David Blecken
2019年4月19日

世界マーケティング短信:電通、依然買収に注力

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真:AFP
写真:AFP

※記事内のリンクは、英語サイトのものも含みます。

電通、M&Aで存在感

広告界のM&A(合併・買収)でアクセンチュアに対抗できるのは、どうやら電通だけのようだ。コンサルティング会社R3が発表したM&Aのランキングによると、今年1−3月期で最も活発に買収を行ったのは電通だった。

同社が買収したのは「ハッピーマーケター」「BJL」「フィルター(Filter)」「コミュニカ(Comunica)+A」「レダー(Redder)・アドバタイジング」の5社。R3によれば、買収総額は2億4700万米ドル(約270億円)に上るという。

シンガポールが拠点のハッピーマーケターとシアトルのフィルターはデジタルエージェンシー。現在はマークルの傘下に入った。BJLはロンドンとマンチェスターにオフィスを構える英国のクリエイティブエージェンシー。コミュニカ+Aはスペイン最大の独立系エージェンシーで、レダーはホーチミンのクリエイティブエージェンシーだ。

アクセンチュアは投資のほとんどを世界規模の買収に費やした。獲得したのは「ドロガ・ファイブ」「ストームデジタル」「ワット・イフ(What If)」「ヒャルテリン・スタール(Hjaltelin Stahl)」の4社で、総額は5億5900万ドル。ドロガ・ファイブの買収は広告界に衝撃を与えたが、まったく異なる企業文化を持つ両社が今後どのように協業していくかが大きな課題だ。

ピュブリシスグループは「ブルー449」を7000万ドルで買収し、15位にランクイン。ピュブリシスは今月、44億ドルで「エプシロン(Epsilon)」を買収したが、今回のR3の査定には含まれず、次期での計上となる。

他の注目すべき動向としては、マクドナルドが1億2300万ドルを投じてパーソナライズ・プラットフォーム「ダイナミック・イールド(Dynamic Yield)」を買収したこと。マクドナルドにとっては過去20年間で最大の買収で、顧客体験をマーケティングに生かすための重要な投資と見られている。だが、実際にマクドナルドの商品をどれだけパーソナライズできるかは判然としない。

企業全体がM&Aに投じた総額は37億6千万ドルで、前年同期比で20%減。アジア太平洋地域においては40%の大幅減だった。R3はその要因として、米中の貿易戦争や地域経済への逆風を挙げている。

エプシロンは「第2のサピエント」にあらず

M&Aの勢いは衰え気味ながら、大規模買収はいまだに続く。ピュブリシスは今週、44億ドルを投じてデータ会社エプシロンを傘下に収めたが、これは同社にとって過去最大の買収であり、マーケティング業界においても最大規模。昨年はインターパブリック・グループが20億ドルでアクシオム(Axciom)のマーケティング部門を買収した。

買収騒動が一段落したときに持ち株会社が直面するのが、買収した企業をどのように統合していくかという重要な課題だ。ピュブリシスのアーサー・サドーンCEOは、「我々は2015年のサピエント(米デジタル広告大手)の買収で多くを学んだ」と投資家に向けて語った。サピエントの統合には長い時間がかかり、多くの損失を生んだ。鍵となるのは迅速な対応、そして最初の段階から買収企業をアセットと見なすことだろう。「契約が成立したその日から、買収がすぐに効果を生むことを我々は確信していなければならない。事業統合で時間を無駄にはできないのです」と同氏。エプシロンは来年、ピュブリシスの株主に「価値を生み出す」と期待されており、ピュブリシスにはその期待に応える責任がある。

タイガー・ウッズを支えたナイキの「計算」

今週、最も話題を呼んだのはナイキだ。14年振りにマスターズを制したタイガー・ウッズを不遇の時代も支え続け、その献身的な「忠誠心」は賞賛を呼んでいる。ウッズを見捨てなかったことをナイキは間違いなく喜んでいるだろう。優勝の際にはナイキのトレードマークが大きくフィーチュアされ、何百万ドルという宣伝効果を生んだ。彼の優勝を想定して事前に広告も準備。これで同社のゴルフ事業が再び軌道に乗るという見方がもっぱらだ。

ナイキの創業者であり前CEOのフィル・ナイト氏がウッズに思い入れを持っていたことは確か。ウッズがセックス依存症や飲酒運転のスキャンダルに見舞われ、他のブランドが即座に彼から距離を置いたときでもナイト氏はスポンサーをやめなかった。だがこの決定は純粋に彼らの個人的信頼関係に依るものではないだろう。ウッズは実力が落ちても、カリスマ的存在としてゴルフ界で君臨し続けた。昨年、ナイキがNFLのコリン・キャパニック選手をCFに起用したのも、十分な計算の上での賭けと推測できる。今回の場合は、世間はウッズの行為(悪くはあっても、ひどいものではない)を最終的に許すだろうし、彼も力を取り戻すと読んだはずだ。その賭けに成功したナイキは名前を売るにふさわしいだろう。だが、これをスポンサーの善意の結果として見るのは誤りだ。そのような行動をとるスポンサーなど、実際はいるはずがない。

今週のその他の動き:

P&Gのマーク・プリチャードCBO(チーフ・ブランド・オフィサー)がオンラインプラットフォームを改めて批判し、広告主に「新たなメディアサプライチェーン」の創設を呼びかけた。同氏のスピーチはこちらから。

Tiktokがインドで禁止となった。AFPによれば、「ワイセツ画像や小児性愛を助長する恐れがある」というのがその理由。Tiktokは既にバングラデシュでも禁止されている。

「おそらく世界最高のビール(Probably the best beer in the world)」といううたい文句で知られるカールズバーグが、「おそらく世界最高のビールではない」ことを認めた(ビール好きの方であればすぐにそれを認めるだろう)。突如正直な告白をしたのは、リポジショニングに向けたプロモーションの一環だ。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

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