Jerry Clode
2016年6月16日

移り気な中国市場で日本のブランドを確立するには

日中の政治関係は相変わらず複雑だが、日本のブランドは中国の消費者と新しい関係を築くことができそうだ。

中国の人々の生活に根ざした存在を目指す無印良品(画像:Muji China)
中国の人々の生活に根ざした存在を目指す無印良品(画像:Muji China)

中国市場において、日本のブランドは際どい綱渡りを強いられている。政治的には、戦時中の日本による行為への否定的な感情が根強く、対応が要されている。一方で、日本のブランドは欧米のものよりも文化的に合っているとして、歓迎されている。

政治的な緊張を避けるため、日本のブランドは意識的に「文化的無臭性」を打ち出してきた。見ただけで日本とのつながりを想起させるようなブランドイメージやプロダクトデザインを避けるのである。社会学者の岩渕功一氏は、日本ブランドを中国のみならず東アジア全体に輸出する上で、この戦略の持つ意味を詳しく述べている。

これは当初、ソニーやパナソニックなどの有名家電ブランドが用いた手法で、今では幅広い分野に広がっている。

例えば、資生堂は中国限定のスキンケアブランドAupres(オプレ)を開発し、日本との関連をあいまいにしている。また、ユニクロはインターナショナルなイメージを作り上げ、日本発のブランドだと気付かれない。

こうした手法が、消費者の潜在的な反日感情を抑えているのは間違いだろう。しかし、日本のブランドが政治的批判からの影響を受けなくなった訳ではなく、反日感情の高まりは依然として脅威だ。中国の政治には保守主義の波が周期的におとずれ、尖閣諸島(中国名:釣魚島)のような領土問題が日本のブランドや製品の不買運動へと発展しがちだ。

日本ブランドが進むべき次のステップは、中国の消費者の生活に欠かせない普遍的な存在になること。それは政治の影響を食い止める、究極の形といえる。

中国における日本ブランド バージョン2.0

中国では、無印良品の旗艦店への入店を待つ人たちで、その区画全体に及ぶほどの長蛇の列ができた。この日本の生活用品ブランドは、よりよい生活スタイルや住まいへの関心が高い都市部の消費者の間で流行している。

2015年、無印良品は中国で27店舗を増やし、日本国外の店舗数としては最大の132店舗となった。また購買意欲の落ち込みにも関わらず、売り上げは中国全土で20~40%増となった。

この成功の鍵となったのは、小売業の豊富な経験とブランドメッセージで、良質さというビジョンを一貫して構築してきたことだ。個々の商品の説明ではなく同社のイノベーションやデザインへの姿勢を、店内で流す映像、独特な商品陳列、店内のレストランを通して発信。また店舗の枠を超えて、消費者とオンラインでつながる「MUJI passport」を運営している。

中国の消費者は無印良品の店舗で、イケアの店舗にいるときと同様に「まるで自宅に居るような」感覚を持つことができる。このように消費者とブランドが深くつながり合うことができれば、いかに反日感情が高まろうともブランドを守れるだろう。

無印良品に限らず他の分野でも、日本ブランドは消費者との良好な関係を築くことができる。

これまで中国市場では、日産、ホンダ、トヨタなど日本の自動車ブランドは、アメリカ車やドイツ車よりも経済的な選択肢と見られてきた。しかし、まだ「ファミリーカー」や「都市生活者の足」のような地位を確立するには至っていない。

中国のドライバーのニーズが洗練されてくる中、日本の自動車ブランドは、単なるコモディティーとしてではなくライフスタイルに合わせた選択肢として訴求できるようになった。これからの中国のドライバーは、ステータスとしてではなく生き方の象徴として、車を位置付けるようになるだろう。

95年以降生まれの親日世代

中国の1995年以降生まれの世代が、日本をとてもポジティブに捉えていることは、日本のブランドにとって明るい兆しだ。中国のミレニアル世代で最も若い彼らは、日本のポップカルチャーの大ファンであり、その参加者でもある。

日本のアニメ、テレビ番組、ゲームを配信する中国の動画共有サイト「bilibili」は、この世代からの人気が高い。彼らにとって日本文化は、まねる対象でなく生活の一部であり、現代のデジタルネイティブである彼ら自身の姿を映すものでもある。

このことは、次世代の中国の消費者が日本ブランドに対してよりオープンになる可能性を示唆している。もちろん、ブランドが彼らに受け入れられライフスタイルに定着するには、ポップカルチャーと同様に大きな努力を要することは言うまでもない。

(文:ジェリー・クロード 編集:田崎亮子)

ジェリー・クロードは、レゾナンス・チャイナのデジタルおよびソーシャルインサイトの責任者

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Campaign Japan

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