミュニティーの中心で人々をつなぐパブを、資金面やそれ以外でもサポートを続けていくという。

 

今号が、2021年最後の「世界マーケティング短信」となります。皆さまには日ごろよりご愛読いただき、大変感謝しております。

どうか良いお年をお迎えください。2022年も皆さまのさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

3 日前

グループエム、世界の広告費予測を下方修正

グループエム(GroupM)によると、実体経済と広告費の乖離が拡大しており、2022年の広告費見通しは「予想されているほど悪くない」という

3 日前

Z世代がブランドに求める3つのこと

Z世代の関心を惹きたいブランドに、当のZ世代は何を期待しているのか。デブリーズ・グローバル(DeVries Global)のシンガポール支社でコンサルタントを務めるゴードン・チュア氏が、Z世代の視点について語った。

3 日前

ゲレティ・アワード 日本審査員が語る広告界の今

女性の視点を反映した世界的規模の広告賞「ゲレティ・アワード 」。日本で審査員を務めた面々が、業界におけるジェンダー平等、女性がより共感できるストーリーの必要性などを語り合った。

3 日前

世界マーケティング短信:カンヌライオンズ、3年ぶりに現地開催

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。